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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
12 むいむいたん
941/999

12-4  ただいま。お帰り、真紅妃

―1―


 目の前の三人が何か喋っている。何やら言い争っているみたいだが、言葉が分からない。言葉が分からないのは不便だなぁ。えーっと、こういう場合がどうするのが一番だ?

 俺は自分の中の深い部分、奥底へと潜る。言葉、言葉……。


 しかし、目の前の三人は、ゆっくりと検索が終わるのを待ってはくれないようだ。


 目の前の魔法使いが赤い風の刃を生み出す。それを女探求士がローブを引っ張って止めようとするが、魔法使いは無視して魔法を発動させる。

 致命的な殺傷力を持った赤い風の刃が俺へと飛んでくる。しかし、それを俺はサイドアーム・アマラに持たせた真紅妃で突き、吸収させる。風属性を持った真紅妃に風属性の魔法は効かないんだぜ。にしても、こんな感じでこれからも攻撃されるなら落ち着いて考えることも出来ないな。


 とりあえずおとなしくなってもらおう。


――《永続飛翔》――


 一瞬だけ《永続飛翔》スキルを発動し、三人の前へと飛ぶ。その一瞬で俺の中の魔力がごっそりと削られる――が、すぐに周囲の魔素を取り込み補充する。

 目の前には驚いた表情の女探求士。一番厄介な人からッ!


――《魔法糸》――


 先ほどまで吐き出していた糸よりも強化され、丈夫になった魔法の糸を吐き出し、女探求士をぐるぐる巻きにする。よし、これで無効化ッ!

 しかし、そんな《魔法糸》を飛ばしている俺の隙を突いて、金属鎧の戦士が斬りかかってきた。上段からの流れるような剣の軌跡。お? 流し斬りか?

 卓越した熟練の技なのだろう。しかし、喰らってあげるわけにはいかない。俺はその一撃を真紅妃で受け流す。まさか受け流されるとは思っていなかったのだろう、戦士が驚き、その手が止まっている。


――《魔法糸》――


 その一瞬の隙を突いて、金属鎧の戦士も《魔法糸》でぐるぐる巻きにしてあげる。たく、俺が悪い奴だったら魂を奪う一撃を放っているところだぜ。

 俺はローブの魔法使いの方へと振り返る。魔法使いは、どうしたら良いのか分からなくなったのか、あたふたと慌てていた。うん、あたふたは慌てるものだ。


――《魔法糸》――


 最初の二人と同じようにローブの魔法使いも《魔法糸》でぐるぐる巻きにする。


 はい、制圧完了、っと。


 ぐるぐる巻きになった三人は何とか抜けだそうと暴れている。さて、と。


 まずは、この三人を捨ててしまおう。何を言っていたのか、気になるところだけど俺には時間が必要だからね。


――《魔法糸》――


 俺はぐるぐる巻きになった三人をさらに一つの塊にする。そして、その一塊になった三人を《魔法糸》で繋いだまま、俺は世界樹の葉っぱから飛び降りる。


――《浮遊》――


 地表ギリギリで《浮遊》スキルを使い着地する。さて、と、この三人をここで解放したら、葉っぱに戻るか。戻りは《魔法糸》を使って外周から地道に登るかな。まだまだ葉っぱの力は必要だもんな。うん、それにさ、今更、世界樹の迷宮を通って葉っぱに戻るような手間はかけたくないしね。

 んでは、解放しますか。このままぐるぐる巻きで魔獣に襲われて何も出来ずに死なれでもしたら寝覚めが悪いもんな。


 ん?


 そこで『青いマント』を装備した女探求士が身につけている首飾りが目についた。えーっと、そうだな。

 ちょっとした思いつきと気まぐれだ。


 ペンダントではなく、首飾り。しかも、おしゃれで着けているような魔力も籠もっていない――ただの首飾りだ。


 俺は女探求士の元へ近寄る。


 えーっと、何かあったかな? うーむ、これかな?


――《永続付与》――


 錬金術師の上位スキル《永続付与》を呼び起こし、首飾りに木属性ブレス無効耐性を付与する。


 ……。


 よし、成功だ。


 女探求士は驚いた表情でこちらを見ている。まぁ、保険というか、俺の勘から来る思いつきだけどさ。


 じゃ、帰りますか。


――《魔法糸》――


 《魔法糸》を飛ばし、世界樹を登り始める。その途中、三人から攻撃を受けないだろう距離まで離れてから、三人を拘束していた《魔法糸》を解除し解放する。ふぅ、何とかなったな。これで三人が俺を恐れて登ってこなかったら、いいなぁ。まぁ、もし、次に登ってきたら――その時は逃げよう。


 さあ、登ろう。葉っぱに帰ろう。


 まだ本調子では無い、今の俺には、世界樹の葉の力は必要だ。これから、どんどん無茶をしないと駄目だろうしな。


――《魔法糸》――


 俺は《魔法糸》を飛ばし続け、上層に生えている世界樹の葉っぱに着地する。


 さて、と、問題の一つは解決だな。次は……。


 もしゃもしゃ。


 そう食事だよなぁ。


 もしゃもしゃ。


 魔素をたっぷりと含んだ世界樹の葉を食べ体に取り込む。次にやることは、このガス欠状態の真紅妃の回復だな。風魔法を吸収して、少しだけ回復したみたいだけど、こんなのは焼け石に水だからな。


 真紅妃は眠っている。目覚めたのはさっきの一瞬だけだ。俺の危機だったからか、それとも、風魔法を吸収して少しだけ力を取り戻したからか、それともその両方だったのか、それは分からない。しかし、そのおかげで、俺は一部、力を取り戻した。だが、俺も真紅妃も、まだまだ本調子ではない。


 俺は周囲の魔素を集め、固め、魔石を作っていく。作った魔石を真紅妃に吸収させる。無いよりはマシな人造魔石だが、これでも繰り返せば真紅妃を回復することは出来るはずだ。

 今の俺には世界樹の迷宮に入って、そこから魔石を集める気にはなれなかった。


 まぁ、地道に繰り返せば、真紅妃は目覚めるだろうからな。


 もしゃもしゃ。


 足元の葉っぱを食べ、人造魔石を作って真紅妃に吸収させる。何度も、何度も繰り返す。


 何度も、何度も繰り返し、そして、真紅妃が目覚めた。


 お帰り、真紅妃。

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