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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
11 深淵攻略
883/999

11-6  これは、本当に現実か?

―1―


「それでは、そろそろ部下たちを入れてもよろしいか?」

「あら、ごめんなさい」

 白い制服の男の言葉に頭の薄くなっているおっさんがオホホと笑いながら答えている。


 それが合図だったかのように、すぐにゾロゾロと人が現れ、用意されている座席へと座っていく。ほぇー、結構、人が居たんだな。

「不思議かね。いくら、アルファが艦の制御を殆ど行っているとはいえ、それでも人の手は必要なのだよ」

 彼らが座席に着くと、その足元からキーボードのようなもの、操縦桿? 計器などがスライドして現れる。おー、凄い、近未来!


 そして、正面の壁がパラパラとめくられるように動き、外の景色が現れる。ガラスの壁? いや、ガラスではないのか?


 って、外、これ!?

「そうよ、海ね」

 海だ。艦って時点で予想していたけど、海だ。海が、風が、ながれていく。

「何処に向かっているんだ?」

 俺は誰ともなく問いかけてみるが、白い制服の男や第七魔導隊? の連中には無視される。それを見た頭の薄くなっているおっさんは一つため息を吐き、俺のそばに立つ。

「今、向かっているところは私たちの基地ね。そこに仲間を迎えに行っているの」

 えーっと、兵士さんが言っていた『来栖』と『雷』って人か。てっきり、この船に乗っているのかと思ったけど、その人たちが待っている場所に移動するってことか。


 ん?


「何故、海中に潜っていたんだ?」

 そうだよな? 何でだ?


「この艦はね、海中を移動した方が早いの。それと、もう一つは……」

「もう一つの理由が現れたようですな。アルファ、拡大を」

 おっさんの言葉を白い制服の男が引き継ぐ。


『=)』


 突如、透明なスクリーンが現れ、上空を映し出す。そこにはコンクリートで作られたかのような羽の生えた異形が空を飛び、浮かんでいた。

「何だ、あれ?」

 ガーゴイルって言葉が浮かぶ。しかも、一匹や二匹じゃないぞ。

「海中に隠れていた理由は敵に捕捉されない為、と言っても基地に近寄れば同じね」

 おっさんは困ったわぁという感じで腕を組んでいる。いや、だから、アレは何だ?


「アレが、何か疑問かね」

 白い制服の男は映し出された映像を見ながら、俺に話しかけてくる。

「もちろんだ」

「アレが何かは自分たちも分からない。向こうの国のガーゴイル像が動いているように見えるが、それが本物なのか、それとも機械仕掛けなのか、それは我々にも分からない」

 この人、堂々と分からないって言い切ったぞ。

「分からない割には驚いていないようだが?」

 俺は凄い驚いたぞ。

「我々はああいった存在を相手することに慣れているからね」

 白い制服の男が薄く笑う。


 ガーゴイルたちが手に持った何かを投げ放つ。投げ放たれた、それは、海面で爆発し、水柱を立てる。な、爆弾!?


「この分だと、基地の方も攻撃されてそうねぇ」

 おっさんは困ったようにため息を吐いていた。いやいやいや。

「何か迎撃しなくても大丈夫なのか? そうか、何か耐衝撃装甲みたいなのがあるんだな?」

 俺の言葉におっさんは首を振る。

「さすがに爆撃されて無傷って訳にはいかないわ。それに、この艦、対空装備がないのよねぇ」


『:{』


 いやいやいや、俺を勝手に拉致って、それはないんじゃないか? ま、マジですか?


「ここは俺たちの隊に任せてもらう」

 そこへ、旧式の軍服の男が声をかける。そういえば、この人たちも居たな。って、人がなんとか出来るレベルなのか、アレ。


「円緋頼む」

「おうさ、それがしに任されよ」

 旧式の軍服の男の言葉に作務衣の大男が両拳を叩き合わせ、ニコリと笑う。そして、そのままノシノシと歩き艦橋を出て行く。


「大丈夫、なのか?」

 俺が聞くと、隣のおっさんは腕を組んだまま大きくため息を吐く。

「人って、人の可能性って、凄いわよね。時々、超常の力を持った奇跡の人が生まれるんですもの……」

 へ?


『:D』


 スクリーンの映像が変わり、甲板が映し出される。そこには、無駄に、豪快に笑っている作務衣の大男がいた。その手には巨大な銛が握られている。ま、ま、ま、まさか。


 そのまさかだった。


 大男は勢いよく巨大な銛を投げ放つ。恐ろしい勢いで飛んでいった銛がガーゴイルを貫く。その銛には紐がつながれていた。作務衣の大男は大きく笑いながら、その紐を振り回す。ガーゴイルとガーゴイルがぶつかり合い、吹き飛ばし、蹴散らしていく。無茶苦茶だ。何なんだ、それ。人が普通に出来るレベルを超えている気がする。


「アレは人なのか? 何かサイボーグとか強化人間とか」

 映像ではガーゴイルを蹴散らした作務衣の大男が両手を合わせ、念仏を唱えていた。

「はぁ、彼曰く、御仏の加護らしいわ」

 おっさんは肩をすくめている。そ、そういうレベルか?


「第七魔導隊はね、そういった異質の力を持った集まりなのよ」

 全員が、そう、なのか?


「おいおい、俺を円緋のおっさんと同じくくりにしないで欲しいぜ」

「僕も、今回は同意見です」

 うさんくさいサングラスの男と槍を持っていた少年も肩をすくめていた。巫女服のクールな少女はため息だけ吐いている。


「俺の現実が崩れそうだ」

「何言っているの、私からしたら、あなたも同じような力を持っているようにしか見えないわ」

 おっさんが俺を見てウィンクをしていた。

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