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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
10 三神殿攻略
855/999

10-46 魔人族の長の秘密です

―1―


「にわかには信じられないな」

 俺の、皆の助けがあって今があるという言葉に魔人族の長が肩を竦める。皆の実力が信じられないってところか。この魔人族の長も、魔族と同じく、人を女神の駒だと思っている感じだからなぁ。


「結界なら私が……何とかします!」

 そこで声を上げたのはステラだった。

「お前が、か? 確か、魔族の女王だったよな?」

 魔人族の長は疑わしそうな目でステラを見る。それを見た紫炎の魔女は今にも飛び出しそうな感じだ。こいつは、ホント、大人げないというか……。


『ステラの結界を操る力は本物だ。八大迷宮『世界の壁』によって作られた結界を何とかしたのもステラの力による物だ』

「な、んだと?」

 俺の天啓を受けた魔人族の長が驚く。うーむ、こいつなら知っててもおかしく無いと思ったんだけどなぁ。


『ここにいる皆が女神の意志ではなく、自分たちの意志で、自分に協力してくれている。その意味が分かるか?』

 俺の天啓を受け、魔人族の長が驚いた顔のまま周囲を見回す。一つ一つ、皆の顔を確認しているかのようだ。

「いや、俺は協力するとか言ってねーし」

 人の山の中から飛び出たモヒカンがそんな事を言っていた。いやいや、お前、空気を読めよ。


「分かった。俺の負けだ」

 魔人族の長が両手を挙げる。お手上げってか?


「全てを話そう」

 魔人族の長がぽつりと呟く。全て? 全てって何だ? やはり、何か罠が――いや、隠し事があったのか?


「俺が三神殿の場所や守護している天竜族を知っているのも、女神の事を知っているのも、全てユエイン様に教えて貰ったからだ」

 えーっと、そのユエインって人が助けて欲しい星獣だったよな?

「ユエイン様は俺たち魔人族に生きる術を、情報を、知識を、知恵を、全てを教えてくれた恩人だ。あの方がいなければ、魔人族は新しい人の敵として、駆逐されていただろう」

 星獣が魔人族を生かす為に手助けした?


『一つ良いだろうか? そのユエインという星獣様に助けられたのに、だ。それなのに何故、そのまま女神に従うかのように人と敵対しているのだ?』

 人に会わないように隠れている魔人族は、確かに居た。だが、積極的に人と関わって敵対していた魔人族も居るよな? 魔族に遣われていたからってだけじゃないだろ?


「情けない話だが、魔人族も一枚岩ではないということだな。ユエイン様が俺たち魔人族を助けてくれてから、長い年月が経っているからな。直接会った事が無い者ばかりなんだよ。その恩や想いがねじ曲がってしまっているのさ」

 ふむ。長い年月、か。


『しかし、だ。長い年月が経っていると言っている割には、まるで直接会ったかのように話すのだな?』

 この魔人族の長が、そんなに長生きしているようには見えないんだけどなぁ。


「その事か。そんなことで疑われても困るからな、俺自身は会った事がない、しかし、知っている。その理由を教えよう」

 魔人族の長が胸元を開く。そこには、心臓の辺りに魔石のような結晶が突き刺さっていた。

「伝承法……」

 ん? まさか、先帝の無念を晴らす的な感じなのか?


「俺には俺の意志がある。しかし、この中には今までの歴代の長の記憶が、想いが詰まっている。俺は、俺たちは、それを受け継いでいる。それが理由だ」

 乗っ取られる的な感じでは無いのか。しかし、歴代の人の記憶が詰まっているとか、怖いな。自分の意志だと思っていても影響を受けそうな代物だよなぁ。


 まぁ、でもさ。だからこそ、そのユエインって星獣を助けたいって思ってるのかもな。


『わかった。信じよう』




―2―


『では分担を決めよう』

 魔人族の長の協力でついに三神殿の入り口が全て判明した。となれば、誰が何処に行くか、なんだよな。一人で全部を回れたらいいんだけどさ、それは出来ないって事だしさ。もしかすると、それは女神の嘘かもしれないけどさ、だとしても、だ、今からだと全部を回る時間がないからな。


『まずは太陽の神殿だ』

「私が……いきます」

 ステラが声を上げる。そりゃまぁ、そうだ。結界を何とかして貰う必要があるんだからな。

「なら、わ……」

「僕も行こう!」

 紫炎の魔女が声を出そうとしたところにジョアンがかぶせてくる。紫炎の魔女は恐ろしい形相でジョアンを睨んでいた。


「なら、わ……」

「わらわも行くのじゃ!」

 セシリーが腰に手を当て、胸を反らし大きな声でアピールする。また紫炎の魔女が出遅れたな。


「わ……」

「当然、俺も行くからな」

 今度は魔人族の長がかぶせてきた。ついに我慢出来なくなったのか、紫炎の魔女がファイアボールの魔法を魔人族の長へと放っていた。お、おい!

「何しやがる!」

 紫の火の玉は魔人族の長から跳ね返り、紫炎の魔女を紫の炎で包み込んでいた。何やっているの、この子……。


「にゃ!」

 羽猫も手を挙げる。あー、一番、距離があるもんな。移動速度の速い、空を飛べるエミリオが適任か。

『紫炎の魔女も頼むぞ』

 俺の天啓を受けた紫炎の魔女が驚いたようにこちらを見る。

「ラン、当然だ」

 そして、大きく頷く。ちゃんと魔人族の長とも仲良くやれよ。


 と言うわけで太陽の神殿の攻略チームは、


 勇者ジョアン、神国の女王セシリア、魔族の女王ステラ、魔人族の長デザイア、神獣エミリオで決定だな。探求士や回復役がいないのがちょっと不安だが、このメンバーなら安心して任せられるだろう。いや、セシリーが回復、デザイアが探求士って感じなのか? あー、そう考えるとバランスがいいかもな。

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