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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
11 深淵攻略
881/999

11-4  大抵強キャラ扱いだよな

―1―


 協力するか、協力しないか。


 手助けしなければ、この国は滅びるかもしれない。滅びるまでは行かないくても、致命的な打撃を受けるだろう――現状でも無茶苦茶な状態なんだからな。


 いろいろとうさんくさいことも多いし、何故、俺が、って思わないでもないし、うーむ。


 ある程度、腹は決まっているんだけどさ、俺もお人好しだしさぁ。


 でもさ、上から目線なのが、凄い気になるんだよな。


「ほら、やはり、協力する気はないみたいじゃないですか」

 槍を持っていた少年は、そんなことを呟いている。ホント、このガキは……。


 でも、何だろうな、この小生意気なクソガキを見ていると、なんだか、懐かしくなるんだよなぁ。前にも、こんなヤツが俺に絡んできていたような。こういうヤツもさ、仲良くなってみれば悪い奴じゃなかったりさー。


「俺に協力を求めている割には、あまり協力的じゃないように思うんだが、気のせいだろうか?」

「アルファ、明かりを」

 白い制服の男の言葉にあわせて、部屋に明かりが灯る。やはり、電気が来ているとしか思えないな。現地の俺らは苦労していたのに、国のお偉いさんたちは何か手段を持っていたんだろうな。


「そうだね。これも話そう。その方がフェアだからね」

 白い制服の男は北条ゆらと少年と巫女服の少女を見て、大きくため息を吐く。

「君が協力してくれるのが一番だ、しかし、我々は、君の槍以外でも杭を壊す方法を持っているのだよ」

 は?


「なら、何故、その方法を使わない?」

「聡明な君なら分かると思うが、その方法は非常に困難で犠牲を伴うものだ。出来れば、その手段を使いたくない」

 言っている場合か? つまり、俺に頼んだ方が楽だから、民間人の俺を駆り出すってか。


 ……。


 でも、犠牲かぁ。犠牲って言葉が出てくるってことは、そうだよなぁ。


「君の存在は我々にとってもイレギュラーだ。存在しないはずの、全てを解決し得る特異点が現れたのだ。協力をお願いしたい」

 白い制服の男が頭を下げる。


 真紅妃――か。本来、存在しなかった、俺の槍だ。


 どうする、どうする?


 と、その時だった。


 俺の背後、この部屋の扉が大きく開かれた。


「ちょっと、ちょっと!」

 扉から一人のおっさんが現れた。どこかで見たことがあるような? そうだ、テレビだよ、テレビで見たことがあるよ。ピシッとしたスーツ姿に薄くなった頭、そうだよ。国会とかで、テレビ中継で見たことがあるよ!


「んもぅ、思った通り、こんなことになってる!」

 おっさんはクネクネと歩きながら、並んでいた面々に指を突きつけている。そして、こちらに振り返り、にこりと笑った。おっさんなのに赤ちゃんみたいな愛嬌のある笑いだなぁ。


 おっさんが膝を折り、両手をつける。よつんばいん!?


「まずは土下座、土下座よ!」

 おっさんが頭を地面につける。いや、あの、突然、何だ?


「本当にごめんなさい!」

 そして、おっさんは俺に対して謝ってきた。


 ……。


 ……。


 おっさんは頭を下げたままだ。


 えーっと、これ、俺、どうしたらいいんだ。


 しばらく待っていると、おっさんがぷはぁとでも言いたそうな表情で顔を上げる。

「んもぅ、顔を上げなさいとか言ってほしかったわ!」

 えーっと、俺が許可を出すべきだったのか?


 俺がおろおろしていると、おっさんはポツリポツリとしゃべり始めた。

「事情はある程度聞いているわ。あなたがたを置き去りにし、保護できなかったこと。こちらの情報のミスで、あなたと交戦してしまったこと……本当にごめんなさい」

 いや、その、ああ。

「私の頭一つで許して、なんて言うのは虫のいい話だと思うわ。でも、私が彼らの分も謝るから、下の者のミスは、上の者の責任、だから、私が!」

 えーっと。

「あなたの気持ちはわかるつもりよ。それでも、それを飲み込んで、私たちに協力してもらえないかしら?」

 おっさんがもう一度、頭を下げる。


「頭を上げてください」

 うーん、逆にここまで下手に出られると、申し訳なくなってしまうなぁ。何だか、俺がわがままを言っている気分になってくる。


 おっさんは顔を上げ、俺の次の言葉を待っている。


「出来るだけ、協力する方向で考えます。ただ、もう少し詳しく話を聞かせてもらってからです」

「ありがとう、ありがとう!」

 おっさんの顔に笑顔が浮かび、ゆっくりと立ち上がり、俺の手を取り、何度も、何度もお礼を言う。何だかなぁ。


 まぁ、でも土下座までされたらなぁ。


 と、そこへ、またも乱入者が現れる。その兵士と思われる男は慌てたようにおっさんの元へ走ってくる。

「どうしたの! 今は……」

「申し訳ありません。来栖と雷の二名が戻りました」

 その言葉を聞いたおっさんと並んでいた面々に衝撃が走る。まさに衝撃としか、言いようのない表情だ。


「戻ってきたのは、その二人だけ、なの、ね?」

 おっさんの言葉に兵士は頷く。


「二人は無事か? 話は出来そう?」

「は、はい!」

 おっさんは改めてこちらを見る。


「ごめんなさい、少し急ぎの用事が出来たの、ここで待って……」

 そこでおっさんは口を閉じる。そして腕を組み合わせ何やら考え込む。

「そうね、もし良ければ、あなたも一緒に彼女たちの話を聞いてほしいの、どう?」

 どう? って、彼女たちって誰だ?


 ……。


 行けば分かるか。

「分かりました。自分も行きます」

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