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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
11 深淵攻略
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11-19 次の杭へ出発進行だぜ!

―1―


 一週間が経ち、次の杭へと出発することになる。何というか、長かったような、早かったような、そんな一週間だな。基地の復興や、防衛、異形の残党狩り、周辺地域の治安維持――やることは多かったはずだ。でもさ、俺ってば、お客様扱いというか、次の為に休めって感じで、それらに参加しなかったからなぁ。

 やったことと言えば、北条ゆらと少年と槍を振り回していたくらいだ。


「どうぞ、乗ってください!」

 前回と同じ迷彩服の男性が乗り物を回してくる。ジープ、ジープだなぁ。

「今回は装甲車じゃないんだな」

 オープンカーかぁ。危ないよな? 狙撃とかされたら、どうするんだよ!

「自分もきゅーちゃんが良かったんですが、距離とコスト的な問題で……」

 迷彩服の男性は何故か凄く落ち込んでいた。コストってなぁ。装甲車って運用コストが高いのか? って、高いとしても、国がやばいって時に、コストを考えるのもなぁ。それに運転手が迷彩服の男性、一人ってのも。前回は女性もいたじゃん。俺はどっちかって言うと話しやすかった分、女性の方が嬉しかったよ……。


「何、センパイ、心配か。今回は、守りに長けたそれがしたちがいるからな!」

 作務衣から修験者のような格好に着替えた大男が大きく笑っている。その横では不機嫌そうに横を向いている巫女服の少女もいた。って、誰がセンパイだ、誰が。しかもカタカナ英語みたいな発音しやがって!

「早く乗り込んでください。今回は現地合流の補充隊員の方も待っています」

 巫女服の少女が横を向いたままため息を吐いている。えーっと、その現地合流の人ってのが、確か負傷した瓜生の代わりだったか?


「そうそう、確か海外で活躍している人だったよね」

 そう言うが早いか、ゆらとがタブレットをいじったまま車に乗り込む。

「おうおう、それがしたちも急いで乗り込まねばな!」

 修験者の格好した大男も乗り込む。このおっさん、一人で二人分くらいのスペースを使うなぁ。6人乗りなのに、凄く狭く感じるぜ。


「さあ、出発しますよ」

 ジープが動き出す。


 今回の作戦は、このジープで北上し、2番目の杭を破壊。そのまま海上ルートから北上中の艦、アマテラスと合流。回収してもらって、次の杭へって感じだよな。


 作戦に参加しているメンバーは、


 もちろん、俺と、

 不服そうな顔をしているが、俺の弟子をやっている、ゆらと、

 修験者のような格好に着替えた大男、大空坊円緋、

 いつも同じ格好で着替えがないのか、巫女服の少女、水無月巴、


 それに運転手をしてくれている迷彩服の男性、


 以上の5人だな。後は現地合流の人がいるから全部で6人。他のメンバー、隊長の無形とサングラスの安藤優、復帰した雷月英、まだ会ったことがない来栖二夜子、それに議員の妖しいおっさんは、本郷大和艦長が動かすアマテラスで北上中だ。


 二本目の杭は俺たちだけで大丈夫ってことだな。


「どんどん、飛ばしますよー!」

 迷彩服の男性は楽しそうに運転する。そりゃあ、対向車がなく、歩いている人も居ない、渋滞を考えなくても良い、スピードが出し放題な状況だからなぁ。そんな状況で走れるのは楽しいだろうさ。


 車は峠を越え、さらに進む。


「センパイ、ご飯にしようぞ」

 修験者の格好をした大男が、俺の目の前に缶詰を突き出してくる。だから、誰がセンパイだ、誰が。たく、安藤優が俺のことを先輩とか呼ぶから、このおっさんまで面白がって呼び出すし、信じられないぜ。

 俺は缶詰を受け取り、蓋を開ける。五目ご飯か。車に揺られながら、外の風景を楽しんで食事、か。なんだか小旅行みたいだな。


 もしゃもしゃ。


「あー、ずるいですよ」

 チョコレートバーを囓りながら運転していた迷彩服の男が、こちらへと振り返る。

「前、前、駄目です! 路上に取り残された車もあるんだから!」

 同じく缶詰を食べていたゆらとが慌てて注意する。うん、この速度でぶつかったら、杭に到着する前に全滅だな。


「俺が食べさせようか?」

 俺たちだけが食べて、運転している人はカロリーの塊のお菓子だけって可哀想だもんな。


「いや、自分は出来れば女性の方に食べさせて欲しいです」

 しかし、迷彩服の男はそんなことを言っていた。


 皆が巫女服の少女の方を見る。ゆったりとした動作で缶詰を食べていた巫女服の少女が、突然、注目を浴びたことで、驚き慌てていた。

「わ、私?」

 この場で女性って言うとなぁ。


「あ、水無月さんだったら、いいです」

 しかし、それよりも早く迷彩服の男性は断りを入れていた。

「いいって、どちらの……」

「あ、はい。自分は大丈夫です」

 迷彩服の男は小さな声で後が怖いので、なんて言っていた。確かに、冷たい感じがする少女だもんな。


 巫女服の少女は大きく目を見開き、ふてくされたかのように口を尖らせ横を向く。

「ははっはっはは。くーるびゅーてぃー、くーるびゅーてぃー」

 修験者の格好をしたおっさんは、よく分からないフォローを入れている。


 もしゃもしゃ。


「ところで、ちょっと疑問なんだけど」

 俺は食事を続けながら迷彩服の男に話しかける。

「はい、何でしょう?」

「ガソリンが残っていたのか?」

 そうなんだよな。ガソリンがなくなっていたはずなのに、車が動くって不思議でしょうがない。隠し持っていたんだろうか。


「実は、きゅーちゃんもそうなんですが、この車、ガソリン車じゃないんです」

 へ?

「それが、あまり公然と使えない、コスト問題の理由の一つですね」

 そうなのか。

「ちなみに何を使っているの?」

 俺の問いに迷彩服の男は首を横に振って苦笑いするだけだった。うーむ、なんだかヤバそうな、知ってしまうと危ない香りがするなぁ。

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