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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
10 三神殿攻略
825/999

10-16 立ち塞がった最強の影

―1―


「それと、なんだぜ」

 どうした、キョウのおっちゃん。

「まずは冒険者の反乱の鎮圧が第一、その後、皆の前で――国民の前で、王様の考えを喋って欲しいんだぜ」

『いいのか?』

 女神に反旗を翻すんだぜ? そんな事を言ったら、反感を買うんじゃないか? 三つの神殿を攻略出来る最低限の人数が揃えば、俺は、それで……。

「いいんだぜ。そこで従えないようなヤツはすでに国外へと逃げているんだぜ」

 はは、そうか。創造主に逆らうなんて大それた事が出来るヤツらが、それだけ頼もしいヤツらが残ってくれたってコトか。まさか、キョウのおっちゃんだけとか、言わないよな?


『わかった。14型、行くぞ』

「了解です、マスター」

 14型が優雅にお辞儀をする。いつもと変わらない能面のような表情だが、それでも、何故か、その顔が誇らしそうなのが分かった。

「王様、まずは裏庭なんだぜ」

 おうさ、行くぜ。


 誰もいないかのように静まりかえった王城を走り抜け、裏庭へと出る。


 そこには、俺たちを待ち構えるかのように一人の姿があった。


「ら、ランの旦那、前言撤回なんだぜ」

 キョウのおっちゃんが慌てたように一歩後ろへと下がる。


「マスター!」

 14型が今にも飛びださんといわんばかりの勢いで拳を構える。


『二人とも下がっていてくれ』


 そこに居たのは……、


「虫」


 紫炎の魔女、ソフィアだった。


 紫炎の魔女がローブをはためかせる。その下には乾電池のような装置がくっつけられている。戦闘準備は万全ってワケか。


 そうか、そうだよなぁ。


 紫炎の魔女は天竜族、女神の一番の使徒だもんな。


 そうか、そうだよなぁ。


 女神と敵対した今、その使徒と敵対するのは必然。


 でもさ、でもさ、俺は、俺は、お前とも仲良くやれていたと思っていたんだぜ。


 紫炎の魔女が紫の杖を構え、こちらを睨むように見据える。


 戦うしか、戦うしか無いのか。


「虫、行くぞ」

 紫炎の魔女が口を開く。紡がれるのは炎を踊らせる呪文。紫炎の魔女が呪文を唱えるなんて、それだけ精神を集中させて、イメージを固めているって事か?


「死ね、エルファイアストーム」

 紫炎の魔女が静かに、何も感情を込めず、殺意の言葉を口にする。


 そして、俺を中心として爆発的で暴力的な炎の嵐が吹き荒れた。こんな、こんなの、城内で使う魔法じゃねえ! 下手したら下がって貰ったキョウのおっちゃんや14型も巻き込むぞ。


「やはり、無効化」

 紫炎の魔女がぽつりと呟く。あー、正確には吸収な、吸収。


『虫、何をぼけーっとしている』

『だから、虫では……はッ!』

 紫炎の魔女から念話が飛んでくる。

『お、お前』

『ふん、世界の敵(ワールドエネミー)を討つべく全力で魔法を放ったが、力及ばず敗れてしまった。これで、女神様への義理は果たした』

 お前、お前ってヤツはッ!


『そして世界の敵(ワールドエネミー)に捕まり、辱めを受け、弱みを握られ逆らえなくなった』

 いやいや、誰が辱めを与えたよ、俺、そんなことしねえよッ!


『ソフィア殿、しかし、死ねは無いと思うのだが』

 俺の天啓を受けた紫炎の魔女は口をへの字に曲げる。

『ふん、私の全力だ。ラン、お前を殺す気で放ったのだ。その程度も対処出来ないヤツが女神様に挑めるものか』

 こいつは、本当にッ!


『ラン、女神に挑むときは私も誘え』

 ホント、こいつってヤツは!

『いいのか?』

 紫炎の魔女は後ろを向き肩を竦める。

『ちょうど親に逆らいたい、反抗期なのだ』

 お前が助けてくれるなら、心強いぜッ!

『ソフィア!』

 俺は紫炎の魔女に天啓を飛ばす。


 紫炎の魔女が振り返る。


 俺は紫炎の魔女へと銀貨を一枚、放り投げる。

『いつものヤツだ』

「足りない」

 ああ、そうだよな。


『残りは成功報酬だ』

 紫炎の魔女がニヤリと笑う。そして、そのまま俺の方へと歩いてくる。


 そして、紫炎の魔女が拳を上げる。俺も倣うように小さなまん丸お手々を持ち上げる。拳とまん丸お手々をぶつけ、お互いに笑う。俺は笑っているのか分からないような顔だけどさ、それでも、こいつには伝わったはずだ。


「その時まで店にいる。魔法具が必要なら来い」

 紫炎の魔女はそれだけ言うと、城内へと戻っていった。ああ、了解だぜ。




―2―


 裏庭を抜けると、それなりの大きさの一戸建てが並ぶ区画に出た。あれ? こんな場所以前からあったか? いや新しく作った場所か。そうか、そういえば、この国も人口がガンガン増えている途中だったもんな。


 俺たちが新しい区画に入ると向こうから羽猫が飛んできた。

「にゃ、にゃう」

 そのまま俺の頭の上に乗り、寝息を立て始めた。こ、こいつは……。


「そっちの小っちゃな神獣さんには、ここを守る結界を張って貰っていたんだぜ」

 キョウのおっちゃんが羽猫を拝んでいた。な、何だとッ!?


 お前、いつの間に、そんな結界を張るとか新スキルをゲットしているんだよ。アレか、もしかして八大迷宮『名を封じられし霊峰』の攻略特典で進化したのか? 俺が気付かない間に進化してスキルをゲットしたのか?


「むふー、皆、ランちゃんが起きるのを待ってたんですよ」

 一際大きな建物からシロネも現れる。


『お前、どうやって?』

 シロネは大きなため息を吐く。

「ランちゃんが、むふー、神獣様を遣わしてくれたから、ミカンちゃんと一緒に乗らせて貰ってですよ」

 あー、そういえば、気絶する前に、そんなことを頼んでいたような……。


 で、そのミカンは?


「むふー、ミカンちゃんなら、冒険者の相手をしてますよ」

 シロネはやれやれって感じに肩を竦める。


 あー、うん。


 ミカンちゃんだもんな。


 って、待ったー。


 ミカンちゃん、ちゃんと手加減しているよな?


 殺したら不味いんだからな。


 これからの関係とか色々あるんだから、不味いんだからなッ!


 だ、大丈夫かなぁ。

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