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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
12 むいむいたん
951/999

12-14 帝国の結末とこれからの事

―1―


 帝都に降り立つ。


 すると、そこには何処か吹っ切れた表情のフエと、その後ろに控えるように立つ梟顔のユエ・メイシンが待っていた。

「お待ちしていました」

 フエが口を開く。

「――帝城でお待ちですよ」

 誰が、とは言わない。

『分かった』

「案内します」

『いや、大丈夫だ』

 梟顔のユエ・メイシンの申し出を断る。


 この二人も無事だったか。

「そうですか」

 俺と14型だけの方が速く移動できるしね。

「分かりました。では、お帰りをお待ちしています」

 何故か、待つと言う二人を残して帝城へと向かう。


 静まりかえった帝都を駆け抜け、帝城の中へと入る。すると、そこには一人の男が待っていた。

「ランの旦那、待っていたんだぜ」

 それはキョウのおっちゃんだった。無事だったのか。いや、まぁ、無事だと信じていたけどさ。

「ジョアンも来たんだぜ。ランの旦那の指示だと分かったんだぜ」

 ジョアンも帝城、か。

『待っていたのは、キョウ殿か?』

 俺の問いにキョウのおっちゃんは肩を竦め、奥を指さす。

「まだ、こっちは全て片付いてないから、取り急ぎは、こちらなんだぜ」

 キョウのおっちゃんの案内で帝城の中を歩く。帝城の中を歩くのは二度目、か。前回は《変身》スキルを使った状態だったからな。この姿では初めてか。


 キョウのおっちゃんは、俺たちを帝城の本殿ではなく、離宮の方へと案内する。


 離宮の中で待っていたのはジョアンとゼンラ少年の二人だった。

『二人だけなのか?』

 俺の言葉にゼンラ少年が頷く。

「他の者達には、控えてもらっています」

「剣の旦那は負傷がひどくて、治療中なんだぜ」

 ゼンラ少年の言葉にキョウのおっちゃんが続く。ソード・アハトさんも無事か。

『負傷なら、自分が見ても……』

 その俺の言葉をキョウのおっちゃんが止める。

「ランの旦那。大丈夫なんだぜ」

 む。まさか、本当は死んでいるとかないよな? ないよな?

「負傷した姿をランの旦那に見せたくない――剣の旦那の言葉なんだぜ」

 ああ、なるほど。あの人、武人だもんなぁ。そういうところを気にするか。

「ランの旦那。結果から言うんだぜ。俺たちは『帝国を取り戻した』んだぜ。フロウとダナンには逃げられたが、あの様子なら心配要らないと思うんだぜ」

 逃げられたのか。

『復讐に来たりしないのか? 禍根の元は絶つべきでは?』

 俺の言葉にキョウのおっちゃんもゼンラ少年も首を横に振る。

「必要ないでしょう」

 そ、そうか? ま、まぁ、二人がそう言うなら大丈夫か。


 そして、改めてキョウのおっちゃんとゼンラ少年が俺へと向き直る。

「ラン王、お呼び立てして申し訳ありません」

「ランの旦那は各地を飛び回っていて、捕まえるのが難しいんだぜ」

 あー、だから、フエとユエ・メイシンが待ち構えていたのか。今の俺は、ステータスプレートを持っていないから、フミコン通信機も使えないしな。

「本題に入るんだぜ」

 キョウのおっちゃんの言葉にゼンラ少年が頷く。

「今、帝国は主がいなくなった状態です」

 ゼンラ少年が決意を秘めた目でこちらを見る。

「ただでさえ、世界の崩壊の危機で混乱している状況です。このままでは、さらなる混乱は必定でしょう」

 帝国も広大な領土を持った国だからなぁ。上が居なければ、そりゃあ、当然、そうなるよな。

「覚悟を決めることにしました」

 ゼンラ少年が俺を見る瞳の色は強い。つまり、ゼンラ少年が上に立つってことか。

『いいのか?』

 せっかく、ただのゼンラ少年として生きていけるチャンスだったのに、捨ててしまうのか?

「はい。決めました。ラン王にはよくしていただき感謝しています」

 そうか。決めたのなら仕方ないな。これが運命だからなんて、流されている状況なら止めたかもしれないけどさ、本人の意思なら、尊重しないとな。

「ランの旦那――いや、ラン王、そういう訳なんだぜ。それで申し訳ないんだが、俺も、その手助けをしたいんだぜ」

 キョウのおっちゃんは元々が帝国の人間だもんな。俺の国から抜けるのは痛いけどさ、それも仕方ないか。

『キョウ殿もゼンラ帝の助けを』

 キョウのおっちゃんが頷く。

「グレイシアには、俺が仕込んだ奴らが残っているから大丈夫なんだぜ」

 俺はキョウのおっちゃんだから頼りにしていたんだぜ。

「僕も神国との架け橋になる為、残るよ」

 ジョアンも俺を見る。

「はい、帝国と神国は常に争ってきました。しかし、彼の居る今なら、手を結べるはずです」

 この二人なら――神国のトップはセシリーだしな。大丈夫だろう。

「ラン王、この帝国にノアルジー商会を復活させませんか?」

 む?

『よろしいのか?』

 他国の商会を入れるなんて帝国を食っちゃうかもしれないぜ。

「ラン王、セシリア女王、三国と手を結んで歩みたいのです」

 それは、うむ。俺たち三人が仲良しだからって、国として上手くいくかは分からない――でもさ、ゼンラ少年なら、いや、今のゼンラ帝なら何とかしそうだな。

『そうだな』

「ああ、そうなんだぜ。それとラン王。もし、後日、この帝国に覆面の軍師が現れたとしても気にしないで欲しいんだぜ」

 そう言ってキョウのおっちゃんは笑っていた。あー、なるほど。そういうことか。そういう手打ちにしたのか。

『分かった。帝国はこれから大変だろう。我が国も及ばずながら助力しよう』

 我が国って言うけど――まぁ、ユエに丸投げだ。

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