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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
11 深淵攻略
900/999

11-23 はいはい、そうだよな?

―1―


 真紅妃に貫かれた巨大なムカデが、木に体を絡みつかせる力をなくしたのか、ペリペリと瘡蓋を剥がすように、剥がれ、落ちてくる。巨大なムカデがドサーってな。結構な重量だよなぁ。こんなのが現実にいるってんだから、怖い話だぜ。


「何を考えているんですか!」

 俺の横に居る巴は目を三角にして怒っていた。何を怒っているのかな? 勝ったからオッケー、オッケーですよ。

 巴が俺の手を振りほどく。おっとっとっと。俺は足を負傷しているんだぜ。支えがないと転けちゃうってば。

「杭を壊す為の武器を!」

 あー、そっちか。飛んでちゃったもんな。でもまぁ、うん。真紅妃なら大丈夫さ。


「まぁ、まぁ、真紅妃なら、すぐ近くに着地しているはずさ」

 巴は俺の言葉が信じられないのか口を尖らせたままだ。


 俺が歩き始めると、すぐに巴が動いた。

「どうぞ」

 肩を貸してくれる。すまないねぇ。

「わりぃ」

 俺が言うと、巴は照れたように横を向いていた。何だろう、もっと無表情というか、不機嫌そうな顔ばかりだったような気がするのに表情が豊かになったよな。打ち解けてきてるんだろうか。


 そのまま木々の間を歩く。落ち葉はあるし、杖代わりの真紅妃はないし、歩きにくいなぁ。でも、足の痛みは引いてきたかな?


 そして、真紅妃はすぐに見つかった。俺を待っていたかのように地面へ突き刺さっている。さあ、引き抜くか。

 俺が近寄ると、地面に刺さっている真紅妃が震えた。ん?


 ん?


 まさか!


 俺は慌てて振り返る。


 俺の背後では、地面に落ち、大穴を空け、動きを止めていたはずの巨大ムカデが上体を持ち上げているところだった。まだ生きているのかよッ!


 巨大なムカデが口に紫の液体をためる。ヤバいッ!


 そこで空気の弾ける音が聞こえた。


 俺たちの目の前の巨大なムカデが口から液体を吐き出そうとしたまま、動きを止め、崩れ落ちた。まさか、銃声?


 俺が振り返ると、そこには拳銃を構えた金髪碧眼の優男がいた。

「油断大敵デース」

 って、何で片言なんだよッ! いやいや、そうじゃない、誰だ?


「誰ですか?」

 巴の言葉に金髪碧眼の優男は、髪をかき上げ、さわやかな笑みを返し、真紅妃に寄りかかろうとして、そのまま転けていた。

「ハイー? 今、コレ、動きマシター」

 だから、何で、片言なんだよ!


「誰だ?」

 俺は真紅妃へと近づき、そのまま引き抜く。真紅妃が軽く震える。何だろう、矢の代わりになったのは今回限りだからねとでも言っているのだろうか。いやいや、今はそれよりもだ。目の前の、この金髪碧眼の男だよ!


「仲間デース。キーテ、マセンカ?」

 起き上がった金髪碧眼の優男が汚れをはたき落としている。イケメンか、イケメンだよな? でも、片言だとお間抜けな感じだよなぁ。


 巴が慌てて俺から離れる。いや、そんな急に離れると、おっととっと。俺は真紅妃に寄りかかる。酷いなぁ。

「た、確か、無形隊長が言っていた海外の……」

「オー、プリティガール」

 目の前の金髪碧眼の優男は、俺を無視し、巴の前に跪く。そして、その手を取り、口づけをしていた。な、な、な、な、何だ、コイツ。絵に描いたようなナンパ野郎じゃないかッ!


「セッシャ、リチャード・ホームズとモウス」

 金髪碧眼の優男が片目を閉じ、にこりと笑う。だから、何でおかしな言葉なんだよッ!


「わ、私は水無月巴です」

 巴は困ったように、照れたように自己紹介をしていた。はいはい、イケメンだもんな。俺が出会った最初の頃と態度が全然違うよなぁ。


 巴は照れたような様子で固まっている。


 はぁ。


 まぁ、ナンパ野郎に俺の自己紹介は必要ないか。


「杭」

 俺が一言、呟くと、固まっていた巴が慌てたように動き出した。

「そうです、私たちは杭を」

「案内は任せてクダサーイ」

 だから、何で片言なんだよッ!


 と、その前に、だ。


 俺は足の状態を確認する。とんとんとん、とな。大分、痛みが引いたか。ゆっくりなら歩けそうだな。

 俺は巨大なムカデの方へぴょんぴょんと歩く。真紅妃、分かるよな?


 真紅妃を巨大なムカデの腹部へと突き刺す。食らえ、真紅妃。体内にあったであろう結晶を真紅妃が食らう。杭を壊す為には必要だからな。出てくるだろうな、とは予想していたが、思っていたとおり、現地で補給ができて良かったよ。


 俺は待ってくれていた巴たちの方へと戻る。巴が肩を貸してくれようとするが、俺はそれを止める。もう、普通に歩けそうだからな。


 三人で森の中を歩く。

「オナジトコ、回って、ヤバい思いマシタ。急に霧が晴れたヨーニ」

 うーん、わざとらしい片言だなぁ。

「目の前にプリティガールが」

 ホント、よく喋るなぁ。

「これ祝福された聖銃デース。フィーンド、ハントします」

 祝福って、教会関係者とかなのか?


「コッチデース」

 そして、すぐに森が開け、そこには巨大な杭が刺さっていた。道路に戻るよりも先に杭へと到着してしまったな。ゆらとたちの姿が見えないけどさ、大丈夫だろうか。


 まぁ、何にせよ。


 化け物たちの姿も見えないし、今の内に杭を壊しておきますかッ!

2017年10月10日誤字修正(誤字報告ありがとうございました)

巨大なトカゲ → 巨大なムカデ

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