10-24 戦争が始まる予感です
―1―
皆が集まる場所と暗黙の了解になりつつある講堂へと向かう。そこで途中、合流した14型、羽猫とともにぼけーっと待つ。あー、14型さんは皆を迎えに行かなくてもいいのかな? キョウのおっちゃん一人に任せてて大丈夫なのかな?
……。
暇だな。
どうせだから、さっき貰った雷霆の斧を調べてみるか。
――《スイッチ》――
《スイッチ》スキルを使い雷霆の斧を取り出す。さてと、どんな説明かな。
【雷霆の斧】
【風と光の属性を持ち使用者のMPを力に変える伝説級の斧。固有技ボルトチャージが発動出来る】
えーっと。
これは、どうなんだろうな。確かに伝説級の武器だよな。でもさ、使用者のMPを力に変えるって、この斧を振るうとMPを吸われるってコトか? それって呪われた武器なんじゃないか? 何処かの魔王が使ったMPを単純に攻撃力に変えるってワケでも無さそうだし、意外と微妙かもしれんなぁ。
まさか、アクスフィーバーの連中、これを持て余しているから、俺に渡したんじゃないだろうな? いや、確かに伝説級だけども、だけどもッ!
それに不安なのが、固有技の名前だよな。斧でボルトって名前が付くとさ、嫌な予感しかしない。いや、脳筋以外なら、大丈夫なフラグかもしれない。うん、そう前向きに考えよう。
にしても、ちょっと色々と試してみたいなぁ。さすがに、この講堂で試すのは問題があるかな?
―2―
しばらくして、皆が集まった。
集まったのは、キョウのおっちゃん、ソード・アハトさんともう一人の蟻人族、ユエ、紫炎の魔女ソフィア、ステラ、ミカン、少年姿のフミコンの8人だ。あれ? 意外と少ないんだな。蟻人族の人はソード・アハトさんの副官の、えーっと、確か、盾にちなんだ名前の人だったような。そういった人がいるってことは、やはり戦争関連か。となると、ついに帝国が攻めてきたのかな?
「キョウさん、急ぎということですが、ついに帝国か神国が動いたのですか?」
ユエの言葉にキョウのおっちゃんは頷く。
「ユエ殿には悪いが旦那のファットは頼み事で外して貰っているんだぜ。それと自分たちの作業で忙しいクニエ、フルール、ポン、それに放心状態のスカイは呼んでないんだぜ」
ポンちゃんとクニエさんには兵站も頼んでいるからなぁ、そりゃあ、その準備で忙しいだろう。まぁ、連携は必要だから、後でキョウのおっちゃんが話をしに行くだろうけどさ。
「まずは手っ取り早く言うんだぜ。神国が攻めてきたんだぜ」
何だと!?
「ジジ、神国とは同盟に……」
盾ぽい名前の人が喋ろうとしたのをソード・アハトさんが止める。
「ジジジ、想定内だ。予想外なのは、それが思っていたよりも早かった事なのだ」
キョウのおっちゃんも頷く。
「神国軍は、すでに『世界の壁』を越え、そこで陣地を築いているんだぜ」
へ? もう、そんなところまで来ているのか。
「その数、約千ほど、神国の精鋭なんだぜ」
千人か。多いのか少ないのか、分からないな。いやまぁ、人の数としては多いんだろうけどさ、この世界の戦争を行う人員としては、どうなんだろう。
「そして、その軍を率いているのはセシリア女王自らなんだぜ」
へ? セシリーが?
『まさか、誰かに操られているか、弱みでも握られているのか?』
しかし、キョウのおっちゃんは首を横に振る。
「セシリア女王の横には、あいつ……いや、勇者ジョアンの姿も、護衛の赤騎士、青騎士の姿もあるんだぜ」
な、なんだと!?
「そんな……」
ステラが驚きの声を上げる。あー、うむ。ここにステラを呼んだのは不味かったんじゃないか?
いや、待てよ。となれば、だ。
『キョウ殿、もしかするとセシリア女王は我々を助力する為に来たのでは?』
そうだよ、その可能性がすっぽり抜けていたよ。友を助ける為に立ち上がったと考えるべきじゃん。
しかし、キョウのおっちゃんは目を細め、首を横に振る。
「ランの旦那、信じたい気持ちはわかるが、それは無いと思うんだぜ」
いやいや、いやいや。
「それなら使者が来ていてもおかしく無いんだぜ。それに、『世界の壁』を抜けたところで陣を張る必要がないんだぜ」
いや、でも、なぁ。
『ならば、会って直接、話をするべきだろう』
「王様、準備もなく一人で向かうのは止めて欲しいんだぜ。この国は王様の国かもしれないが、皆の国でもあるんだぜ」
ぐ、ぐぅ。
「ジジジ、ならば、自分も行こう」
キョウのおっちゃんがソード・アハトさんの言葉を止める。
「剣の旦那には残って欲しいんだぜ。今、帝国を相手出来るのは剣の旦那と将軍のミカンだけなんだぜ」
ミカン将軍って、ミカン将軍って、いや、ここは笑うところでも、ないんだろうけどさ! 単純にクラスが将軍だから、ミカン将軍なんだろうけど、イメージに合わないなぁ。って、そんな場合か。
「ジジジ、ならば、この……」
ソード・アハトさんが盾ぽい名前の人を推す。しかし、キョウのおっちゃんは首を横に振る。
「剣の旦那、王様には俺が着いていくんだぜ」
キョウのおっちゃんが来てくれるのか。それは心強いな。
「ほっほっほ。なら、その留守の間をわしが頑張らんとのう」
フミコンが何故かソード・アハトさんの肩を叩いていた。まぁ、このお爺ちゃん少年、なんだかんだで頼りになるからな。
「わ、私も行きます!」
ステラも立候補する。あー、ジョアン君の事があるもんな。
「ダメ」
しかし、それを紫炎の魔女が止める。
「私が行く」
って、お前が来るのかよ。お前が来るなら、他、誰も要らないんじゃないか? キョウのおっちゃんも反対したいけど、反対出来ない、みたいな困った顔になってるじゃないか。
「王様、焦って、すぐにでも行きたいのは分かるんだぜ。でも、軍を率いて向かうべきなんだぜ」
うーん、それってどうなんだろうなぁ。下手に大人数で向かったらさ、向こうを刺激しないかなぁ。