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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
11 深淵攻略

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11-52 深き深き淀みの淵の中へ

―1―


 ヒトデ型ロボットは、近寄れないほどの熱を発し融解している。中央部――剥き出しになっていたフミチョーフ・コンスタンタンが収まっていた部分は、融解した金属によって覆われ、見えなくなっている。にしても、だ。金属が溶けたからか、酷い臭いだ。

 中のフミチョーフ・コンスタンタンは――生きていないだろうな。


 しかし、だ。

「良かったのか?」

 無形たちが、何を、という表情で俺を見る。

「いや、この隕石の中心部に入る為のスイッチだよ。この状況だと、それも一緒に……」

 無形は肩を竦める。

「あのスイッチが本当に入り口を開けるものだと思っているのか?」

「違うのか?」

 俺の言葉に無形はため息を吐くだけだった。へ? どういうことだ?


「先輩、どっちでも良かったってことだぜ」

 優が俺の肩を叩く。

「師匠、こちらには内部構造をスキャンできるアルファがあるんですよ。本当かどうかも分からない敵の言葉に乗る必要は無いです」

 な、なるほど。だから、ゆらとも容赦なくアルファで攻撃していたんだな。

『マスター、ゼロも調査中です』

 いつの間にか足元にすり寄っていたゼロもそんなことを言っている。あー、そう言えばゼロも居たな。


「この作戦は分かっているな?」

 と、そこで、無形が俺を見た。作戦の目的か?

「瘴気の発生を止める為に、この隕石を破壊することだよな?」

「そうだ。そのために必要なことは?」

 無形が再度問う。何だよ、ここに来て再確認か?

「外部から破壊できないから、内部へと侵入して、中から壊す――だよな? 事前の調査で中に空洞があるのは分かっていて……ん?」

「その通りだ」

 ん? アレ?

「いや、ちょっと待ってくれ」

「どうした」

「ここを爆破するんだよな?」

「その通りだ」

「帰りはどうするんだ? ここまで乗ってきたアマテラスは大破しているよな? 帰る為の手段がないじゃん!」

 俺の言葉に無形は顔に手を当て、ため息を吐いていた。

「今更ですか」

 巴が冷たい目で俺を見ている。

「最終兵装の承認の段階で理解していると思ったが、そうか」

 無形が呆れたように俺を見ている。あー、承認って。そうか、艦の全エネルギーを使うって言っていたもんな。帰る手段がなくなるのは想像出来たことじゃないか。無形は理解して承認したと思っていたのか。


 って、ちょっと待てよ。


 俺、この作戦の前に、巴に生きて帰ろうって言ったよな? 帰る手段がないのに、その台詞は――なんて、間抜けだ。

「大丈夫です」

 巴が俺を見る。

「そうです……ネ」

 ユエインも微笑み、俺を見る。

「師匠、全エネルギーって言っても、アルファが動く分くらいは残っているんだから大丈夫だよ」

「そうだぜ、大丈夫さ」

「そうさのう、生きて戻らねばならぬからな!」

「そうデース。セッシャ、やることがあるデース」

 皆が俺を見る。そ、そうだよな? 何か帰る為の手段があるんだよな? たく、無駄に心配させるぜ。


「では、これから入り口探しか?」

 俺の言葉に無形は首を横に振る。

「いや、その必要はないかもしれない」

「どういうことだ?」

「まぁ、待て」

 む?


『マスター、地表の揺れを検知』

 ん?


 地面が揺れ、そして隕石の中央部が開き始めた。どういうことだ?


 そして、そこからひょこっと白い手が現れる。

「みんなー、お待たせやねー!」

 それは来栖二夜子だった。二夜子が開かれた入り口から這い上がる。

「ちょっと手間取ったんよ」

 二夜子は元気に手を振りながら笑っている。

「いや、よくやった。内部は?」

「隊長、見た方が早いと思うんよねー」

 二夜子の言葉に無形が無言で頷き、こちらへと振り返る。

「行くぞ」

 お、おう。


 開かれた入り口へ――深淵の中へと進む。

「気をつけてぇなー、本来は昇降機で降りるのか、垂直の穴になってるんよ」

「ニャーコ、セッシャにお任せデース」

 リッチが腰につけた巻尺のような装置から細い紐を伸ばす。そして、地表部に引っかけ降ろしていく。

「私から降りるねー」

 二夜子が紐を伝って器用に降りていく。その後を無形、円緋のおっさん、ユエイン、巴、優、ゆらとが降りていく。

「センパイ、どうぞデース」

 リッチの言葉に俺もゼロを片手に持ち、降りる。これ、下手したら手の皮が大変なことにならないか? みんな手慣れたものだなぁ。こういう道具を使う練習でもしていたんだろうか。


 にしても、深い。


 そして、薄暗い。


 二夜子は道具を持たず、この中へ飛び降りたんだよな? 何であいつ、無事だったんだ?


 ……。


 そして、終わる。


 降りていた――足が地面に着く。うお、暗くて、床が見えなくて、油断していたから足がぐにゃあって、ぐにゃあって、黄金妃がなかったら折れていたかも……。

「センパイ、どいて欲しいデース」

 上からリッチの声が。おおっと。


 俺は慌てて避ける。


 最後に降りたリッチが紐を回収する。

「帰りは大丈夫なのか?」

「センパイ、大丈夫デース」

 本当かよ。


「音はないですネ。明かりをつけても大丈夫そうですネ」

 ユエインの言葉にLEDライトの明かりが灯る。


 照らし出されたのは……、

「何かの実験施設に見えるぜ」

 優の言葉通り、そこは何かの実験施設のようだった。隕石の中に実験施設?


「ここでフミチョーフ・コンスタンタンが実験、研究をしていたんやろうねー」

 無数のよく分からない機械。あちこちに伸ばされたよく分からない配管。巨大で透明な円筒。何の実験施設だったんだ?

 あのヒトデ型のロボットや空飛ぶ銀色の塊とかを作ったのがここなのか?


「内部に入ったけど、ここで爆破するのか?」

「いや、中心部へ向かう」

 無形の言葉にリッチと二夜子が頷き、先導する。

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