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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
11 深淵攻略
915/999

11-38 そして、もう一つの力を

―1―


 結界が降り注ぐ光を弾く。こんなことが出来るなんて巴は本当の霊能者なのかな? 凄いな。


 しかし、降り注ぎ続ける光に耐えられなくなったのか、結界が音もなく砕け散る。あー、もう、凄いって言ったそばからコレか!


 俺は真紅妃を構え、降り注ぐ光を貫いていく。そこまで大きくない、数がないのが救いか? まぁ、最初に巴の結界がある程度は防いでくれたから、少しは楽が出来たかな。


 そして、渦巻いていた黒雲が消えていく。さすがに、終わりはある、か。しかしまぁ、空から光る流星が落ちてくるとか、本当に魔法だぜ。


 しかし、歌は終わらない。


 ぐったりとした頭イソギンチャクから、黄色い液体が噴き出す。俺が貫いたからか? こいつ、まだ生きているのか?


 歌は終わらない。


 空がまたしても暗雲に覆われていく。おいおい、アレを二発目とか洒落にならないぞ。さっき結界を張ってくれた巴は気絶しているし、俺は何とかなるにしても、巴たちは……。


 どうする、どうする?


 って、目の前のコイツを真紅妃でぶっ倒すしかないよなぁ。


 俺は真紅妃を構える。


 目の前の頭イソギンチャクから吹き出した黄色い液体が地面へと落ちる。その黄色い液体がジュワジュワと音をたてて枯れ葉などを溶かしていた。おいおい、溶解液か何かか?

 黄色い液体は止まることを知らず、頭イソギンチャクからジュバ、ジュバと溢れ出る。黄色い液体が周囲の木に付着し、その木を溶かす。木が崩れ落ちる。おいおいおい、危ない。


 黄色い液体が溢れていく。周囲を溶かし濡らしていく。


 空は――周囲は、どんどん暗くなっていくし、近寄ろうにも黄色い液体が邪魔して近寄れない。


 どうする、どうする?


『マスター、フィア反応です』

 足元に転がっていたゼロが黒い瞳を点滅させながら喋る。って、おいおい、ここに来て、さらに雑魚も増えるのかよッ! まだ、無形たちが合流して来るような気配はないし、ヤバいぞ、本当にヤバいぞ。


 そこで、真紅妃が震えた。


 うん? まさか、出来るのか?


「おい、優とリッチ、何とか時間を稼げないか?」

 俺は青い顔で荒い息を吐いている二人へと呼びかける。


 空は――暗闇の雲が空を覆い尽くそうとしている。


 周囲からは先ほど無形たちが足止めをしていた幽鬼のような化け物たちが現れ始めた。こいつらは新手か。こんな追加オーダーは頼んでないってのッ!


「あああああぁぁぁぁぁぁ!」

 と、そこで突然、安藤優が叫んだ。歯を食いしばり、その唇から血を流しながら剣を杖のように持ち立ち上がる。

「俺たちが負けたらよぉ! ここが、人類の背水の陣だぜぇぇっ!」

 安藤優がヤケクソのように叫ぶ。

「おい、大丈夫かよ」

「先輩! 任せなぁぁぁ!」

 安藤優が親指を立て、青い顔のままニヤリと笑う。無理してるなぁ。


「さあああよぉぉぉ! 行くぜーっ!」

 安藤優が剣を持ち、周囲の幽鬼たちへと駆ける。


「ここが――デース」

 リッチが、生まれたての子鹿のようにプルプルと震えながら立ち上がる。そして、懐から拳銃を取り出す。そして、自分の太ももを撃った。おいおい、何をしているの!?

「こ、これで大丈夫デース」

 そのまま取り出した布で太ももを縛り出血を抑える。そして、こちらを弱々しい瞳で見て笑う。

「彼ばかりに、イイカッコ、させまセーン」


 リッチが銃を空へと向け、暗闇へと放つ。そして、そのまま目の前の頭イソギンチャクへと撃ち続ける。

「時間、稼ぎマース」

 途中、弾を補充し、何度も撃ち続ける。そのたびに、空の黒雲の動きが止まる。


 おいおい、こいつら……。


 そうだな、こいつらが時間を稼いでいる間に、俺はッ!


 俺は真紅妃を地面に突き刺す。さあ、行くぜ。真紅妃、お前がやろうとしていること、信じるぜ。


 真紅妃が、赤く、紅く、光る。


 紅い奔流がほとばしる。


『巨大なフィア反応です』

 足元に転がっているゼロが何かを言っている。


 ああ、そうか。そうだな。俺には、もう一つの――忘れていたよ。


 真紅妃が、紅い光が、空間を、世界を切り裂く。


 そして、それは現れた。


 時を超え、世界を超え――俺の為にッ!


「先輩、そいつはぁ!」

「ナンナンデスカー!」


 俺の目の前に、ゆっくりと金色に輝く羽のついたブーツが降りてくる。


 俺は金色のブーツへと手を伸ばす。しかし、ブーツは光り輝く金色の紐へと分解し、俺の手をするりと抜ける。それはまるで何かに怒っているかのようだった――いや、そうだな。俺には「呼ぶのが遅い」と怒っている浴衣姿の少女の姿が見えていた。

 そして、分解した紐が俺の足元に絡みつく。紐は形を変え、俺の足を覆う具足となる。まるで金属で作られた機械の足のように。


 俺は真紅妃を握る。握った右手の小手がはじけ飛ぶ。そこからはまるで小手のように硬化した紅い甲殻が生まれていた。あー、巴たちが作ってくれた小手が、目が覚めたら謝っておくか。にしても、俺もどんどん人外化しているよなぁ。


 しかし、これでッ!


 俺はあふれ出る黄色い溶解液へと足をつける。さすがは黄金妃、なんともないぜ!


「行くぜ、真紅妃、黄金妃ッ!」

 そのまま真紅妃を持ち――駆ける。

明後日、木曜の更新は諸事情によりお休みします。

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