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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
10 三神殿攻略
836/999

10-27 あのーフミコンさん?

―1―


 俺は天啓を飛ばす。

『ジョアン、聞こえているな。自分の守りたいものを守れ』

 俺はジョアンに天啓を飛ばすと、そのまま戦場を後にする。ジョアン、聞こえたよな?


「ランの旦那……」

 俺を心配してか、キョウのおっちゃんがやって来た。いやいや、俺、大丈夫だから、平気、平気だってばさ。


『キョウ殿、後は任せても大丈夫か?』

 俺の天啓を受けたキョウのおっちゃんがゆっくりと頷く。

『自分は一度、城へ戻る。キョウ殿の補助として14型を置いて行くので……』

 俺が天啓を飛ばすと、キョウのおっちゃんは全力で首を横に振っていた。

「いやいやいや、ここは俺だけで大丈夫なんだぜ」

 何だよー、みんな14型を恐れるような反応をするよな。14型なんて有能なポンコツロボなのにな。なんだか、随分と誤解されているよな。


 14型が戦場から戻ってくるのを待って、帰還する事にする。あー、えーっと紫炎の魔女は、まぁ、紫炎の魔女は放置でいいか。

 戦力的にも、うん、キョウのおっちゃん一人では危ない時でも紫炎の魔女がいれば、何とかなるだろうからな。


「マスター、お待たせしました」

 真っ赤に染まった凶悪な篭手を振り払いながら14型が戻ってきた。殺してないよな? 誰も殺してないよな? えーっと、パーツを取得したからか、14型さんの戦闘力が凄いコトになってるよな。この強さなら、女神の使徒の一人くらいは……いや、さすがにそれは無理か。


 俺は14型を連れた状態でコンパクトを開けた。すぐに周囲の風景が変わる。


 うむ、場所は、あっという間にグレイシアの王城の屋上だ。


 残り日数17日。その日数でラナジウムを作り出し、天鎖剣を完成させ、最後の地下世界(アンダースフィア)への入り口を見つけて、セシリーの問題を解決して、帝都に乗り込む準備をして……きっついなぁ。


 女神が30日という日数を守る保証もないし、あの性格の悪い女神の事だから、急遽日数を一週間早めますとか言いかねないし、キツい、本当にキツい。何もかにもが間に合わない気がしてくる。


 あー、全てを投げ出したら楽になるんだろうなぁ。




―2―


「おや、ラン王、珍しい姿ですのう」

 少年姿のフミコン老がほっほっほっとお爺ちゃんのように笑っている。いや、こいつはお爺ちゃんなんだが、外見が、外見が少年だからなぁ。


「フミコン、いつかの約束を覚えているか? 急かすようで悪いけどさ、まだ時間があるうちに約束を、ってな」

 俺は《変身》スキルを使いフミコンへ会いにいく。はっはっはっはー、今の内に俺の戦力を上げるのだー。

「ラン王も、いや、今の姿はノアルジでしたかのう、ノアルジ王も律儀な方じゃのう。こういう時は、女神を倒した後まで約束を取っておいても良いと思うんじゃがのう」

 必ず倒すから、その後で、的な? いやぁ、実はね、今、俺の精神的にも凄い余裕がないんすよー。


「フミコンの使う魔法をこの目に焼き付けたいんだよ」

「ほっほっほ。ならば、見て楽しめるような魔法を選ぶかのう」

 少年姿のフミコンが腕を回し、張り切っている。

「ノアルジ王、見せられるのは一度きりなのじゃよ」

 フミコン、これ、俺の思惑分かってるよなぁ。まぁ、何だろうか、フミコンからしても俺に全てを教える裏をかいた方法って感じで、暗黙の了解的に行動してくれているのかもな。


 フミコンとともに屋上へ向かう。


 少年姿のフミコンはとてとてと音がしそうな歩き方で屋上の中央まで歩く。そして、フミコンはこちらへと振り返った。

「まずは竜言語魔法じゃ」

 フミコンの言葉。


 ……。


 しかし、何も起こらない。


 アレ?


「フミコン?」

 フミコンは首を横に振る。

「竜言語魔法は、この新しい世界の礎となった4色の竜の残した言ノ葉を借りた魔法なのじゃが、どうも女神に邪魔されておるようじゃのう」

 ず、ずこー。ずこー、だぜ。あー、女神様って、この世界の創造主だもんな。女神が受肉した影響か。あー、うー、まー、使えないものは仕方ない、次だ、次。


「次は始原魔法じゃ」


 ……。


 しかし、何も起こらない。


 アレ?


 また?


「フミコン?」

「ラン王、名を氷嵐の主。ジャイアントクロウラー劣化種、持っている属性は火、水、木、金、風、闇、光、一つ足りぬようじゃのう。そして能力とスキルは……」

 フミコンが次々と俺の情報を読み上げていく。まさか? 俺は慌てて右の赤い瞳で魔素の流れ、フミコンの動きを見る。無色の線が伸びている、のか?


「始原魔法の一つ、鑑定魔法じゃよ」

 じ、地味ー! 見て楽しめる魔法って言ったじゃん、これ、楽しいのはフミコンの方だけじゃないか!


 ……そうは言いながらも、俺は情報を読み取る。各属性が色を持っているように、始原魔法は無色という色なのか。ディテクトエレメンタルの魔法なんかも始原属性の魔法なんだろうな。

 まずは、この魔法から始まって、魔法という形が出来て、それを色というものに、属性というものへと別けて当てはめていった?

 始まりの魔法だから、全ての属性を透過し、防ぐ事も出来ない?


 うーん、そんな感じかなぁ。


「次は古代語魔法じゃ!」

 フミコンが叫ぶとともに、無数の長方形に切り取られた紙の札をばらまく。何処に準備していたの、それ?


 舞う紙の札が姿を変え、鳥に、蝶に、竜に――色々な姿へと変わっていく。


 紙から生まれた動物たちが、昆虫たちが、空を舞う。


 そして、フミコンが大きく手を使って半円を描くと、そこより炎が生まれ、全ての生き物たちが燃え、ただの紙くずとなった。


 これは、アレか。


 魔法の力で無機物に命を与えて動かす魔法? 昔話にあるような式神とか、そんな感じだろうか。


「最後は深淵魔法じゃ――と言いたいところなんじゃがのう、この深淵魔法も女神に阻害されるようじゃ」

 えーっと、フミコンさん?


 ま、まさかの事態です。4魔将が使っていたのを見ていたから期待していた魔法たちが全て微妙です。しかも、二つしか発動しませんでした!


「むむむ。ノアルジ王、なんだかすまぬのう」

 あー、うん。


 あー、うん。

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