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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
2  世界樹攻略
86/999

2-77 湖洞

―1―


 中央の島まで筏を漕いでいく。中央の島までの距離は余りないのですぐに到着出来そうだ。湖面も穏やかです。これ、俺が人だったら泳いで渡れる感じだよなぁ……って、人だったら完全武装の鎧を着込んだ状態になっているだろうし、それで泳ぐのは危ないか。

 オールを使い筏を漕いでいく。湖内に魔獣などはいないようだ。安全、安心、簡単に島へ到着。うーん、コレ、本当はどうやって島に渡るんだろうなぁ。


 島は本当に小さく、大きな穴が開いているだけだった。ここを降りて行く訳ね。


 洞窟の中は薄暗く、俺は自分が灯りを用意していないことに気付き後悔する。あー、ウーラさんと小迷宮に入った時にランタン買っとこって思ったのに、忘れてそのままだった……。今から買いに戻るのもなぁ。くそう、火魔法でも使えたら灯りに出来るのになぁ。そこらの木の枝を燃やして松明代わりにも出来るよな。……水魔法よりも火魔法の方が便利じゃね? い、いや駄目だ、俺は、そんな不遇の氷魔法が好きなんだから。で、でもさ、現実になってみると好き嫌いでは無く、実用性や便利さの方が重要になってくるよな、な? 好き嫌いなんて言ってられないもん。


 あ、そうだ。風槍レッドアイが火属性も持つようになったんだから、これで火をおこして松明とかを作れるんじゃないか? うん、ナイスアイディア。ちょっと、外に戻って枝を燃やしてみよう。


 洞窟の外で都合良く枯れ枝を見つけたので風槍レッドアイで貫いてみる。赤槍から火が巻き起こり枯れ枝を貫く……のだが――燃えない。枝自体は燃えたような、焦げたような、そんな穴は出来るのだが、燃えない。燃えていない。何だコレ。……あくまで火属性の攻撃ってだけで火が起きているわけじゃ無いのか? 燃えるって現象が起きているわけじゃ無いのか? うーん、良くわからない不思議な世界だな。


 はぁ……仕方ない。薄暗いが見えないほどではないし我慢して進むか。


 洞窟に戻り下っていく。少し進むと洞窟内がじめじめとしてきた。天井からつららのようなモノも伸びている。うん、完全に鍾乳洞だな。……あんまり広くないと良いなぁ。




―2―


 鍾乳洞を進んでいると天井にブルーバットと書かれた線が見えた。お、洞窟に入って初めての魔獣だ。というか、ブルーバットって、世界樹の下層で出会い損ねた、俺がこの世界で初めて戦った魔獣じゃないか。前回は倒すことが出来なかったからな、リベンジだ。

 ブルーバットだし火の矢が効くかな。


 火の矢をコンポジットボウに番える。


――《集中》――


 俺は火の矢を放つ。集中力が増した俺が狙いを外すことも無く、火の矢が天井に待機していたブルーバットの脳天に刺さる。こちらの攻撃に気付いたブルーバットがすぐに飛び立つ。上下左右にとふらふらと飛ぶブルーバット。これだけ動かれると普通なら狙いが定まらないところだが、集中力の増した今の俺なら楽勝である。もう一射。次は胴体に命中っと。……これでもまだ死なないのか。


 ふらふらと飛んでいたブルーバットが急降下し、こちらへと襲いかかってくる。


――《スパイラルチャージ》――


 赤槍を持っている、もう一つの手から赤と紫の螺旋が放たれる。口を大きく開け、こちらに噛みつこうとしていたブルーバットの口内に赤槍が突き刺さり、そのまま抉り貫通する。……ブルーバットの串刺しだな。さすがにコレには耐えきれなかったのか、ブルーバットはそのまま絶命したようだ。

 楽勝だったな。動きが速いと言っても集中していれば、充分に目で追えるし、武器も強化されているからなぁ。


 経験値は……っと、EXP72にMSPは3か。エリート・ビーとまったく同じ数値だな。世界樹の下層エリアの下層で出会っていたら美味しいと思って戦っていたかもなぁ。今だとそこまで美味しいと思えるほどの数値じゃないよなぁ。これなら数が欲しいです。


 とりあえずブルーバットの死骸は魔石を抜いて、そのまま皮の背負い袋に入れる。確か、牙と体が素材になるってことだからな。さあ、進もうか。


 そのまま少し進むと分岐路にでた。右側は更にゆっくりと下っていく坂道、左はまっすぐだな。ああ、どっちが行き止まりなんだろうか。ゲームとかでは全部回りたい病の俺としては、失敗というか、行き止まり方向に進んだ方が嬉しかったんだよなぁ。これでイベントを進めずに全部回れる、みたいな、ね。


 ……。


 常識的に考えると下る方が迷宮的に先へ進めそうだよな。と、その裏をかいて右に進もう。失敗の正解は下りだぜ。と、まぁこの迷宮にはミーティアラットを狩りに来たんだから、出会えればどっちに進んでも良いんだけどね。




―3―


 しばらく下っていくと変なモノを見つけた。下から伸びている鍾乳石の下部分が中に何か入ってそうな具合に膨らんでいる。もしかして、コレって、宝箱か!

 俺は風槍レッドアイの石突きで叩いてみた。鍾乳石は簡単にポロポロと崩れ、中から魔石のようなモノが出てきた。何だコレ? まずは鑑定だな。


【魔結晶の欠片】

【砕くことで魔石と同じように魔素を取り入れることが出来る】


 うん? これ魔石みたいな感じなのか。MSPがゲット出来るってことで良いのかな。うーん、売ると高そうだけど、今はMSPの方が欲しいよなぁ。良し、これも後で砕こう。弓士のスキルに飛翔のスキルに……これからゲットする侍のスキルに、とMSPは幾らあっても足りないくらいだしなぁ。まぁ、どの程度のMSPになるかは分からないけれど簡単にMSPが増えるんだ、ラッキーってことで。さ、進むか。


 しばらく歩いていると、先の方から『どどどど』っとまるで大地が揺れているかのような地響きが聞こえてきた。


 うん?


 そして目の前に沢山の魔獣と書かれた線が……って、魔獣の大群がこちらに走ってきているのか。『沢山』じゃないよな。曖昧な数値では無く、まずはしっかりと数を数えよう。


――《集中》――


 集中力が増した状態ならしっかりと間違えることも無く魔獣の数を数えられる。1、2、3……8か。もっと多いと思ったが実際は8匹か。危険感知スキルも動いてないし、戦ってみるか。と、まずは先制攻撃を当てないとな。

 コンポジットボウに鉄の矢を番える。


――《チャージアロー》――


 鉄の矢が光り輝いていく。薄暗く見えにくいが、まだ距離はあるはずだ。こちらへと走ってくるぼんやりとしたシルエットに矢を放つ。

 矢は狙い違わず走ってきていた魔獣の片方の足に当たり、貫き砕く。その威力に魔獣が体勢を崩す。すかさずもう1射。矢は踏ん張ろうとしたもう一本の足に刺さり、魔獣が転ぶ。先頭の魔獣が倒れたことで雪だるま式に周りの魔獣達もぶつかり倒れもみくちゃになっていく。

 うほ、予想以上に上手くいった。


 俺は赤槍をサイドアーム・ナラカに持たせ駆け出す。魔獣達が倒れている内に何匹か倒しておきたいな。


 近寄るとその姿が良くわかった。退化した目、大きなくちばし、鳥のような三趾になった足を持ち、退化して胴体と一体化しているような羽。何だろうカラスみたいなダチョウって言葉がぴったりだな。って、観察している場合じゃ無い。起き上がってくる前に数を減らさないと。


――《スパイラルチャージ》――


 赤槍が赤と紫の螺旋を描き魔獣の体を削り貫いていく。魔獣は『ぴげぇ』と鳥のような悲鳴を上げ、絶命した。1匹目の魔獣を倒したからか、魔獣と書かれていた線に名前が表示される。表示された名前は――ディアトリマクロウか。何だかカッコイイ名前だな。


 そのまま、他のディアトリマクロウも赤槍で突き刺していく。槍で突き刺して殺していくだけの簡単なお仕事です。余りSP? HP? が無いのか、ディアトリマクロウは赤槍で貫くと簡単に死んだ。いや、ホント、作業過ぎて逆に辛いです。起き上がろうと必死にもがいているが退化した羽? 手? では自身の体を起こすことが出来ないようだった。ただバタバタと退化した羽を動かしているだけの魔獣を貫く。魔獣も生き物だから刺す度に血がぶしゃあと出るわけですよ……うん、吐きそう。戦っている時は夢中だし、必死だから、考えている余裕が無いけれど、こうね、作業的に殺していると改めて生き物を殺しているという感覚が甦ってきて……もうね、要らんこと考えちゃうわけですよ。はぁ、キツい。心臓がバクバクいっているよ。

 俺、この調子だと精肉工場とか屠殺場には就職できないは……。そういった仕事が出来る人を本当に立派だと思います。……馴れてくるのかなぁ。思い出したかのように気持ち悪くなるんだけど馴れられるのかなぁ。


 俺は時間をかけて全てのディアトリマクロウを殺しきった。完全に虐殺だな。経験値は、っとEXPが104にMSPが8か。割る8なんでEXP13にMSP1って、メチャクチャ少ないな。もしかして凄い雑魚だったのか。そりゃあ、一撃で死ぬよな……。つまりチャージアローで矢を無駄にしたッ? これ、足じゃ無くて胴体を狙っていたら一撃だったんじゃないか? 小賢しく考えずに普通に戦った方が良かった気がする。


 しかしまぁ、この集団、何かから逃げている感じだったよな。大物が来るか? これからが本番かもしれないな。

4月28日文章追加


魔獣の『片方の』足に当たり、『貫き砕く。その威力に』魔獣が体勢を崩す。

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