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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
10 三神殿攻略
849/999

10-40 刻々と時が迫るのです

―1―


 楽しいやきうの時間が終わる。


 この異世界の常識、自身の信念、立場に従ったセシリー、元の世界の常識に従った俺、その勝負の結果は――俺たちの勝ちだ。


 結果を見れば17対16とギリギリの勝利だった。にしても、スキルがあるからか、点取り合戦になって、なかなかあり得ない数字になってるな。何というか、もう少し制限をかけても良かったよなぁ。


「ラン、次は負けないのじゃ」

 セシリーは何処か吹っ切れた表情で笑う。次は、って、まさか、3回勝負にしようとか、そういうこと!?


 ……じゃないよな。ああ、分かっているさ。

『次も勝たせて貰う』

 次は、今回みたいにギリギリではなく、もっと時間的に余裕があるだろうからな、もっとルールを煮詰めて楽しくやろうぜ。


 そして、セシリーが真剣な表情でこちらを見る。

「ラン、約束通り、わらわの事はランの自由にするのじゃ。しかし、兵達は、わらわの我が儘に関係がない、許してやって欲しいのじゃ」

 我が儘、か。女王だもんなぁ。

『自分の頼みは簡単だ。女神を止める、その邪魔だけはしないで欲しい。そして、出来れば手助けをして欲しい』

 そりゃさ、手助けして欲しいよ。でもさ、セシリーにはセシリーの信念が、立場があるだろうからさ、俺の邪魔をしないなら、それでいいよ。全てが終わった後、また仲良くやろうぜ。

「ラン……」

 俺の天啓を受けたセシリーは驚いたような顔でこちらを見る。セシリーが勝ったら、多分、俺の死を望んだだろうからな。まぁ、釣り合ってないと思ってるかもなぁ。でもさ、いいんだよ、俺はこれでいい。


 セシリーは何かを決意したかのような、何かを振り払うかのような、そんな笑顔を作る。


 そして、セシリーは懐から光る短剣を取り出し、後ろ髪を切り落とした。へ? 何しているの?

「ラン、今、女王だったセシリアは死んだのじゃ。ここからは、ただのセシリアとして、ランの手助けをするのじゃ」

 セシリーは腰に手を当て、胸を反らすように大きく笑う。

『いいのか?』

 セシリーは俺の天啓を受け、大きく頷く。

「よいのじゃ。わらわの国は、わらわが居ない程度で何とかなるほど、ヤワじゃないのじゃ。ただ……」

 そこでセシリーが溜める。

「欲を言えば、もう少し髪を伸ばしていた方がサマになったのじゃ」

 ホント、調子がいいなぁ。


「ラン、兵達は撤退させる。その後、わらわがランに捕まった事にすれば、時間が稼げるのじゃ。後は女神様を止めれば、どうとでもイイワケは出来るのじゃ」

 いやはや、女神を止めるまでの間、俺の悪い噂がさらに増えそうだな。まぁ、それで神国軍の動きは止められるだろうからな。上手く利用させてもらうか。




―2―


 セシリーが赤騎士、青騎士、若騎士に事情を説明し、兵を撤退させる。セシリーの我が儘に3人は呆れているような顔をしていたが、それでも納得し、兵を率いて撤退してくれた。

 現在、グレイシアにセシリーとジョアンが残った状態だ。2人は俺の三神殿攻略に協力してくれるようだ。魔王討伐者の、この2人が協力してくれるのは、本当に助かる。


 そして、最後の地下世界(アンダースフィア)の入り口を探しているときに、それは起こった。


「聞こえますか?」

 周囲に声が響く。それは念話でも天啓でもなく、純粋な声が世界中に広がっていた。


 な? 女神の声か!?


「予定の刻限まで残り一週間を切りました」

 女神の刻限まで残り7日。まさか、ここで約束を破る気か!?


「まだ覚悟が決められないあなたたちの為に祝福を用意しました」

 女神の言葉は、そこで終わる。祝福?


 俺たちは慌てて、外へ、城の屋上へと出る。そこで異様な光景を見る。


 空が割れていた。


 そして、割れた空から、翼の生えた、まるで陶器で作られたかのような巨大な人形が降ってくる。何だ? 天使像? 20メートルクラスくらいか?


 見れば、遠くの空でも同じような物体が落ちているようだ。なんだか、とてつもない数の天使像が降ってきてるぞ。もしかして、世界各地で起きているのか?

「王様、これはヤバイ感じがするんだぜ」

 キョウのおっちゃんが目を細める。ああ、どう考えてもヤバイよな。


 王城近くに降ってきた天使像が立ち上がり、目を見開く。そして、その瞳から破壊の光りが放たれた。ちょ、洒落にならん。


――[エル・ウォーターミラー]――


 とっさに王城前に張った水鏡が破壊光線を跳ね返す。光線は、地形を削りながらあらぬ方向へと飛んでいった。な、洒落にならない威力じゃん。


『壊してくる』

 俺は皆に天啓を飛ばす。

「ラン!」

 ジョアンが叫ぶ。ああ、城に、さっきの光線が飛んできたときはジョアンが防いでくれ。


――《永続飛翔》――


 空を飛び、巨大な天使像の元へ向かう。


 真紅妃、来い。


 真紅妃を呼び、飛んできた真紅妃を握る。


――《スイッチ》――


 《スイッチ》スキルを使いスターダストを呼び出す。そして、そのまま振り払い槍形態へと変化させる。


 巨大な天使像の顔まで飛ぶ。こいつ、デカいな。顔だけで俺と同じくらいのサイズがあるぜ。

 巨大な天使像の瞳が俺を見る。破壊光線かッ! 先手必勝だぜッ!


――《Wインフィニティスラスト》――


 二つの無限の螺旋が天使像を貫く。一撃必殺だぜ!


 しかし、貫いたと思ったはずの天使の顔は、すぐに再生し、元通りに戻っていた。な、なんだと!?


 天使像の瞳から破壊光線が放たれる。ちッ!


――[エル・ウォーターミラー]――


 俺はとっさに水鏡を張り、破壊光線を逸らす。逸らされた破壊光線は背後の王城へと飛び、そして、そこで光輝く巨大な盾に防がれていた。ああ、ジョアンか。

 にしても、この巨大な天使像、思ったよりも強敵だぞ。


 まぁ、一発で倒せないなら、何発でも叩き込むだけだな。俺の習得しているスキル、魔法、全部、叩き込んで破壊してやる。

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