11-4 大抵強キャラ扱いだよな
―1―
協力するか、協力しないか。
手助けしなければ、この国は滅びるかもしれない。滅びるまでは行かないくても、致命的な打撃を受けるだろう――現状でも無茶苦茶な状態なんだからな。
いろいろとうさんくさいことも多いし、何故、俺が、って思わないでもないし、うーむ。
ある程度、腹は決まっているんだけどさ、俺もお人好しだしさぁ。
でもさ、上から目線なのが、凄い気になるんだよな。
「ほら、やはり、協力する気はないみたいじゃないですか」
槍を持っていた少年は、そんなことを呟いている。ホント、このガキは……。
でも、何だろうな、この小生意気なクソガキを見ていると、なんだか、懐かしくなるんだよなぁ。前にも、こんなヤツが俺に絡んできていたような。こういうヤツもさ、仲良くなってみれば悪い奴じゃなかったりさー。
「俺に協力を求めている割には、あまり協力的じゃないように思うんだが、気のせいだろうか?」
「アルファ、明かりを」
白い制服の男の言葉にあわせて、部屋に明かりが灯る。やはり、電気が来ているとしか思えないな。現地の俺らは苦労していたのに、国のお偉いさんたちは何か手段を持っていたんだろうな。
「そうだね。これも話そう。その方がフェアだからね」
白い制服の男は北条ゆらと少年と巫女服の少女を見て、大きくため息を吐く。
「君が協力してくれるのが一番だ、しかし、我々は、君の槍以外でも杭を壊す方法を持っているのだよ」
は?
「なら、何故、その方法を使わない?」
「聡明な君なら分かると思うが、その方法は非常に困難で犠牲を伴うものだ。出来れば、その手段を使いたくない」
言っている場合か? つまり、俺に頼んだ方が楽だから、民間人の俺を駆り出すってか。
……。
でも、犠牲かぁ。犠牲って言葉が出てくるってことは、そうだよなぁ。
「君の存在は我々にとってもイレギュラーだ。存在しないはずの、全てを解決し得る特異点が現れたのだ。協力をお願いしたい」
白い制服の男が頭を下げる。
真紅妃――か。本来、存在しなかった、俺の槍だ。
どうする、どうする?
と、その時だった。
俺の背後、この部屋の扉が大きく開かれた。
「ちょっと、ちょっと!」
扉から一人のおっさんが現れた。どこかで見たことがあるような? そうだ、テレビだよ、テレビで見たことがあるよ。ピシッとしたスーツ姿に薄くなった頭、そうだよ。国会とかで、テレビ中継で見たことがあるよ!
「んもぅ、思った通り、こんなことになってる!」
おっさんはクネクネと歩きながら、並んでいた面々に指を突きつけている。そして、こちらに振り返り、にこりと笑った。おっさんなのに赤ちゃんみたいな愛嬌のある笑いだなぁ。
おっさんが膝を折り、両手をつける。よつんばいん!?
「まずは土下座、土下座よ!」
おっさんが頭を地面につける。いや、あの、突然、何だ?
「本当にごめんなさい!」
そして、おっさんは俺に対して謝ってきた。
……。
……。
おっさんは頭を下げたままだ。
えーっと、これ、俺、どうしたらいいんだ。
しばらく待っていると、おっさんがぷはぁとでも言いたそうな表情で顔を上げる。
「んもぅ、顔を上げなさいとか言ってほしかったわ!」
えーっと、俺が許可を出すべきだったのか?
俺がおろおろしていると、おっさんはポツリポツリとしゃべり始めた。
「事情はある程度聞いているわ。あなたがたを置き去りにし、保護できなかったこと。こちらの情報のミスで、あなたと交戦してしまったこと……本当にごめんなさい」
いや、その、ああ。
「私の頭一つで許して、なんて言うのは虫のいい話だと思うわ。でも、私が彼らの分も謝るから、下の者のミスは、上の者の責任、だから、私が!」
えーっと。
「あなたの気持ちはわかるつもりよ。それでも、それを飲み込んで、私たちに協力してもらえないかしら?」
おっさんがもう一度、頭を下げる。
「頭を上げてください」
うーん、逆にここまで下手に出られると、申し訳なくなってしまうなぁ。何だか、俺がわがままを言っている気分になってくる。
おっさんは顔を上げ、俺の次の言葉を待っている。
「出来るだけ、協力する方向で考えます。ただ、もう少し詳しく話を聞かせてもらってからです」
「ありがとう、ありがとう!」
おっさんの顔に笑顔が浮かび、ゆっくりと立ち上がり、俺の手を取り、何度も、何度もお礼を言う。何だかなぁ。
まぁ、でも土下座までされたらなぁ。
と、そこへ、またも乱入者が現れる。その兵士と思われる男は慌てたようにおっさんの元へ走ってくる。
「どうしたの! 今は……」
「申し訳ありません。来栖と雷の二名が戻りました」
その言葉を聞いたおっさんと並んでいた面々に衝撃が走る。まさに衝撃としか、言いようのない表情だ。
「戻ってきたのは、その二人だけ、なの、ね?」
おっさんの言葉に兵士は頷く。
「二人は無事か? 話は出来そう?」
「は、はい!」
おっさんは改めてこちらを見る。
「ごめんなさい、少し急ぎの用事が出来たの、ここで待って……」
そこでおっさんは口を閉じる。そして腕を組み合わせ何やら考え込む。
「そうね、もし良ければ、あなたも一緒に彼女たちの話を聞いてほしいの、どう?」
どう? って、彼女たちって誰だ?
……。
行けば分かるか。
「分かりました。自分も行きます」