表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
11 深淵攻略
903/999

11-26 これで全員が揃ったな!

―1―


「あーら、お疲れさまぁ」

 艦の中に入ると、例の妖しいおっさんが待ち構えていた。待ってるのが、このおっさんとか……。せめて艦長か、隊長の無形じゃないのか?

「とりあえず、報告――よりもシャワーを浴びてきてもらった方が良いかしら」

 海水を浴びまくっているからなぁ、そうさせてもらえると凄く助かる。でもさぁ。

「ありがたい。でも、いいのか?」

「報告のことぉ? それならアルファ経由で確認しているわよ」

 いや、それも重要だったかもしれないけどさ。

「こういう船で、水って貴重じゃないのか?」

 俺が聞くとおっさんは、おほほと笑っていた。船だと水が貴重って聞いたことがあったからさ。

「生活用の水は作ってるから! それに、補給したばかりですもの」

 そういえば、基地から出航したばかりだったな。いろいろあったから、もう何日も経っているような気分だったけどさ、まだ今日の話だったんだよなぁ。


「わかった。ありがとう」

 もう一度、お礼を言っておく。

「師匠、順番だからね」

 俺の横ではゆらとが肩を竦めていた。こいつ、師匠って呼んでるけど、その言葉に敬いがないよなぁ。呼べって言われたから、ただ呼んでいるだけって感じだもんな。


「こういう時、レディファースト、デース」

 リッチが偉そうに前髪を掻き上げていた。

「ほほう、さすがは紳士の国の御仁よなぁ」

 何故か修験者の格好のおっさんが関心している。そして、その当の本人、巴は困ったように黙り込んでいた。


 もうね、何でもいいよ。


「終わったら、作戦会議室に集合ね!」

 妖しいおっさんは、それだけ言うと片手を上げて、どこかへ行ってしまった。作戦会議室に向かったのかな?


 その後、艦内のシャワーを浴び、用意してもらった服に着替える。さあて、作戦会議室とやらに向かいますか。

 リッチと修験者の格好の大男――円緋のおっさん、巴は、すでに向かった後のようだ。


「遅い」

 ゆらとだけが待ってくれていたようだ。


 待たせたな。では、行くぜ。


「師匠、そっちじゃないよ」

 俺が歩き出すと、すぐに、ゆらとがこちらを馬鹿にしたような呆れた声で制止してきた。いや、あのね、俺、この艦の元からの乗組員とかじゃないからね。

「う、うむ。そうか。でも、俺は、この艦の乗組員ではないからな。迷っても仕方ないと思うぞ」

「はいはい。それは僕も一緒だからね。この艦に乗ることなんて、そうそうあることじゃないんだからさ」

 ゆらとはますます馬鹿にしたような顔でこちらを見ている。いやぁ、この年になると物覚えが悪くなってねぇ。若い子は物覚えがいいなぁ。


 作戦会議室に到着する。

「先輩、やったじゃねえかよ!」

 そこではサングラスを上げた安藤優たちが待っていた。妖しいおっさん、無形、安藤優、円緋のおっさん、獣耳の雷月英、えんじ色のジャージに着替えた巴。って、巴、ジャージかよ。お前、私服がそれしかないとか言わないよな? 後は、そう、それに――アレ? 見たことのない女性がいるぞ。


 きれいな人だった。巴も容姿が整っている方だと思うが、この女は次元が違う。綺麗――いや、違うな。妖艶だ。見ていると魅了される、飲み込まれる、そういった類いの危険な容姿だ。その女が口を開く。

「どったのん? あー、そう言えば初めましてだったんよね」

 なんだか、変わったしゃべりだな。


「うちは来栖二夜子、よろしゅうなー」

 その女が名前を名乗る。見る者を吸い込むような笑顔でこちらを――と、そこで手に持っていた真紅妃が震えた。


 ん?


「何で、常に槍を持ち歩いているかと思ったら、そういうことやったんやねー」

 来栖二夜子が笑っている。しかし、その笑顔には先ほどまでの吸い込まれるような感じがない。

「来栖二夜子、遊ぶな」

 無形が来栖二夜子を注意する。

「はいな、かんにんなー。でも、さすがは無形隊長がスカウトするだけはあるんやねー」

 来栖二夜子は猫を思わせるような、そんな表情で楽しそうに笑っている。ん? 何かしたのか?


 まあいいや。


 皆にあわせて、俺も用意された席に座る。席は、後、一つだけ空いていた。後は艦長くらいだな。まぁ、艦長は艦を動かすのに忙しいだろうから仕方ないな。


 これで全員揃ったな。


「リチャード・ホームズの姿が見えないな」

 無形が呟く。

「誰も案内しなかったのかよ」

 安藤優が絶望したって感じで顔をうえに上げていた。演技派だなぁ。って、あいつこそ、この艦が初めてじゃないか!

 巴も円緋のおっさんもここにいるし、ゆらとは俺を案内してたから――おいおい、みんな薄情だな。特に巴なんてプリティガールとか言われて舞い上がっていたんだからさ、案内してやれよ。酷いなぁ。


「隊長、アルファが案内しているみたいです。もうすぐ到着します」

「やれやれ」

 ゆらとの言葉に無形が呆れていた。


 そして、すぐに金髪碧眼の優男――リッチがやって来た。

「やっと到着デース。オマタセデ……」

 そこでリッチに言葉が止まる。何故か小さく震えながら、動かない。ん? どうした?


 そして、無言で歩き、来栖二夜子の前で跪く。

「……marry.me」

 ん? こいつなんて言った? よく聞き取れなかったぞ。


「困ったわー、ホント、困ったんねー」

 来栖二夜子は苦笑している。

「セッシャ、本気デース」

 だから、何が始まったんだ?


「リチャード・ホームズ、後にしろ。ここは作戦会議室だ」

 無形は、このまま何かが始まりそうな雰囲気を打ち壊す。

「2つ目の杭の破壊、よくやってくれたわーん」

 慌てて妖しいおっさんも話を続ける。


「ハウ……、ソーリーデース」

 リッチは名残惜しそうにしながらも、来栖二夜子のそばを離れ、空いている席に座る。


 ホント、やれやれだよ。


 でもまぁ、これで全員揃ったか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ