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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
10 三神殿攻略
834/999

10-25 おっさんが燃えるだけ

―1―


 500人ばかりの兵隊を連れて行軍です。兵隊というと語弊があるな。キョウのおっちゃんとソード・アハトさんで鍛えた集団で戦う事が出来る人たちというのが正解だろう。


 そんな集団が道を避け、森の中を、八大迷宮『世界の壁』を目指して進んでいく。何というか、数が多くなると休憩のタイミングや食事の時間とかさ、色々大変だよなぁ。まぁ、その辺は、全てキョウのおっちゃんがやってくれているんだけどな。さすがは元大貴族、奴隷落ちしていたとしても、こういうのは任せて安心だな!


 行軍を開始して初日の夕方、日が落ちようとしている時間、俺たちが休む場所を探している時に、その男は現れた。


「はっはっはっはっはっ! 我が輩の時間がやって来ようとしているのだ。お前達は今から地獄を見……ぶべら」

 現れた男は一瞬で燃えていた。俺は横に居る紫炎の魔女を見る。

「何?」

 いえ、何でも無いです。そう、何も無かった。俺たちは何も見なかった。


 ……生きてるよな? あ、燃えながら、ゴロゴロと転がって逃げてる。うんうん、生きていたか。


 現れた男は俺たちから距離を取った所で立ち上がり、何やらポーションの類いを一気飲みしていた。

「お、お前ら、我が輩を……」

 と、そこでおっさんは再度燃えていた。俺は横に居る紫炎の魔女を見る。

「何?」

 い、いえ、何でも無いです。


 ……。


 あのおっさん、何をしに現れたんだ。どーも、アーラさんみたいに仲間になろうって感じでは無かったけどさ。ホント、邪魔だけはして欲しくないな。


 途中、何度か、よく分からない燃え芸を披露するおっさんと遭遇するが、二日目の夕方には特に問題無く八大迷宮『世界の壁』の近くまで到着した。この世界の人たちってさ、徒歩なのに、もう到着だもん。随分と歩くのが速いよな。いや、まぁ、戦える人員って事で、行軍になれている人たちだからってのもあるんだろうけどさ。


 キョウのおっちゃん、ジョアンとともに竜馬車で八大迷宮『世界の壁』を目指したのが懐かしいぜ。あの時はジョアンの竜馬車だったんだよな。まだ、ジョアンも小憎たらしい少年でさ、それが今では勇者様だもんな。あの時に見掛けた吹雪の中の城が、今では俺たちの城で、そこに国を造ってだもんなぁ。何処でどうなるか、分からないもんだよ。

 そのジョアンが、今は敵側、か。いや、まだ敵対したとは決まったワケじゃ無いからな!


「マスター、妄想に耽るのは良いですが、食事の時間なのです」

 あ、はい。あー、そういえば出会ったばかりの14型も一緒だったよな。って、その手に持っているのは水ですか。いや、あの、俺、その、水だけ飲んでいたら生きていける、みたいな生物じゃないんで、ちゃんと食べ物もお願いします。いや、ホント、水だけとか勘弁してください。




―2―


 翌朝、キョウのおっちゃんと俺、紫炎の魔女、14型だけでセシリア女王の軍隊の元へと向かう。これで奇襲はかけられなくなったが、それは仕方ない。だってさ、何か誤解かもしれないじゃないか。


 俺たちが陣地の前まで来ると、陣地内が慌ただしくなった。


 そして、しばらくして、赤騎士、青騎士、勇者ジョアンを連れたセシリア女王が現れた。

「女王自ら出向く必要は……」

「よいのじゃ」

 ああ、向こうに若騎士さんの姿も見えるな。


 セシリア女王が俺たちの前へと歩いてくる。

「……ラン、何の用なのじゃ」

 セシリアは一瞬、顔を伏せるが、すぐにこちらへと視線を送ってくる。それは突き刺すような、憎い敵でも見るかのような目だ。

『事情を説明して欲しい』

 俺の天啓を受けたセシリア女王は苦しそうな、何かを耐えているかのような表情に変わる。

「わらわたちは世界の敵(ワールドエネミー)を討ちに来たのじゃ」

 ……。


 そうか。


『セシリー、何があったんだ?』

 俺の天啓を受けたセシリア女王は大きく頭を振る。

「会話は無駄じゃ。ランとわらわは敵同士になったのじゃ」

 セシリア女王の言葉。その横ではジョアンが哀しいものでも見るかのように俺とセシリア女王を見比べていた。


『ジョアンからも何か言って欲しい。どういうことなのだ?』

 しかし、ジョアンは答えない。何か口を開こうとするが、すぐに閉じてしまう。


 どういうことだよ。


 俺たち友達だったんだよな? 俺、この世界で初めて出来た友達だと思っていたんだけど、そうじゃなかったのか?


「話す事は何もないのじゃ」

 セシリア女王が背を向ける。そしてジョアン、赤騎士、青騎士を連れて陣地へと戻っていく。


『何か答えてくれ!』

 しかし、俺の天啓は届かない。前へ出ようとする俺をキョウのおっちゃんが止める。


「セシリア女王、会戦は一時間後、一時間後なんだぜ」

 キョウのおっちゃんが俺を押さえたまま叫ぶ。セシリア女王は聞こえているのか聞こえていないのか、そのまま陣地へと戻っていく。


「ランの旦那、戻るんだぜ」

 あ、ああ。


 何でだ、何で、こうなった?


 何故、敵同士に?


 まさか、これも女神の使徒や、あのメイドたちの仕業か?


 ……。


 この戦争に勝って――そうだよ。勝てば、ちゃんと話を聞いてくれるんじゃないか?


 よし、そうなれば、サクッと勝ってやるぜ!

2018年5月12日修正

キョウのおっちゃん、ジョアンともに → キョウのおっちゃん、ジョアンとともに

セシリア王女の軍隊の元へ → セシリア女王の軍隊の元へ

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