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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
11 深淵攻略
893/999

11-16 戦いは進みながら停滞し

―1―


「おいおい、勝てるつもりか? 勝てるつもりなのかよっ! いいぜ、いいぜ、餌どもは動かさねえよ。俺たちだけで相手してやるぜ」

 ハ虫類顔が顔に手を置き、体をくの字に曲げ笑い転げている。まぁ、このハ虫類顔は旧式の軍服の男に任せるか。自分で手を下したとはいえ、部下の仇だろうしな。ま、俺は、この目の前の鬼だな。


 破れ、ボロボロになった服を腰蓑のように体に巻き付けただけの鬼が、フガフガと息を荒くしながら殴りかかってくる。こいつ、頭は悪そうだな。しかし、その拳の威力は高そうだ。俺なんか、殴られたら軽くミンチになりそうだなぁ。怖い、怖い。


 サングラスの安藤優も二本の刃を持ち、鬼の一体と戦っている。

 北条ゆらと少年も短槍で牽制しながら、鬼の一体と戦っている。


 俺は、風を切り裂きうねりを上げて飛んでくる拳を避けながら考える。さあ、どうしよう。


 俺が考えている間も戦いは続く。


 サングラスの安藤優が二本の刃を回転させるように振るうが、それが全て鬼の皮膚に弾かれている。

「ちっ、堅すぎだろ。ホント、背水の陣だぜ」

 刃を弾かれ、相手の振り回す拳を回避し、刃を叩きつけ、弾かれ――安藤優の戦いはキツそうだ。


「これならっ!」

 北条ゆらと少年が鬼の拳を躱し、短槍とともに鬼の懐へと突っ込む。短槍が鬼の腹に突き刺さり、そのまま突き抜ける。


 やったか?


「な、抜けない!」

 北条ゆらと少年が、必死に短槍を引っ張るが、鬼の体を突き抜けたままピクリとも動かない。


 サングラスの安藤優に鬼の拳が迫る。躱しきれないと思ったのか、二本の刃を交差させ受ける。しかし、そのまま吹き飛ばされる。

「ちぃ、きついぜ……」

 サングラスの安藤優が、滑るように着地する。


 おいおい、大丈夫かよ。どれくらいか、見極めている場合じゃないのか?


「あ!」

 短槍を引き抜こうと頑張っている北条ゆらと少年を叩き潰すように鬼が拳を振り上げる。


「たく、背水の陣だぜ」

 吹き飛ばされていたサングラスの安藤優が革ジャンのポケットから小瓶を取り出す。そして、その小瓶の蓋を取り、中の液体を二本の刃に振りかけた。

 そして、そのまま駆ける。何だ? 何の液体だ?


 北条ゆらと少年を目掛けて鬼の拳が迫る。

「なーんて、ね」

 北条ゆらと少年が短槍から手を離し、大きく後ろへと飛ぶ。そして、タブレットを取り出した。


「遊びは終わりだぜ」

 安藤優が持つ、何かの液体でぬらぬらと輝く二本の刃が、鬼の腕を切る。今度は弾かれず、鬼の腕が、斬り飛び、宙を舞う。くるくると切り落とされた腕が黒い液体をまき散らしながら飛んでいく。液体の効果か? ホント、何の液体だ? 後で聞いておこう。


 北条ゆらと少年がタブレットを操作する。そこには、いつもの顔文字が浮かんでいた。


『=<』


「アルファの目の一つを潰して得意になってるみたいだけど、あれはあくまで視界の悪い森の中用だからね。今みたいに開けた場所であれば!」

 北条ゆらと少年が得意気に笑う。


「おい、そこのガキ、何を言ってやがる!?」

 旧式の軍服の男と戦っていたハ虫類顔が、北条ゆらと少年の方を見、そして、空を見る。つられるように俺も空を見る。


 空からは何かの光線が飛んでいた。


 へ?


 光が降り注ぐ。


 光が鬼を穿つ。ハ虫類顔を穿つ。地面を穿つ。砂埃を上げ、光が舞う。

「おいおい、ゆらと! 間違えて俺を撃つなよ?」

「アルファが間違えると思う? それとも間違えて欲しいの?」

 北条ゆらと少年はタブレットを操作し続ける。これ、周辺にうじゃうじゃといる異形の人々も攻撃した方がいいんじゃないか? あー、でも、人を殺すのは、なぎ払うのは、ちょっと抵抗があるよなぁ。


 砂埃が消えた後には、ほぼ無傷のハ虫類顔と地面に倒れた三体の鬼がいた。無傷かよ。天災級って言われるのは伊達じゃないってか。

「寝てるんじゃねえよ!」

 ハ虫類顔が倒れた鬼を蹴っ飛ばす。

「餌でも食って、回復しろ」

 鬼たちが這うように動き、周囲の異形を掴む。そのまま、囓る、食らう。


「させるかよっ!」

 サングラスの安藤優が鬼へと駆ける。


「雑魚がっ!」

 しかし、それを、ハ虫類顔が口から黒い液体の塊を飛ばし邪魔をする。安藤優が慌てて急停止し、手に持った刃で黒い液体を防ぐ。その瞬間、黒い液体に触れた刃が腐食し、腐れ落ちた。


 ハ虫類顔が次々と黒い液体を飛ばす。サングラスの安藤優は、それを受け止め防ぐことを諦め、回避しようとする。しかし、黒い液体の数が多い。


 俺は――


 俺は、安藤優の前に立ち、真紅妃で黒い液体を弾き飛ばす。真紅妃を回し、防ぎ、弾き飛ばす。

「汚いな。よだれか?」

「防いだ、だと? 何者だ、お前!」

 ハ虫類顔が初めて俺の存在を意識したのか、驚きの顔でこちらを見る。


 そろそろ、俺が動いてもいいよな!


 仲間のことがあるからって、戦いを譲る必要もないよな?


 もう、充分だッ!

突然ですが、諸事情により2017年9月18日の更新はお休みになります。

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