11-27 これらのこと、作戦開始
―1―
「次の杭破壊は来栖二夜子、雷月英、安藤優、お前の4人だ」
完全に休んでいたメンバーと入れ替えか。
「オー、セッシャもバトルしマース」
リッチが立候補する。あー、来栖二夜子と一緒に居たい的な感じか? で、バトルって何だよ、バトルってッ! 意味が分からない。
「駄目だ」
「オー、何故デスカー!」
リッチは大げさに、困ったように頭を抱えていた。
「リチャード・ホームズ、お前には単独で第四の杭を調べてもらう」
単独なのか。
「オー、バッド……」
「お前の能力なら、可能なはずだ」
へー、無形はリッチのことを高く買っているんだな。
「さすがやねー」
「マカセテクダサーイ、ノープロブレムデース。諜報活動得意デース」
来栖二夜子が言った瞬間にこれか。調子がいいなぁ。でもさ、そんな片言で得意って言われてもなぁ。
「三本目の杭の破壊の作戦はねぇ、三日後を予定しているらしいわぁ。次の杭は、このアマテラスで近くまで行くわよ!」
妖しいおっさんの言葉に皆が頷く。
「リチャード・ホームズには明日から動いてもらう。そのための足は用意した」
続く無形の言葉にリッチも静かに頷く。
しかし、だ。思うのだ。
「三日後、そんなにのんびりしててもいいのか?」
俺の言葉に無形は静かに首を横に振る。
「そうやねー。駄目だと思うんよ。この間にも、瘴気による感染被害は増えていると思うんよね」
だったら、なおさらじゃないか!
「立場上、作戦に関われない私が言うのもおかしいけどぉ、休養って重要だからじゃないかしら?」
「そうさのう、それがしが思うに、元気なように見えても、戦いとは心を蝕むものよ」
円緋のおっさんが格好つけて、それらしいことを言っていた。
「先輩、焦る気持ち、分かるぜ。でもよ、俺も円緋のおっさんに賛成だぜ」
まぁ、俺一人で駆けていって、ばあーっと解決って訳にはいかないからさ。従うけどさ。でもなぁ。
「本日は以上だ」
無形が解散を告げる。
「いや、ちょっと待ってくれ」
作戦というか、これからの行動予定は分かった。
でもさ、俺には確認しないと駄目なことがあるからな。
「何だ?」
無形が軍帽の下の冷たいまなざしをこちらに向ける。
「皆にも聞きたい」
俺は立ち上がり、集まった皆を見回す。
「杭を破壊したとき、貯められていた力が解放されたように感じた。杭は、隕石に竜脈のエネルギーを送ってバリアを作っているんじゃあなかったのか?」
俺の言葉に対する皆の反応は様々だ。よく分かっていないもの、驚いたもの、考え込んでいるもの、無表情なもの……。
「それが?」
無形の表情は変わらない。それが、ってさぁ。
「……何もないなら解散だ」
解散って、いやいや、おかしいと思わないのかよ。
「いや、待てよ。エネルギーを送っているはずのものが、送られておらず、たまっていたんだぞ。おかしいだろ?」
「たまたま、送られていなかったときだった可能性、一度貯めきってから送信している可能性、どうだ?」
無形の言葉は冷たい。むむむ。
「俺は何か思い違いをしている気がする。不味い気がするんだよ!」
「その根拠は?」
根拠? 根拠ってなぁ。
「勘だよ」
そうかもしれないって疑問に思っただけだからな。
「話にならん」
無形は話を打ち切り、部屋を出て行く。取り付く島もない。
「まぁまぁ、先輩の不安も分かるぜ。でもよ、俺たちは、杭を壊すしかとれる手段がないんだ。やることをやろうぜ」
安藤優はサングラスを下ろし、俺に笑いかける。でもなぁ。
「ちなみに、杭を壊したらバリアが消えるって誰が言い出したんだ?」
これも重要だよな。
「作戦本部ですよ」
ゆらとが呆れたような顔でこちらを見ている。確かに、巴もそう言っていたよな。
「調べたのは、うちと月英ちゃんに巴ちゃんやねー」
来栖二夜子はのほほんと笑っている。調べたのは、その三人か。巴は、このことを初めて言ったときの反応から信用出来るだろうし、うーむ。調べた結果が、そうなんだよな?
俺の思い過ごしか?
確かに安藤優が言うように、これしか取れる手段がないってのも本当なんだよな。
隕石が――今回の瘴気って呼ばれる感染の発生源。それを壊そうと思ってもバリアがあって無理。そのバリアは四つの杭から竜脈のエネルギーを吸い取って作られている。そして、事件の首謀者と思われるのがフミチョーフ・コンスタンタンって人物、か。
うーむ、うーむ。
「ダイジョーブデース。セッシャ、それも調べてくるデース」
リッチはそんなことを言っていた。まぁ、俺が考えても分かるわけでもないし、頼るか。
「ああ、頼む」
「お任せデース」
リッチがわざとらしく髪を掻き上げていた。イケメンだから、そういうのは様になるけどさ、片言なのが台無しだよなぁ。
まぁ、任せたぜ。
そして、次の日、リッチだけではなく、無形の姿もなくなっていた。
「無形隊長も一緒したみたいやね」
来栖二夜子が教えてくれる。えーっと、あいつ、結局、自分で調べに行ったのかよ!
俺の意見で不安になったのか? ツンデレか? 素直に、俺の方でも調べておくとか言ってくれればいいのにさ。
ホント、一言足りないヤツだよ!