表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
11 深淵攻略
902/999

11-25 合流地点が港じゃない?

―1―


 車が走る。恐ろしい速度で走り続ける。


 ある程度、走り続けると、異形のカラスたちはテリトリーから外れたのか、元の場所へと戻っていく。なんとか逃げ切れたか。


「合流地点の海まで走ります」

 逃げ切れたことを確認したからか、迷彩服の男が車の速度を落とす。ふぅ、やっと一息つけるな。


「反応、報告、むむむ」

 俺の横ではゆらとが必死にタブレットを操作している。

「皆サーン、セッシャ、リチャード・ホームズとモウス」

 そのさらに横では何故か、金髪碧眼の優男が自己紹介をしていた。

「知ってる」

 ゆらとが顔を上げる。しかし、ゆらとはタブレットの操作が忙しいのか、それだけ言うとすぐにタブレットに視線を戻していた。

「はっはっは。それがしは大空坊円緋よ」

「スモウレスラー?」

 金髪碧眼の優男は、せっかく反応してくれた修験者の格好したおっさんに適当な返事を返していた。

 それに答えてか、おっさんは金髪碧眼の優男に張り手をかましている。それを、ひょいひょいと回避する。もうね、なんだかカオスな空間だなぁ。


「さっきの化け物たちは放置で大丈夫なのか?」

 俺が聞くとゆらとは肩を竦めていた。

「それは僕たちの仕事じゃないよ」

 まぁ、今から戻って殲滅ってのも、やっと逃げ延びたような状況で出来るわけがないし、仕方ないのかなぁ。

「周辺の瘴気が薄まれば、自然と消えていくと思います」

 消えるってなぁ。

「人が変異したような異形も消えるのかよ」

 俺の言葉に巴が頷く。

「フィアは人や動物が瘴気によって姿を変えたものです。瘴気がなければ、その姿を維持することができないです」

 ホントに?

「特にあれらは動物が変異したものだと思います。長持ちしないでしょう」

 長持ちしないって、要は死ぬってことだよな。元に戻るって訳じゃないよな。何だかなぁ。


 車が峠を抜け、海岸線沿いの道へと入る。

「そうだ、飯にせぬか!」

 修験者の格好をしたおっさんが、ゆらとと金髪碧眼の優男の二人を捕まえる。

「どうだ、異国の客人!」

 それに金髪碧眼の優男が苦笑する。

「もう仲間デース。気軽にリッチ、呼んで欲しいデース」

 リッチねぇ。まぁ、お言葉に甘えて、これからはリッチって呼ぶか。


 修験者の格好をしたおっさんが大きく笑い、リッチの背中をバンバンと叩く。

「オー、痛いデース」

 ホント、わざとらしい片言だよなぁ。


「リッチ様、どうぞ」

 巴が皆に缶詰を配る。あー、やっぱり缶詰なんだな。

「オー、プリティガール、カタジケナイ」

 だから、こいつは何処で言葉を習ったんだよ!


 皆に缶詰が行き渡る。

「今回も自分は、これです」

 運転をしている迷彩服の男はチョコレートバーを囓っていた。

「止まって食事にするかい?」

「いえ、車を止めるわけにはいきません。それにアマテラスとの合流地点までは後2時間ほどですから」

 あ、そうなんだ。それなら合流してから食事でも良かったような……。あー、でも、何が起こるか分からないから、食べられる時に食べておくのは正解か。


 もしゃもしゃ。


 今回の缶詰は牛肉の煮込みぽいな。多分、牛肉だよな? 謎の肉を使っているとか、ないよな?

「コールド、デース」

 器用に箸を使い、おでんのようなものを食べているリッチが悲しそうな顔になっていた。まぁ、缶詰だからなぁ。

「ウォームする缶詰アッタ、オモイマース」

 これ、レーションだからなぁ。多分、そういう贅沢な仕様にはなってないぜ。


 もしゃもしゃ。


「食べられるだけマシだよ」

 ゆらとは、もう色々諦めている感じだ。


 その後も車は走り続ける。そして、海岸線から道を外れ、浜辺に降りる。

「何処に行くんだ? 合流地点って港じゃないのか?」

 迷彩服の男はニヤリと笑う。何、その含んだ笑い!?


「見ててください。お願いします」

 浜辺で車が止まり、迷彩服の男がゆらとに何かをお願いする。

「了解です。アルファ」

 ゆらとがタブレットに話しかけると、それにあわせたかのように海面に動きがあった。


 海が大きな水しぶきを上げ、海中から巨大な戦艦が現れる。おー、そういえば潜水艦ぽい仕様だったな。

「って、どうやって、あそこまで行くんだよ!」

 現れた戦艦アマテラスまでは、かなりの距離がある。そりゃあ、潜っていられるくらいの深さの場所にいたんだもんな。当たり前だよなぁ。この車が水陸両用で、海面を走って行くとでも言うのか? 違うよな、違うよなぁ。


「はいはい、師匠。まぁ、見てなよ」

 ゆらとはこっちをみて呆れかえっている。いやいや、何か方法があるんだろうけど、俺は知らないんだからさー。アレか、艦からボートで迎えに来るのか? でも、そうなると車が乗り捨てになるなぁ。


 俺が見ている前でアマテラスが動き出した。そのまま、こちらへと向かってくる。

「お、おい、座礁する、座礁する!」

 最悪の場合、戦艦の底に穴が空くんじゃないか?


「ちょっと、波が来そうですね。少し下がります」

 迷彩服の男が車を下げる。しかし、波の勢いは強く、俺たちはもろに海水を浴びてしまった。

「もう少し早めに呼んだ方が良かった」

「最悪デース」

 皆が色々と文句を言っている。巴なんて、怖い顔になってるな。


 で、戦艦だよ。戦艦アマテラスだよ!


 戦艦アマテラスは何事もなかったように浜辺に乗り付けた。はぁ? どうなっているんだ。

 そのままタラップが降りる。


 車が何事もなかったように戦艦アマテラスに乗り込んでいく。

「この艦は、どこでも上陸出来るように、がコンセプトらしいんですよ」

 迷彩服の男が教えてくれる。た、確かに、どうやっているか、分からないが、何処でも、そのまま上陸出来るって、便利だよな。でも、もう、そうなると戦艦じゃないよなぁ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ