12-7 そうじゃないかと思ったよ
―1―
『14型、他の仲間たちはどうなっている?』
ミカンとシロネはやって来た。しかし、探求士の3姉妹は……?
「グルコンとクアトロはキャッツルガとウリュアス、ゼロターの三名をかばい死亡。その三名もフォウとムーの罠にかかり亡くなっています」
そうか。俺が星の神殿で見た映像は本当だったのか。三姉妹は石化、そして、あのおびただしい血は、おっさん連中のものだったのか。あのおっさん連中、結局、神殿の攻略に参加していたのかよ。
本当に、本当に馬鹿な奴らだよッ!
……。
『14型、そのものたちを弔った後、次の神殿に向かうぞ』
「了解です、マスター」
次に向かうのは太陽の神殿か。
俺と14型は月の神殿を出ようと動き出す。と、そこに大きな声がかかった。
「おいおい、俺たちを勝手に殺すんじゃねえぜ」
「そうだぜー」
そこには生きているのが不思議なくらいの深い傷を負い、血だらけになりながらも3つの石像を背負った、つるつるとモヒカンのおっさん二人がいた。
「おう、ここで良かったんだよな?」
二人が石像を丁寧に、壊れないように、慎重な動作で地面へと置く。
おいおいおい! 生きていたのかよ。
「さすがに疲れたぜ」
「ああ、俺らの仕事はここで終わりでいいよな?」
おっさん二人がニヤリと笑い、そのまま座り込む。そして、ゆっくりと、その瞳を閉じる。
――[スターヒール]――
俺はおっさんたちに回復魔法をかける。俺の回復魔法によって、深い傷を負い、血まみれだったおっさんたちの体が再生していく。相変わらず、魔法ってのはインチキくさい力だな。
『まだ終わりじゃないぞ』
俺はおっさんたちに言葉をかける。おっさんが驚いたように目を開け、自分たちの体を見、そして俺を見る。おっさんたちは俺の姿を見て驚き、そしてゲラゲラと笑っていた。
「なんだよ、王様じゃねえか。テカテカした足が元に戻ってるけどよ、どうした?」
「素っ裸になって、どうした? 身ぐるみを剥がされたか? それとも、裸にブーツとか、そういう趣味か?」
あー、今、俺、全裸だったな。装備品は全て無くなったもんなぁ。にしても、こいつら、ホント、世紀末なチンピラみたいな喋り方をしやがるぜ。
俺は、こちらをからかっているおっさん二人を無視して三姉妹の石像へと歩く。そして、俺は、まん丸お手々で石像に触れる。うん、これなら何とかなりそうだ。
俺は石像の情報を書き換え、元の姿へと戻していく。
『すまないが、この三姉妹を連れて迷宮都市の防衛に戻ってもらっても良いか?』
俺の言葉につるつるのおっさん――グルコンが片方の眉を上げる。
「それはいいけどよ。俺たちは来たばかりだぜ?」
「そうだぜ、ここが目的地だったんじゃねえのかよ」
あー、うん。来てすぐ帰れって言われたらなぁ。
『いや、ここでの目的は終わった』
俺の言葉におっさんが舌打ちをする。
「たくよぉ、俺ら、なんの役にも立ってないってことかよ」
俺は、その言葉を否定するために首を横に振ろうとして、その動かす首部分が無いことに気付く。あー、今は芋虫の姿だもんな。
『いや、二人の力があったからこそ、シロネが、ミカンが、14型が、ここまで来ることが出来た』
そうだよな。
「それだ! 猫人族と森人族のお嬢ちゃんたちの姿が見えねえけど大丈夫なのかよ」
シロネとミカンか。二人は今も女神と一緒だろうな。無事だといいが――いや、女神セラが葉月せらなら、殺しはしないだろう。俺を待っているはずだからな。
『大丈夫だ』
「ちっ、信じるぜ」
ああ、信じてくれ。
俺は三つの石像を元に戻していく。
「じゃあよ、俺らは迷宮都市に戻るぜ。王様はどうするんだ?」
『自分は残った仕事を片付けに行く』
「おう、頑張れよ」
おや? 仕事が残っていると言ったら、連れて行けって言うかと思ったんだけどな。
「どうした、王様。なんだか、意外そうな顔をしていないか?」
『いや、連れて行けと言うかと思ってな』
俺の言葉におっさん二人はゲラゲラと楽しそうに笑った。
「なんだよ、着いてきて欲しかったのか? 寂しかったのかよ」
「俺たちは役割を分かってるからよー」
はいはい、そうだな。
『大丈夫か?』
「俺たちを誰だと思っているんだ?」
「まぁ、さっき来たばかりの道を戻るのは面倒だけどな!」
あ、うん。迷宮をやっと抜けたと思ったら、すぐに帰れ、だもんな。まぁ、でも熟練の冒険者だもんな、楽勝だよな。
「王様――いや、ラン」
なんなんだぜ?
「また、あのお湯につからせろよ」
お風呂、な。
「お前持ちで飯をおごれよ。それと水に酒!」
おっさん二人がゲラゲラと笑っている。ホント、このおっさんたちは、最高だぜ。
三つの石像を、三姉妹の体を、元に戻す。これで、いずれ目を覚ますだろう。と、このままだと、おっさん二人が運ぶのが大変か。これが二人なら、数的に背負っていけるけどさ、三人だもんな。
――《魔法糸》――
《魔法糸》を使い簡易的な風呂敷のような布を作る。
「さすが王様、器用なもんだぜ」
何がさすがか分からないんですがー。
「それじゃあ、俺らは行くぜ」
『ああ、迷宮都市を頼んだ』
「何言ってやがる。俺たちの迷宮都市じゃねえか」
ああ、そうだな。そうだったな。
「へへ、任せておけよ」
ホント、このモヒカンは……。実力はあるのに、世紀末なチンピラみたいな喋り方をしやがって!
任せたからな!
「マスター」
ああ、俺たちは太陽の神殿に向かおう。
で、だから、14型さん、あの、俺を無理矢理持ち上げようとするなって。