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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
10 三神殿攻略
863/999

10-54 星獣? 違うね、俺は

―1―


『ついてきな』

 目の前の青い狼が、その言葉通り頭を振って、こちらを促す。

『何処へ連れて行くつもりだ』

 しかし、目の前の青い狼は俺の天啓を無視し、そのままゆっくりとした足取りで神殿の方へと歩いて行く。このまま行くと大きな中央の神殿だな。うーむ。このまま信じて進んでいいものか。いきなり攻撃してくるような奴だからなぁ。


 まぁ、それはそれだ。罠だったとしても、それを食い破れるくらいの実力が無ければ、このフェンリルよりも数段格上であろう女神の打倒なんて出来ないだろうからな。まぁ、行くぜ。


 黒い液体の海の上から、中央の神殿前へと降りる。俺の影から奇襲されるようなことは――ないな。まぁ、すでに姿を現して、俺の目の前にいるんだ。今更、攻撃はしてこないか。


 で、だ。


『中央の大きな神殿に向かうようだが、左右の神殿はどうなっているのだ?』

 俺が天啓を飛ばすと、前を歩いていた青い狼が大きなため息を吐いた。おいおい、両刃の剣を咥えたまま、ため息を吐くなんて、とても器用な事をするな。


『俺とお前は敵同士。そんな敵に情報を聞くのか?』

 あー、そっちで呆れられたのか。また聞きたがりな奴的な感じで怒られるのかと思ったよ。この世界って聞きたがりは嫌われるからなぁ。ホント、情報収集がし辛い世界だよ。


『聞いてみて答えが得られれば幸運だろう? 得られなかったとしても、マイナスにはならないからな。ならば、試してみても損はない』

 俺の天啓を受けた青い狼が両刃の剣を咥えたまま、クックックと楽しそうに笑う。だから、この青い狼、両刃の剣を咥えたままとか、本当に器用だな。


『左手にあるのが月の小神殿、右手にあるのが太陽の小神殿だな』

 小神殿?

『今は閉じられているが、他の神殿へ転送することが出来る』

 な、なんと、そんな便利な物が! それなら皆と合流が出来るんじゃないか? あー、どれか一ヶ所の地下世界(アンダースフィア)の入り口から皆で挑戦して、ここで別れた方が賢かったんじゃないか? ま、まぁ、結果論だけどさ。


『どうやったら、使えるようになるのだ?』

 俺の天啓を受けた青い狼はこちらへと振り返り、大きく目を見開く。

『図々しい奴だな。さすがに聞きすぎだろう』

 む。さすがにこれは教えて貰えないか。

『教えて貰えないのか?』

 目の前の青い狼が頭を振る。いいえ、教えてやるぜって感じか?


『簡単な事だからな。まぁ、いいだろう。神殿を守っている御三方の存在が消えれば開くだろう』

 三人?


 となれば、


『星のスターマイン、太陽のソルアージュ、月のルナティックか』

 俺の天啓に青い狼が頷く。月のルナティックは俺が倒しているから、後、二人か。


 俺たちは会話を続けながらも大きな神殿へと進んでいく。本殿の前には巨大な観音開きの扉が作られていたが、青い狼が近寄ると自然に内側へと開いていった。内開きなんだ。何でなんだろうな。


 扉の中、神殿のエントランスは天井が高く開けた場所になっており、そこから三方へ道が延びていた。道は余り大きくないんだな。これ、人の2倍か、ギリ3倍くらいの巨人なら通れるけどさ、竜とかは通れないよな。余り巨大な相手との戦闘はなさそうか。


 青い狼は迷わず正面の道へと向かっていく。そして、その道の両端には、道を守るように2体の白い虎がいた。白虎だ、白虎だよ。


「テキカ?」

「コロセ」

 二体の白虎が喋る。おー、しゃべったー。


『黙れ。スターマイン様への客人だ。通るぞ』

 青い狼が二体の白虎へと念話を飛ばす。


「ワカッタ」

「トオレ」

 二体の白虎から許可が出る。何だろう、余り賢い感じがしないな。もしかして、この白虎も星獣?


 青い狼とともに白虎たちの横を抜け、正面の通路に入る。

『今のも星獣か?』

 俺の天啓を受けた青い狼は正面を向いたまま頷く。

『星獣だ。あの程度の知能の星獣の方が殆どだ』

 へ? そうなの? でも、俺が出会った最初の星獣、羽猫エミリオの親、フウキョウの里のファー・マウや、今、俺の目の前にいるフェンリルは普通に喋るし、知性を感じるぞ。


 あー、でも俺が八大迷宮『二重螺旋』の攻略途中で出会った白蛇の星獣、クリスは微妙に頭が悪そうだったな。


『フェンリルとは随分と感じが違うな』

『一緒にして欲しくないな。星獣には2種類あるからな。そこらの動物を元にした星獣と俺のような――を元にした星獣』

 ん? 何を元にしたって言った? それに動物? 魔獣を元にしたんじゃないのか?


『何を元にした、と言った?』

 しかし、俺の目の前の青い狼は答えない。うーむ、念話だからか、字幕で表示されないのがなぁ。


 俺たちは神殿の中の通路を黙々と歩いて行く。


『それで、だ。今度はこちらが聞きたい。お前は何なんだ?』

 青い狼から念話が飛んでくる。何なんだって聞かれてもなぁ。お前と同じ星獣? それともジャイアントクロウラーに転生した、俺の意志が乗り移った存在?


『フェンリルと同じ星獣ではないのか?』

 俺はシロネから星獣様って聞いてさ、ずーっと、そう思っていたんだよな。ホント、よく分からないよな。


『最初、俺がお前に会ったとき、俺はお前が知性を得た魔獣だと思った。蟻人族のように、そういった存在が発生することはあるからな』

 そうなのか。

『――を元にした星獣は、自由意志を持ちやすく、女神様やスターマイン様に従わない者も居ると聞いた事がある。ただ、それでも反抗は出来ないはずだ』

 青い狼がこちらへと振り返る。

『お前は何なんだ?』

 何、って聞かれても……。


『女神様に反抗出来る時点で星獣では無いな』

 まぁ、俺が星獣かどうかなんて、どうでもいいことだしなぁ。そう言われていたから、そうなのかな、って思っていたくらいだしさ。違うなら、それはそれでいい。


『俺は世界の敵なんだろう。そして、ただのランだ』

 それでいいじゃないか。

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