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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
10 三神殿攻略
846/999

10-37 全てが上手くいくはず

―1―


 スカイの件については色々とあったが、皆が上手くやってくれるだろう。俺の知り合いは皆、仲間思いだしな。動いた14型やミカンだってさ、最後の行動を見れば、スカイをどうにかしようってよりも魔道炉の確保の為に動いていたみたいだしな。俺の早とちりだったぜ。止めずに、あのままにしておいた方がもっと上手く行ったのかもしれんなぁ。


 まぁ、そんな、屋上から飛び降りたはずの14型さんは、何事も無かったように地面を陥没させて衝撃波を飛ばしながらも普通に着地していたからなぁ。さすがは14型さん、なんともないぜ!


 と、それよりも、だ。俺はやきうのルールブックを作らなければならないのだ。これはこれで急ぎの仕事だよな。神国との問題を解決する為の一手だもんなぁ。


 この世界の常識に疎い俺は、そういった事が得意そうなユエ、意外と頭がまわる14型などと協力してルールを煮詰めていく。併せて大工の親方に頼みグラウンドを作って貰う。この世界の人たちの力を考えて、通常よりも大きめの球場にする予定だが、それで問題ないだろう。


 そして二日目。ルールブックが完成した。


 狙ったかのようにソード・アハトさんたちの軍隊も戻ってくる。やれやれ、負傷者がいないというコトは、俺の策が上手く行ったのかな。何気に、俺、凄いなぁ。女神に日数を区切られて追い詰められているからか、最近、上手くいっている気がするなぁ。


 このまま、皆の協力で上手くいくんじゃないか? 女神を止められるんじゃないか? 日数はギリギリだけどさ、何とかなりそうな気になってきたぞ!




―2―


 皆を集める。


 テーブルを囲み、座っている皆を見渡せば、それは、いつものメンバーだ。俺の背後で優雅に佇む14型、いつものユエ、ファット夫婦、キョウのおっちゃん、ソード・アハトさん、ゼンラ少年、ポンちゃん、クニエさん、まったく似合わないキリッとした表情をしているスカイ君、忙しいからか疲れをにじませた顔をしながらも気持ち悪く笑っているフルール、いつもの少年姿のフミコン、相変わらず慣れない様子のステラとシロネ、よく分かってなさそうなミカン、何故かフードを深くかぶっている紫炎の魔女、そして冒険者代表という感じで居座っているバーン君。


 いや、いつものメンバープラスって感じか。


 さて、と。神国対策の説明をしないとな。


『ここにやきうというスポーツのルールブックを作った』

 スポーツとか、上手く伝わるかな? まぁ、その辺は上手く翻訳スキルさんが頑張ってくれるのだろう、と期待する。

「王様……」

 ユエが心配そうな顔で俺を見る。まぁ、ユエと14型にはルールブックを作成する関係上、俺がやろうとしている事を説明しているからな。


『勝者に従うという餌でセシリア女王に、このスポーツでの勝負を挑もうと思う』

 俺の天啓を受け、内容を理解した皆は頷き、こちらを見る。そして、キョウのおっちゃんが口を開いた。


「王様、俺はいいと思うんだぜ。ただ……」

 ただ、何でしょ?

「誰が、神国軍まで、そのルールブックを持って説明に行くんだぜ」

 あ、考えてなかったなぁ。俺が行くのは――無いよなぁ。となるとキョウのおっちゃんか? いや、でもなぁ。セシリーが使者をどうにかするとは思えないけどさ、セシリーに会う前に潰される可能性だってあるんだよな。


 あー、ルールブックが完成すれば何とかなるとか思って何も考えていなかったなぁ。ホント、俺、抜けてるぜ。


「虫」

 そこで紫炎の魔女が声を上げる。

「私が持っていこう」

 紫炎の魔女の言葉に皆が驚き、注目する。へ? 紫炎の魔女が?

「天竜族の私ならば、神国に顔が利く。無下にされないだろう」

 皆、紫炎の魔女が天竜族だった事を知らなかったのか、さらに驚きの声を上げる。まぁ、天竜族って言ったら女神の尖兵みたいなもんだもんな、驚くか。というか、今日は無駄に饒舌だな。


 そして、紫炎の魔女が立ち上がり、皆の前にブレスレットのような物を置いていく。

「これは、そこの虫から貰った金属で作った腕輪。皆を守ってくれると思う」

 さすがは紫炎の魔女だぜ。俺の与えたラナジウムを上手く活用してくれたんだな。最後の戦いを前にしてか、饒舌になってるしさ。お礼を言っておくか。


『ソフィア、すまない。助かる』

 俺は紫炎の魔女に限定して天啓を授ける。

「構わない」

 ん? あれ? 俺、紫炎の魔女に限定して天啓を授けたよな? てっきり念話で返してくるのかと思ったら、意外だな。まぁ、念話はMPを使うし、周りを気にしない紫炎の魔女だからな、気にしたら負けか。面倒くさがって、なんてのが理由かもしれないけどさ。


『14型、つけてくれ』

 俺の体型だと腕輪をつけるのは難しいからな。こういう時に14型さんが居てくれて良かったぜ。

「マスター、自分でつける事が出来るスキルを持ちながらも、わざわざ私に頼むという事を嬉しく思い了解です」

 あ、はい。そ、そうかサイドアームで持てば良かったのか。ま、まぁ、14型は何故か嬉しそうだし、良しとするか。


 そして、14型が手を伸ばし、それに触れた瞬間、その腕輪を叩き潰した。へ?


 へ?


 えー?


 14型さん、何をするの?


「あらら、見抜かれちゃったか。そのまま隷属してくれれば楽だったのになぁ」

 紫炎の魔女から、普段の彼女と違う声が発せられる。


「マスター!」

 14型の動きは速かった。14型が飛ぶ。14型の拳が紫炎の魔女のローブを、いや紫炎の魔女を騙っていた者を貫く。しかし、そこに、その姿はなかった。


「うーん、見破られないと思ったんだけどなぁ。今回で2回だもん、自信を失っちゃうなぁ」

 ま、まさか、紫炎の魔女に化けていたのか!?

『紫炎の魔女は無事かッ!』

 俺はとっさに天啓を飛ばす。答えを期待したワケじゃないが、そう問わずにはいられなかった。

「夢中になると他が見えなくなる性格みたいだし、まだ軍隊と戦ってるんじゃない?」

 くそッ! そういうことかよッ! じゃあ、鉱石を渡した紫炎の魔女はッ! しまったッ!


世界の敵(ワールドエネミー)さん、女神セラ様に良い土産をありがとう」

 くそ、マジかよ! 俺らの行動、筒抜けだったのかッ! 天鎖剣の事、バレてしまったのか!? あー、スカイを焚きつけたのも、まさか、こいつかッ!


 くそ、くそ、くそッ!


 油断していないつもりだったのにッ!


 いや、ルールブックを奪われなかっただけ、良しとするか? そ、そうだな。今は次を考えるべきだ。前向きに……くそぅ。

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