10-39 色々吹っ飛ばすのです
―1―
紫炎の魔女に現状と目的を教え込んで神国軍へと送り出す。
まぁ、面倒くさがりだけど、能力は非常に高い紫炎の魔女だ、大丈夫だろう、上手くやってくれるだろう。この状況でセシリーが断るとは思えないしな。
となると、メンバー選出と練習だなぁ。残り日数が10日を切って、そんな状況でやきうをやっている場合かって感じだけどさ。セシリーを味方に引き込むのは重要な事だからな。
ただ、そう、たださ、最後の地下世界への入り口が見つかってないのが問題なんだよなぁ。14型が壊してしまった11型から情報が入手出来ていればなぁ。いや、全てを持ち逃げされる寸前だったのを防いだ14型は良くやったと思うよ、でもなぁ。
まぁ、終わった事を言っても仕方ないな。まずは目の前の事から片付けていかないとな。
やきう、やきう、と。
メンバーはどうするかなぁ。
俺は当然として、14型、ソード・アハトさん、キョウのおっちゃん。この辺りはルールを理解して行動してくれるだろうから、必須だろう。後は馬鹿力のミカンちゃんか。ルールは理解してくれないかもしれないけど、悪球だろうが、何だろうが、当たればホームラン、当てるのも上手いだろうからな。
これで5人。
後は、なんだか凄いやる気になっていて、俺も参加させろって言っていたバーン君か。まぁ、なんだかんだでAランク冒険者だし、やってくれるだろう。
探求士3姉妹や同じく探求士のシロネ、それとモヒカンに毟られたおっさんズ、この辺りはスポーツに向いてないだろうし――うーむ。頭数で入れるのは有りだけどさ、負けたら世界の終わりだぜ? 慎重になるよなぁ。でも、他に人がいるかって言うと微妙なんだよなぁ。
紫炎の魔女なんて、全てをぶち壊す展開しか予想できないし、運動は苦手そうだもんなぁ。あー、ステラも無理だよな。
よくよく考えたら、俺のメンバーって後衛職が多いのか。脳筋な前衛職なんてミカンちゃんくらいじゃないか。いやまぁ、14型もパワー系か。まずったなぁ。
ユエやファット、スカイにフルール、クニエさんにポンちゃん、フミコン、この辺りは、俺の国の文官系だもんなぁ。ポンちゃんやクニエさんは元冒険者だけどさ、片足のポンちゃんや、冒険者から離れて丸っとしてしまったクニエさんに頼むのはなぁ。
いや、フミコンは有りか? 意外と上手くやってくれそうだ。
仕方ない、下位打線は上位打線までの繋ぎって事で、器用で足が速い探求士打線にするか。
フミコン、シロネ、3姉妹の誰か、かな。まぁ、おっさんたちは補欠って事で。これで、やるしかない、か。
―2―
白球が空を舞う。ボールは俺の頭上を高く越え、何処までも飛んで行く。
終わった。
何で、俺たちのチームを先攻にしたんだ。こんな逆転負けが起こるじゃないか。馬鹿なのか、馬鹿なのか。
一応、空を飛んだり、俺の《魔法糸》みたいなスキルでボールを操作する事は禁止にしているからな。もう、あのボールには追いつけないだろう。
勝利を確信したのか、バッターボックスのゲルダは動かない。だから、ホント、何で、お前が参加しているんだよ! 大人しく『名を封じられし霊峰』の攻略をしていろよ。
異常なジャンプ力や行動力を持っている14型はピッチャーだ。さすがに、どれだけ14型が優れていてもピッチャーがバックホームを行うのは無理だ。
終わった。
まさか、こんな形で世界が終わってしまうのか。
しかし、俺の後ろに居た外野は諦めていなかった。
まずはフミコンが踏み台になり、その上をシロネが飛び、さらに二段階ロケットよろしく、探求士3姉妹のウリュアスが飛び上がっていた。へ? それ、フミコンの意味があるのか? じゃ、じゃなくて、凄い飛び上がっているけど、だ、大丈夫なのか? 探求士の身軽さだから、こそなのか!?
ウリュアスが空中でボールをキャッチする。それを見たゲルダが慌てて走り出す。いや、もう遅い。これでアウトだ。
そして、次は俺たちの攻撃。
14型がバントの姿勢のまま待ち構える。いや、お前、ランナーがいないのにバントしてどうするんだよ……。有りなのか?
セシリーの投げたボールが14型の水平に構えたバットと衝突する。ただ、横に構えているだけのはずのバットとボールが、お互いの力によって激しく振動する。いや、だから、何でバントで振動するんだよ、おかしいだろ。
そして、ボールは弾かれるように飛び、そのまま空へと消えていった。えーっと、何これ? この子、バントでホームランを打ちやがった。おかしいだろ、絶対におかしいだろ。
俺が下手に全てのスキルを禁止にしなかったから、大変な事になってるじゃん。いや、だってさ、常時発動系のスキルを持っている人もいるだろうから、スキルを禁止にしたら、参加出来ない人が多いだろうからさ。そうは、言っても、そうは、言っても!
何処の超人なやきうだよ。
これで、後は俺たちがセシリーの打線を抑え込めば勝てる。しかも、厄介なゲルダには、もう順番が回ってこないだろう。
勝った。
勝ったぞーッ!