11-2 出会うべくして出会って
―1―
「そのタンタンが何をやったんだ?」
白い制服の男は俺の質問を無視して狭い通路を歩いて行く。
「こっちだ」
会話タイムは終わりってことかよ。
しばらく歩き続け、そして一つの部屋へと案内される。
少し広めの部屋にはホワイトボードやパイプ椅子が無造作に置かれており、ブリーフィングルームと呼ぶのがぴったりきそうな作りだった。作戦会議室か?
そして、その部屋には5人の男女がいた。
「君はすでに知っているだろうが、第七魔導分隊の面々だ」
白い制服の男が大げさに手を広げて紹介する。こいつら、はッ!
「無形い……ああ、いや、無形から自己紹介を頼む」
何を言い淀んだんだ?
旧式の軍服を着込んだ男が一歩、前に出る。
「この隊の隊長を務めている無形だ」
それだけ言うと、言うべきことはすべて終わったとばかりに、そいつは後ろに引っ込んだ。
「隊長は人見知りの照れ屋だからなー。俺は安藤優、よろしく頼むぜ」
革ジャンにサングラスのうさんくさい男が、サングラスを少しだけずらし、ニヤリと笑った。
「私は水無月巴です」
巫女服を着た、ちょっときつめの少女は氷でもまとっているかのようだ。
「僕は北条ゆらと」
そう自己紹介した少年はふてくされたかのように横を向いている。
「それがしは大空坊円緋よ」
作務衣を着た、とてもがたいのよいおっさんがガハハハハと笑っている。作務衣が筋肉で弾けそうだ。俺、それがしとか現実で言う人に初めて会ったよ。にしても坊さんぽい名前なのに作務衣なのか、作務衣かー。まぁ、でも巫女服を着ていてもコスプレにしか見えないから、こっちの方が親近感はわくか。
「彼の隊には、後3人ほど居るんだが、今は、所用で出てもらっている」
全部で8人? 軍隊ぽい感じの割にはメンバーが無茶苦茶だな。まるで愚連隊だ。
「会わせたいってのは、こいつらのことか?」
殺されかけているからね。俺の言葉もきつくなっちゃうよ。
「そうだ!」
そうだと来ましたか。
「君には彼らと協力してほしい」
協力って何を協力するんだよ。こいつら、俺を殺そうとした連中だよな? ほら、そこの巫女服と槍を持っていたガキ、嫌そうな顔しているじゃん。俺も嫌だよ。
「言っていることの意味が分からないのだが?」
わからんよなぁ。
すると、白い制服の男は、俺が予想していた反応と違い、うんうんと頷き始めた。
「そうだろう、そうだろう。順を追って説明しよう。アルファ、モニターを頼む」
アルファ? 誰だ? この部屋に――まだ他に誰か居たのか?
突然、部屋の明かりが落ちた。って、明かり? 明るかったよな? ここって電気が来ているのか?
そして、部屋の中央に映像が映し出される。おー、立体映像? いや、ぽい何かだな。
5枚の映像。空間に浮いているようだけど、一枚絵だな。浮かせて映像を出している分、無駄な技術だよなぁ。
「これは?」
一枚は海? 湾か。それに何かの建築物が映っているようだな。ちょっとボケ気味でよく分からないな。
後の四枚はどれも同じだな。地面に杭が刺さっている映像か。場所は微妙に違う感じだな。
「さて、どこから話したものか……」
白い制服の男が腕を組み、そんなことを言っていた。話すことを決めてなかったのかよ! ここまで案内して、それはないんじゃないか。
「アルファ、一枚目を拡大してくれ」
白い制服の男の言葉を受けてか、何かの建築物が映っている映像が拡大される。
「それは?」
「運命の日――自分たちは運命の日と呼んでいるが、隕石が降ってきたと騒ぎになった日を覚えているかな?」
運命ねぇ。隕石のニュースなら知っているよ。って、そういえば、そのときのニュースに巫女さんが写っていたような……。それって、ここにいる水無月って少女とそっくりだったような……。
「その隕石は湾に落ち、そして、そこからショーキを発生し始めたのだ」
「本郷様、瘴気です」
その水無月が突っ込みを入れていた。
「そうだ、そのショー、ショウキか。それが、瞬く間に周辺地域へと広まった」
隕石から毒が出たってことか?
「ちょっと待て、ちょっと待ってくれ。普通に隕石が落ちたと言っているが、どうにかすることは出来なかったのか? こうミサイルで撃ち落とすとか」
俺の言葉に北条ゆらと少年が「ミサイルって……」とくすり笑っていた。ミサイルの何が悪い。そういうのってミサイルで落とすんじゃないのかよ!
「隕石は突然現れたのだよ――話を戻そう」
突然、現れた?
「そのショウキを浴びた、吸った人間は狂ってしまうようだ」
狂う? あれを狂うと簡単に言ってしまってもいいのか? 鬼に変わるのも狂うのうちなのか?
「それが原因だって言うのか?」
そんなことで、あんな、あんな絶望的な状況が起きたってのか? それだけじゃあ、いろいろと解決出来ないことが多すぎないか?
「その隕石に突如、人工的な建築物が現れた。そこで自分たちは、今回の事件が人為的な出来事だと気づくことが出来た。隕石に気づかなかったのも、レーダーが感知しなかったのも、全て人為的な工作故だったのだよ」
人がやった? 誰かが何かの目的を持って?
まさか、それが、途中の話に出てきたタンタンとかってヤツの仕業ってことかッ!