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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
11 深淵攻略
901/999

11-24 二つ目の杭、アティルト

―1―


「ドーデス、到着デース。このクレバーでクールなセッシャにかかれば余裕デース」

 金髪碧眼の優男は両手を広げて得意気だ。はいはい。クレバーなヤツが敵の罠にかかって延々とさまよい続けていたんだよな。祝福された聖銃ってのは、凄そうだけど、コイツ自身は大丈夫かなぁ。


「誰もいないようですね。魔の者――フィアの気配も感じません」

 そうか、それは良かった。ただ、ゆらとたちと合流出来なかったのは少しだけ痛いかな。


 俺は、そのまま杭の前まで歩いて行く。

「待ってクダサーイ、何をするつもりデスカ!」

 金髪碧眼の優男が俺の肩を掴む。何ってなぁ。

「杭を壊す」

 そのために俺が来たんだからな。

「何ヲ……」

「本当に大丈夫なのですか?」

 金髪碧眼の優男の言葉を遮り、心配そうな顔の巴が聞いてくる。任せろ。俺の真紅妃は気力充分だぜ。


「大丈夫だ」

 俺は金髪碧眼の優男の手を振り払い、真紅妃を構える。

「その杭は、セッシャの聖銃でも……」

「俺が杭を破壊している間、敵が来ないか見張っていてくれ」


 さあ、行くぜ、真紅妃ッ!


「砕け、真紅妃ッ!!」

 真紅妃が唸りを上げ、無限の螺旋を描く。


 解き放たれた真紅妃と巨大な杭がぶつかり合う。

 周囲を震わせる激しい衝撃波をまき散らし、杭が、ひしめき、唸る。


 もっとだ。


 全力全開だッ!


 そして、杭が、巨大な杭が、真紅妃の一撃によって――その巨体に一筋の線が走る。


 それが崩壊の序曲となり、一本の線から、次々と線が走り、杭全体を覆っていく。そして、巨大な杭は砕け散った。


 杭は砕けた。


 その瞬間、砕けた杭の上空に、何か青い竜の姿をした光が生まれ、そして消えた。


「ファンタスティック……」

 金髪碧眼の優男は呆然とした様子で杭があった辺りを見ている。どうだ、俺の真紅妃の力を見たかね! って、それよりも、だ。

「巴、さっきの光、見たか?」

「本当に杭を壊すなんて……」

 巴も呆然とした様子で立ち竦んでいる。いやいや、だからね、そんな場合じゃないだろうに。

「巴なら、あの光の正体が分からないか?」

 俺は巴の肩に手を置き、揺する。すると、巴はすぐに正気に戻ったようだ。

「光……? 杭に……、杭にためられていた竜脈の力が解き放たれたのだと思います」

 なるほど。竜脈の爆発的な力が解放されて……ん?


 って、アレ?


 おかしくないか?


「巴、ちょっといいか?」

「何でしょう?」

 巴は少し不機嫌そうだ。うーむ、いつも通りの顔に戻っているなぁ。少し仲良くなったと思ったのになぁ。


「あの杭だが……」

 俺が話そうとしたところで金髪碧眼の優男から待ったがかかる。


「お二人サン、のんきに会話してる場合ジャナイデース」

 金髪碧眼の優男が銃を構える。


 見れば手の生えたカラス姿の異形たちがこちらへと飛んできていた。

「くっ。杭は破壊しました。逃げることを優先しましょう」

 巴は懐からお札を取り出し、駆け出そうとしていた。


「いや、待て。すぐに終わる重要な話だ」

「ナンデスカー!」

 異形の数は3,4……そこまで多くないな。

「話が終わるまで防いでもらってていいか?」

 俺は金髪碧眼の優男にお願いする。

「ナンデデスカー!」

 金髪碧眼の優男は悲痛な声で叫びながら了承してくれたようだ。


「巴、杭は竜脈からエネルギーを吸い上げて、あの隕石に送っていると言っていたよな?」

「今は、そんなことを言って……」

「大事なことだ。隕石にバリアが張られていて、そのエネルギーを送っているのが杭ってことだよな?」

 俺の言葉に巴は静かに頷く。

「なら、何故、そのエネルギーが杭にたまっているんだ? おかしくないか?」

「それは……」

 周囲には金髪碧眼の優男が頑張っているであろう銃声が響いている。

「本当に杭からエネルギーが送られているのか?」

 俺の言葉に巴は困ったように黙り込む。


「お二人サン、ハリー、ハリー、限界デース」

 金髪碧眼の優男が叫んでいる。だから、重要な話なんだって。


「確かに、それは……。でも、いえ。それは……分かりません」

 巴は答えが見つからず、泣き出しそうな顔になっている。

「いや、巴を責めているんじゃない。もし、これが何か勘違い、思い違いをしているなら、大変なことになりそうな気がして」

「確かに、言われてみれば……おかしいです」

「この作戦を決めたのは?」

「それは作戦本部です。無形隊長なら、何か詳しいことが……」

「なるほど。分かった。ここを切り抜けたら、俺が無形に確認する」

「ハリー、ハリー、困ってマース」

 ああ、もう、うるさいなぁ。


「話は終わった。逃げるぞ!」

 俺は真紅妃を握り駆け出す。

「ナンデ、仕切ってマスカー!」

 俺の後に続き、二人もかけ出す。そして、駆けながら巴が俺の横へやってくる。


「足はもう大丈夫なんですか?」

「ああ、不思議に、な。もう痛くない。治った」

「そんな、すぐに治るわけがないじゃないですか! まさか、私に……」

 あー、はいはい、なんだか、面倒そうなことを言いそうな雰囲気だ。

「急ぐぞ」

「誤魔化さないでください!」


 異形のカラスたちが追いかけてくる中、走り続け、元の道まで戻る。

「あ、来た!」

「うむ。それがしの言ったとおりであろう?」

 そこにはゆらと、修験者の格好のおっさん、迷彩服の男が車と共に待っていた。


「すぐに出します」

 迷彩服の男が車に乗る。

「田所さん、お願いします」

 ゆらとたちも乗り込む。


 車が俺たちの方へ、目の前で止まる。

「早く、乗ってください」

「助かる」

「はい」

「助かったデース」

 俺たちは急ぎ、車に乗り込む。


「杭は……」

「杭なら壊した! だから、逃げるぞ!」

 ゆらとがしゃべり始めるよりも早く答える。


 やれやれ、これで二本目の杭も壊したな。後、二本か。

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