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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
12 むいむいたん

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12-8  太陽の神殿で眠るものたち

―1―


 月の神殿を出て、左手側に作られている小さな神殿へと向かう。フェンリルの言葉が正しいなら、ここに太陽の神殿への転送装置があるはずだ。三人の女神の使徒を倒しているからな、使えるようになっているはず。


「開けます」

 14型が小神殿の扉を押し開ける。小神殿の中、その中央には嫌というほど見かけた台座が置かれているだけだった。いつもの転送の台座だな。転送の台座、か。転送技術を開発したのは――フミチョーフ・コンスタンタンだったよな。フミチョーフ・コンスタンタンって、フミコンなんだろうなぁ。いや、決めつけは良くない。これも本人に聞けば良いことだからな。後で確認しよう。


 さて、と。


 俺は台座の前へと手を伸ばし――そこで手を止める。いや、転送の前にやることがあった。


 さすがに全裸に黄金妃だけってのは、うん。


 確か、鍛冶士と錬金術師のスキルに何かあったはず。俺は、俺の中の重なった記憶からスキルを選び出す。


――《魔法糸》――


 《魔法糸》スキルを使い、糸を作り出す。さらに周囲の魔素を集め魔石を作り出す。ここは魔素が多いから、人造魔石を作るのは簡単だな。ここが、魔素が多いのはさ、ここの由来を考えたら当然、か。瘴気の発生源があった本来の――壊れた本来の世界だもんな。


――《下級防具作成》――


 鍛冶士の《鍛冶》スキルから派生した《下級防具作成》スキルを使い、俺の糸からローブを作る。うむ、失敗しなかったな。


――《防具精製》――


 人造魔石と作った糸を合成する。これで少しは品質が良くなるはずだ。良くなっているよな? 今は叡智のモノクルが無いから鑑定することも出来ないからなぁ。不便だ。重なった世界を渡る前に叡智のモノクルだけでも回収しておけば良かったか? うーむ。まぁ、今更だな。


 俺は作成したローブを羽織る。これで全裸は卒業だな。


 さあ、改めて、と。


 俺は台座に手を置く。足元に光り輝く円陣が走り、周囲の雰囲気が変わった。転送完了かな?


 台座の置かれた小神殿を出ると右手側に大きな神殿が見えた。先ほどと配置が逆だな。


 俺は太陽の神殿の中へと入る。その中は至る所が崩壊しており、そこであった戦いが、どれだけ激しかったかを教えてくれていた。俺と14型は、崩壊した太陽の神殿を歩く。


 そして、その奥には目を閉じ、静かに眠るジョアンの姿があった。勇者ジョアン――勇者、か。誰よりも勇敢だったから、こんなところまで来てしまってさ。

 俺はジョアンへと近寄る。


 手を組み、目を閉じ、静かに眠っている。息は――無い。


 この状態でどれくらい経っている?


 間に合うか?


 俺はジョアンに手を置き、その体を作り替える。この世界の人は、魔素から作られている。そう、かつては女神セラの作った人形だった。長き時の中、意思が、意識が宿り、人となった。回復魔法で傷が治るのも、魔素で作られているから、か。

 体の傷は治すことが――そう、作り替えることで綺麗にすることくらいは出来る。


 だが、意識が戻るかどうかは、賭けだ。人形から人になる過程で得た『何か』、それが抜け落ちてしまっていれば、無くなっていれば、蘇ることはない。


『ジョアン、帰ってこい!』


 眠ったジョアンは動かない。


『お前を待っている奴らがいるんだぞ!』


 眠ったジョアンは動かない。


「マスター、こういう時は、電撃でも当ててバリバリとやれば良いのです」

 14型がよく分からない突っ込みを入れてくる。電撃で蘇るとか、どこのゲーム世界だよ。エビフライを蘇らせるのとは違うんだぞ。


 ……。


 この世界が葉月せらの創った世界だとしたら、意外と有りかもって思ってしまったのが、なんとも……。


 眠ったジョアンは動かない。


「マスター、何か小さなものの気配が近づいてきます」

 うん?


 14型の声に反応したのか、俺たちの前に小さな小さな子狐が現れた。その尻尾は九本に分かれている。

 子狐はきゅうきゅうと鳴いている。


 九尾の子狐は、きゅうきゅうと鳴いているかと思ったら、俺へと飛びかかってきた。そして、そのまま俺の頭の上に乗り、そこに居座る。羽猫の別バージョンみたいなヤツだな。

「そこをどけるのです」

 14型が子狐をどかそうとするが、その手をまるで猫のような動きでたたき落とす。猫パンチ?


 九尾の子狐が俺の頭を叩く。な、何?


 九尾の子狐がジョアンの体の上へと手を向ける。見ろってことか?


 あれ?


 俺は、そこだけ魔素の流れがおかしいことに気付く。なんだ? 何かが滞留している?


 もしかしてッ!


 俺は滞留している魔素を集め、魔石を作る。これは人の魂か? いや、魂に近い、何かか?


『今度こそ、蘇れッ!!』

 俺は作成した魔石をジョアンに埋め込む。


 ジョアンの体がビクンと跳ね、脈動する。呼吸が戻る。

「マスター、そのマスターの頭上に居座っている子狐が得意そうに、こちらを馬鹿にした顔をしているのです。攻撃許可を求めます」

 求めなくていいから。


『14型、真銀の器はあるか?』

「はい、こちらに」

 14型が何処からか真銀のコップを取り出していた。ホント、何処に持っているんだろうな。


――[アクアポンド]――


 真銀のコップの中に水を作り出す。

『ジョアンの目が覚めたら、飲ませてあげてくれ』


 しばらくして、ジョアンは目覚めた。


 頑張ったな、ジョアン。

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