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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
12 むいむいたん
948/999

12-11 八大迷宮『世界樹』

―1―


 世界樹。


 流れる雲よりも高く、高く、高く伸びた巨大な樹木。


「マスター」

 ああ、そうだな。


 木の属性をメインとした八大迷宮の一つ、世界樹。


 俺が最初に攻略した八大迷宮。八大迷宮、か。そう、女神セラ――葉月せらの用意した迷宮。


 そう、『葉月』だ。葉月は陰暦の八月のことだったよな。あいつ、よく言っていたよな。自分の名前にちなんでさ、八は末広がりだから縁起がいいんですよ、ってな。この世界の週が八になってるのも、基本属性が八種類だったのも、迷宮が八つだったのも――すべては、あいつの好みだったからって訳か。

 ミカンが手にした刀に一瞬だけ葉月の名前がついたこともあった。そう、関連性はあったんだよ。だが、でも、そうだよ。そこから、俺の後輩が関連していると思うか?

 俺は、俺が特別な人間じゃないことを知っている。だから、そんなことがあるなんて思いもしなかった。


 ああ、そうだよな。本当にくそったれだよ。


「マスター、情報を検索します」

 俺は、俺たちは世界樹に足を踏み入れる。


「ファーストミッションの失敗と共に核をも使った戦争が起こったようです。その爪痕を――環境を改善するために作られた施設を元にしているようです。つまり、現在の姿は、そのシステムが瘴気を吸い、やがて施設を飲み込み、巨大化したものを、あの女が再利用した形です」

 相変わらずな14型さんの、ちょっとポンコツが混じった説明の仕方だな。俺が生きた時代――言うなれば旧文明の再利用か。


 俺は隠し部屋に入り、置かれた台座に手を置く。


 しかし、何も起こらなかった。


 ふむ、反応しない、か。


 俺は、俺だけど、違う重なった世界の俺だから、違う個体だと思われたのかな? まぁ、どういう認識方法なのかも分からないし、うーむ。


 仕方ない、一から登るか。


『14型、駆け抜けるぞ』

 俺の言葉に14型が優雅なお辞儀を返す。そして、そのまま俺を持ち上げる。そして、駆けだした。いや、あの、俺は、な? 俺は《永続飛翔》スキルで進むつもりだったんだが、いや、あの。


 恐ろしい速度で世界樹の内部を駆け上がっていく。14型が現れた敵を、魔獣たちを――伸びてきたヴァインのツタを引きちぎり、のたりと歩いているマイコニドを蹴りつけ、そのまま飛び上がり、ポイズンワームの毒液を弾き飛ばし、進む、駆ける。


 俺の思考が追いつかない勢いで14型が駆ける。


 広間に現れた蜂たちを踏み台のように蹴り飛びながら駆け、杖から光線を放とうとしたクィーン・ビーを、その状態のまま叩き潰し、抜ける。


 いつの間にか、目の前に現れたウッドゴーレムを、そのままの勢いで殴り、突き抜ける。


 奥にあった扉が開いていく。

「マスター、中間地点のようです」

 おいおいおい、俺が何日もかけて攻略した場所を一瞬かよッ! はぁ、さすがは世界を滅ぼすほどの力を自称する14型さんだな。

『14型、降ろしてくれ』

 しかし、聞こえなかったのか、14型は俺を抱えたままだ。

『14型?』

 14型は、不思議そうな表情を作り、首を傾げているだけだ。あのー、14型さん? 聞こえないふりですか? 俺の頭の上の九尾の子狐が、何が楽しいのか、俺の頭をぽんぽんと叩いている。


「マスターから降りるのです」

「きゅうん、きゅうん」

 なんだか、九尾の子狐と14型が揉めているし、ホント、こいつら何をやっているんだ? はぁ、仕方ない。

『14型、自分が言うとおりに壁を押してくれ』

「了解です、マスター」

 14型が見えない隠し扉のスイッチを押していく。さあ、順番は、っと。1、2、3、4っと。14型が俺の指示した順番通りに壁の膨らみを押していく。そして、ふぁんという音とともに『隠し扉』が消えた。


 そのまま外へ。ああ、陽射しがまぶしいぜ。


 広がる世界。


 無数の世界樹の葉。いくつかの葉っぱの上にはジャイアントクロウラーの姿も見える。世界樹の中層――ここからが真の世界樹の迷宮だな。

『14型、この先は罠が多い。慎重に、な』

「了解です、マスター」

 改めて14型が駆ける。


 うろの中へと入り、建物と木が混じり合った不思議な空間を14型が駆ける。床から槍が飛び出すよりも速く駆け抜け、開いた落とし穴も、その何も無い空間を蹴って飛び抜け、飛んできた矢をたたき落とし、14型が進む。えーっと、14型さん、わざと罠を発動させていませんか?


 あっという間にトラップ地帯を抜け、突き当たりのはしごを飛ぶように駆け上がる。そして、その先は巨大な広間になっていた。

 そこには何も無い、何もいない。かつて、ここには一つ目の巨人が居た。重なった世界のいくつかでは、俺の仲間になったこともあったクルーエルキュクロープのキューちゃんだな。


 ……。


 先に進もう。


 巨大な広間を抜けると、何も無い空間をリフトが動くエリアになっていた。一定のリズムで動くリフトを14型が危なげも無く飛び乗っていく。


 そして中央の浮島に到着する。浮島の中央にはガラスシリンダーのような遙か頭上高くまで伸びた装置があった。

 ここを抜ければ世界樹の最後の部屋だな。


 何というか、覚醒した14型の力のおかげで一瞬だったな。ほんと、一瞬だったなぁ。

『14型、ここで少し休憩にしよう』

「了解です、マスター。水をご用意します」

 あー、うん。


 にしても、ホント、ここまであっさりと攻略されてしまうとなぁ。俺、凄い苦労したんだぞ。もうお前一人でいいんじゃないか的な状況じゃないか。


 俺の頭の上の九尾の子狐がきゅうんきゅうんと楽しそうに鳴いていた。

2018年7月21日修正

ポインズンワームの毒液を → ポイズンワームの毒液を

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