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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
12 むいむいたん

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939/999

12-2  襲撃、そして戦闘となった

―1―


 とりあえず食事をしよう。


 もしゃもしゃ。


 というわけで現状把握。

 魔法があって、槍の刺さった巨大な葉っぱがあって、そして自分の姿が巨大な芋虫になっている。


 ん?


 って、ことは……?


 もしかして、芋虫ではなく、芋虫型モンスターなのか?


 この姿、どう考えても、知的な種族ではなく、狩られる側の姿だよな? 俺は俺だから、こうやって考えることが出来るのかもしれないけどさ、喋ることも出来ないし、これは不味いよな? 出来ることなんて糸を吐くのか、魔法のつららを作って飛ばすことくらいだ。こんなの人里に降りた瞬間に、狩られて終わりだよ。


 もっと力をつけないと……。


 ん?


 何で、俺、当たり前に人里がある前提で考えて、さらに人里に降りるって考えたんだ?


 なんで……だ?


 いや、そりゃあ、このまま魔獣として生きても、魔王として狩られるだけだからだよな。人と共闘した方が、より良い結果になるからだよな?


 ん?


 俺は、何を考え、何を思っているんだ?


 ……。


 ま、まぁ、難しいことは考えずに世界樹の葉を食べよう。


 もしゃもしゃ。


 もしゃもしゃ。


 まずは足元の葉っぱのサイズを測ろう。ゆっくり、のしのしと這って歩く。お、遅い。そ、そうだ、糸を吐いて、ひゅんひゅんと飛んで移動しよう。幸いなことに糸を吐く速度自体は速いし、結構、遠くまで飛ばせるからな。

 糸を吐きながら動いて分かったこと。この葉っぱのサイズは1メートルくらいの今の俺のサイズを基準として、横が俺8人分、縦が10人分くらいか? ちょっとした学校の教室くらいのサイズだよな?

 そして、その葉っぱの先端部分くらいに槍が刺さっている。


 俺は改めて槍へと近づく。目が悪いからな、近寄らないとよく分からないもんな。


 何だろう。


 豪華な装飾が施されている訳ではないのに、こういったことを槍に対して思うのはおかしいのかもしれないが、見る者を畏怖させる王としての――女王としての威厳を感じる。


 そして、俺には、それがとても懐かしかった。


 俺は槍へと手を伸ばす。この、俺のまん丸お手々で持てるか分からないが、それでも手を伸ばす。

 槍は力を失っているかのように、ひんやりと冷たかった。


 そして、何の反応もない。


 というか、抜けない。


 こ、これ、葉っぱに刺さっているだけだよな? 何で抜けないんだ?


 俺が体重をかけて押しても、糸を巻き付けて引っ張ってみても、まったく動かない。


 うーん、うーん、うーむ。


 とりあえず葉っぱを食べよう。


 もしゃもしゃもしゃ。


 俺は槍と共に魔法の練習を続ける。


 もしゃもしゃ。


 周囲には、ここと同じような葉っぱが無数にあり、俺と同じような姿の芋虫が何匹もいる。しかし、槍が刺さっているのは、俺の――この葉っぱだけだった。まぁ、他の芋虫は緑で、俺は青だからな。種族が違うんだろう、多分。会話も通じそうにないもんなぁ。


 俺は魔法の練習をしよう。


 もしゃもしゃももしゃ。


 槍が俺を見守る中、俺は魔法の練習を続ける。


 何時間も、何日も、何年も。


 俺が日付という概念が分からなくなるくらい、同じことを続けた。だって、俺にはそれしか出来なかったから。


 もしゃもしゃもしゃもしゃ。


 そして、ある日、変化が訪れた。


 木の枝を伝って人が歩いていた。三人の人だ。目が悪く、俺と人との距離だと、大体の姿形しか分からないが、あれは間違いなく人だ。先頭に、周囲を警戒しながら歩いている身軽な皮鎧を着込んだ女性、その次に性別は分からないが重そうな金属鎧に包まれた人、最後にローブを着込んだ男だな。

 盗賊、戦士、魔法使い――まるでゲームだな。


 女盗賊がこちらを指さし、何かを言っている。不思議と、耳がないはずなのに音が分かるのは幸いだったが、彼女たちが何を言っているのか理解出来ない。俺の知らない言語だ。


 女盗賊たちは俺の方へと近づいてくる。いや、彼女たちが狙っているのは、この槍か!?


 女盗賊が、やっと俺の姿に気付いたようで、何やら肩を竦めている。そして、その後ろにいた戦士が動き、問答無用で斬りかかってきた。その動きは金属鎧に包まれているとは思えないほど速いものだった。俺はとっさに糸を飛ばして動き、回避する。

 女盗賊たちが何かを喋っている。たく、だから、分からないんだってばさ。


 多分、お宝みっけ、その前にボスモンスターがって感じか? そうだよな、槍の前にいる俺は、まさにお宝を守るモンスターって感じだもんな。


 俺は氷の塊を浮かべる。とりあえず牽制だ。


 すると、俺に対抗するように魔法使いの男が火の玉を浮かべた。その瞬間、魔法使いの男は女盗賊にチョップを喰らっていた。火は危険ってことだろうか? 何というか、意外にも女盗賊がリーダーぽいな。


 女盗賊が紫の火の玉を浮かべる。あれ? さっきのは火を使うな、じゃなかったのか。では、何だったんだろう。にしても、俺の方に戦うつもりはないんだがなぁ。でも、向こうからしたらお宝を守る番人モンスターにしか見えないんだろうしさ。


 仕方ない。


 俺の力が何処まで通じるか分からないが、おとなしくなってもらいますか!

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