10-28 まさかもしかすると?
―1―
あー、うん。
何だろうなぁ、俺の戦力強化と、新しい魔法を見る事で何か閃きでも生まれないかなぁって都合の良い事を考えていたけどさ、無駄でしたぁ。無駄でしたぁ。
いや、まぁ、フミコンが悪いわけじゃないし、フミコンは、ただ約束を守ってくれただけだし、あー、うむ、俺の勝手な思惑だからなぁ。
……。
あー、そうだ。
せっかくだから、物知りなフミコンにラナジウムの事を聞いてみるか。
「フミコン、ラナジウムって鉱石を知っているかい?」
俺の言葉を聞いたフミコンは首を傾げ、悩み込む。
「むむむ」
フミコンは唸っているばかりだ。つまりフミコンも知らない鉱石って事か。
「これは俺が知っている情報だが、周囲の魔素を、数々の属性を集めて結晶化させて作る鉱石だ。魔石に近いものだろう」
フミコンが顔を上げ、こちらを見る。
「ノアルジ王、今、そのやり方を見せてもらう事は出来ますかのう?」
俺は頷き、答える。
「ああ。失敗するが、それでも良ければ見てくれ」
――《魔素操作》――
《魔素操作》スキルで周囲の魔素を造り替え、全ての属性を作り出していく。火、水、木、金、土、風、闇、光。そして、その魔素を集積して、一つの塊へと――俺は夢で見た、そのままに属性を変異合成し、鉱石へと作り直す。
そして、出来たのは魔鉱だった。
うーむ、何でだ?
全部の属性を合成して作ってるのにさ、おかしいよな? 間違いないよな?
ま、まさか、無色の始原属性が混じっていないからか? あ、あり得る! そ、そうか! うむ、フミコンに始原魔法を見せて貰っていて良かったな!
「ノアルジ王、それは……?」
「失敗作だ。もう一度、行う」
よしよし。これはキタかもしれん。フミコン、ナイスだぜー。
――《魔素操作》――
《魔素操作》スキルで周囲の魔素を造り替えていく。そして、火、水、金、土、風、闇、光、始原、全ての属性を作り出し、それらを一つの塊へと集め、合成していく。
そして、虹色に輝く鉱石が完成した。
……。
あるうぇ? 夢で見た鉱石と違うんですけどー。
右の赤い瞳で見てみよう。
【虹】
【全ての属性を兼ね備えた伝説級の魔鉱】
……。
これ、違うよな? 凄いものぽいけど、違うよな?
究極と伝説ってどっちが凄いんだろうなぁ。って、そうじゃなくて、だ。これで天鎖剣って作れませんかねぇ? 作れないよなぁ。
「ノアルジ王、それが言われていた鉱石かのう? どうも微妙に違う気がするんじゃがのう」
はい、その通りです。違います。まぁ、コレはコレでフルールに渡して何かに造り替えて貰うとして、だ。
「フミコン、これは違う物だ。今の作成方法を見て、何か問題点が見つからなかっただろうか?」
始原属性は、コレだって思ったんだけどなぁ。
「ノアルジ王、鉱石の作成方法は間違っておらんのじゃな?」
俺は頷く。見たまま、その通りだぜ。
「もしかするとじゃがのう……」
フミコンがありもしない顎髭を梳くような動作を繰り返す。何かね、何かね? 何か思いついたのか?
「先程、始原魔法で鑑定したときに気付いたのじゃが、ラン王には一つ、土の属性が欠けておる。7つも属性を持っているだけでも凄いのじゃが、しかしのう、もしかすると、それが原因で完成しないのかもしれんのう」
な、なんだってー!?
た、確かに土の属性は持っていなかったな。いや、でもさ、合成する魔素の方にはちゃんと土属性も混ぜているんだぜ? それでも使い手に属性が必要なのか? うーん、余り考え難いけどなぁ。でも、それでも、可能性があるなら、それに賭けたいな。しかし、だ。問題が一つあるんだよな。
「フミコン、しかしだけどさ、俺、土の属性の取得方法なんて分からないぞ」
そうなんだよなぁ。俺が、色々属性が使えるようになる、このステータスプレート(螺旋)を手に入れたのだって、この世界のバグみたいなものだしさ。その時に属性が上書きされて手に入れたものだから、取得方法なんて、改めて考えても分からないぞ。
「ノアルジ王、いや、氷嵐の主のそなたが、その力をどうやって手に入れたかが、鍵になると思うのじゃ」
俺が力を手に入れた方法?
「この世界は女神が創った世界、女神の手が入っておる。その手をすり抜けた方法じゃよ!」
フミコンが興奮したように叫ぶ。
女神が創った?
方法?
女神の枠を抜ける?
俺が色々な力を手に入れた時って、戦いの中だよな?
死にかけた時だよな?
《変身》スキルを使った時だよな?
そういえば、《変身》スキルを使っていたからか、この《変身》中は赤い瞳と化している叡智のモノクルを女神に奪われなかったよな?
もしや、まさか?
いや、試す価値はあるのか?
「フミコン、ありがとう。いいヒントが貰えたぜ!」
よし、試してみよう。