10-35 いつもの仲間たちです
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やれやれ、分かりやすくて、すぐにルールを理解出来て、勝敗がつきやすく、レベル的なステータスの差で勝敗を分けにくい、そんなスポーツか。となると、個人戦よりも団体戦。人数が多いスポーツの方がいいよな? しかも、だ。覚えさせる人が増える分、極力簡単なルールの方がいいよなぁ。
バスケやサッカーとか、どうだろう? あー、でもバスケは空を飛ばれると厄介か。俺みたいに空を飛ぶスキルを持っている人間が参加するとダメになりそうだなぁ。それにさ、5人対5人の10人だもんな。もう少し人数の多い方が……むむむ。
サッカーはいい考えかも。相手の陣地にボールを蹴り入れたら勝ちみたいな感じにして、さ。分かりやすい! 人数も11人対11人だから、そこそこの人数になるし割と……いや、ダメだ。ボールを運ぶわけではなく、いきなりゴールに入れようとする個人競技になりそうな未来しか見えない。その対策でグラウンドを広くするにしても……むむむ。ボールを持った人間に襲いかかるような構図になってしまうからなぁ。ちょっと印象が悪いかも。オフサイドとかを伝え始めるとルールが複雑化していくし……むむむ。
あー、難しいなぁ。
極力、直接的に争わない感じのスポーツにせねば、後々のしこりになりかねないからなぁ。
「ちっ、おい芋虫」
俺が考え込んでいると、前方から声がかかった。何だ、バーン君じゃないか。今、俺は何のスポーツにするかを考えていて忙しいから、また後で、な。
「ちっ。ラン、待て」
もう、バーン君、何かね。俺は忙しいんだけどなぁ。
「ちっ、やっと話を聞く気になったか」
俺が足を止めてもバーン君は舌打ちを繰り返していた。それ、癖になるから止めた方がいいぜ。
『バーン、何の用だ?』
俺の天啓を受けたバーンは長い髪を掻き上げ思いっきり掻き毟っていた。余り勢いよく掻きすぎると抜け落ちて大変なことになっちゃいますよ。
「ちっ。お前のところの依頼で魔道炉の運搬の護衛をしたんだろうが」
へ? 魔道炉の護衛? あ、あー! 迷宮都市からバーン君が運んでくれたのか。だから、バーン君、俺の国に来ているんだな。すまん、すまん、お礼をするよ。
『そうだったのか。バーン、ありがとう。何か謝礼を用意しよう』
俺の天啓を受けたバーン君は大きなため息を吐いていた。
「ちっ。これだから世界の敵になるようなヤツは!」
いやいや、俺も好きで世界の敵とやらになったわけじゃないからな。まぁ、今は俺自身の思う世界の敵ってぇヤツを自称しているけどさ。
「俺は、な! ちっ。女神様の敵になったお前の味方をする為にここまで来たんだろうが」
へ?
「普通に考えれば、女神様に逆らうお前の考えは間違っているだろう。非常識な考えだな。だが、ちっ、それでも俺は、俺くらいは味方してやろうと……」
えー、何々、バーン君どうしたの? ツンデレったの? うーむ、俺にデレられても困るんだが。
「何々、バーン、一人で格好つけてるのー?」
と、そこに例の3姉妹も現れた。な、お前らも来ているのかよ!
『キャッツルガ、ウリュアス、ゼロターの三人もこちらに来ていたのか!』
探求士3姉妹が揃ってるよ。
「にしし、こっちの方が面白そうだから来たんだぜー」
「女神様に逆らう私かっけーって感じじゃんよー」
頼もしいなぁ。
「ちっ。だから、アレだ。世界が滅びるかもしれないのに報酬は必要無い」
バーン君が横を向き頬を掻いている。おいおい、何、本当にデレてるのかよ。
「にしし、下の食堂におっさんとトンガリも来てるんだぜー」
おいおい、マジかよ。
「食料を食べ尽くして、この国を内部から壊すーって息巻いてたよー」
ははは。やれるもんなら、やってみやがれ。
「魔道炉はちゃんとぶつぶつ呟いている犬人族の人に渡したんだぜー」
おう、ちゃんとフルールに渡してくれたか。これで素材は全て揃ったな。後はフルールを信じて天鎖剣の完成を待つばかりだ。これで、いざ、三神殿に乗り込むってときに間に合わなかったら……フルール、恨むからな!
「ちっ。お前のところの商会の鬼人族の女が、周囲が敵ばかりの中、説得を繰り返して手に入れた貴重な物だからな。大切に扱えよ」
もしかして、ファリンか。中立のはずの迷宮都市ですら、敵ばかり、か。そんな中、そうか、迷宮都市で頑張ってるんだな。
「あの言葉がなかったら私たちも動かなかったんだよ」
「おっさんも私たちも、いくら仲の良い芋虫ちゃんの為でも、女神様に逆らって動こうとは思わなかったはずなんだぜー」
さっきは面白そうだからって言ってたじゃん。まったく調子のいいヤツらだぜ。
……。
にしても、これで、なんだかいつものメンバーが集まったって感じだな。
そして、それはファリンのお陰なんだな。
「にしし、途中でせんちょーの空飛ぶ船に乗せて貰ったから楽だったんだぜー」
「そーそー、迎えが来るんだから、さすがは芋虫ちゃん、抜け目がないじゃんよー」
「助かったよねー」
うん?
あー、ファット船長のネウシス号か。居ないと思ったら、迎えに行ってくれていたのか。
魔道炉が間に合ったのはファット船長のお陰だな。心強い援軍も連れてきてくれたし、ファット船長に大感謝だぜ。
さあ、なんだか順調に前へと進んできた気がするぞ。
……。
って、まぁ、セシリー対策のスポーツが思い浮かばないんだけどな。ま、まぁ、もう少し時間はあるはずだから、しっかりと考えよう。取り返しがつかない問題だからな。