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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
10 三神殿攻略
820/999

10-11 芋虫の成長の結果すら

―1―


 光に包まれた少女がキョロキョロと周囲を見回す。

「魔獣は何処ですか?」

 ここだよ、お前の目の前だよ。にしても、光に包まれていて大事なところが見えないな。ま、まぁ、別にみ、見たいわけじゃないけどさ。あ、ああ、うむ、まるで光の服を着ている感じだな。


「女神セラ様、それよりも何かお召し物を……」

 太陽の冠の少年が跪き下を向きながら、進言する。


 それを受けた女神が、指をパチンと鳴らす。瞬間、女神は青いヒラヒラとしたローブを着込んでいた。何というか、演出過多というか、この女神、随分と胡散臭いな。


「確かに。久しぶりで忘れていました」

 女神が喋る。その声、声色――何というか、綺麗な、何時までも聞いていたくなるような声なのに、それが恐ろしい。何だろう、作り物過ぎて、ヤバい感じがする。こんな存在が現実にいるはずがない、そう思っていたものが目の前にいるというか……。


 何か、何か、これは先手を打っておいた方が良くないか? 《危険感知》スキルは動いてないけどさ、ホント、何だろう、心の奥底から嫌な感じが……こういうのを冷や汗をかくって言うんだろうか、それとも虫の知らせか。ああ、危険な感じしかしないな。


 そうだ、《スキル合成》スキルで何か使えるスキルは無いか? 試すのは重要だよな。


 俺は《スキル合成》スキルを発動させようとする。しかし何も起こらない。えーっと、まさか、女神が目の前にいるから発動しない、なんてことは無いよな?

 って、もしかして、レベル1だからか? 1つのレベルで1個だけ合成出来るって感じなのか? MSPを800も使ったのに、1個だけかよッ! 現状で《二重分身》を消すのは……って《スキル分解》スキルがないから、解除も出来ないのか。詰んだ。あー、MSPを1,600も使ってレベル2にするか? むむむ。


「この者が、魔獣? 私の想像と違うようです」

 女神が俺の存在に気付き、こちらを向く。気付かれたか――って、いやまぁ、さっきから目の前にいたんだけどさ。どうする、どうする?


「まずは邪魔な物を」

 女神が再度、パチンと指を鳴らす。


 その瞬間、俺の隣にいた二人の分身体が消滅した。そう、消滅した。着ていた服やゴールデンアクス、千鬼丸などの武器だけを残して、消滅した。な、何をした?


「私の物も返して貰いましょう」

 女神が指を鳴らす。


 その瞬間、女神の装いが変わった。首からは羽衣のような布が、腕には肘部分まで伸びたロンググローブが、背には神々しいマントが、そして、女神の周囲には、女神を守るかのように杖や金属の棒や剣、槍が浮かんでいた。


 ま、まさか!?


 分身体の残骸にあった金剛鞭や女神セラの銀翼がない!


 俺が身につけていた女神セラの白竜輪やてぶくろ、コーデックスリング、真魔石の杖……無い、無い、無い、無いッ! 色々なものが、無いッ!


 まさか、女神セラ装備と迷宮王装備が奪われたのか? そうだよな、真紅妃やスターダスト、ガーブオブレインは身につけたままだしさ、女神の関連品だけが奪われたって感じか。


 お、俺が苦労して集めた物を……。


 ……いや、それよりも、だッ!


「俺の話を聞け、いや、聞いてくれ」

 まずは俺の目の前に女神本人が現れてくれたんだ、会話だ、会話。


「控えなさい」

 女神セラの言葉。その瞬間、俺の体に強烈な重さがのしかかる。な、お、おも、重い。単純に重いぞ、な、何だ、な、これ。


 俺は全力でのしかかってきた重さを跳ね返す。

「随分と鍛え、魔素の流れを見ているようですね」

 女神が楽しそうに微笑む。

「戦士、魔戦士、狂戦士のクラス、それに探求士、暗殺者、忍者……おや? 魔法使いと魔法士、魔導師のクラス、治癒術士、聖者、弓士、狩人、弓聖、まだまだありそうですね、侍、将軍、農士、木こり、修羅のクラスですか」

 こ、こいつ、まさか俺の情報を読み取っているのか?

「通常ではあり得ない全てのクラスが同時に発動しています。やはりバグが」

 女神は何やら楽しそうだ。いや、楽しい……じゃないのか? 何か奥底に狂気を感じる。何だ、何だ?

「レベルも筋力補正も体力補正も敏捷補正も器用補正も精神補正も99ですか。本格的にバグっている存在のようですね」


 いや、それだけじゃないぜ!


 筋力補正:99(104)

 体力補正:99(80)

 敏捷補正:99(56)+8

 器用補正:99(120)

 精神補正:99(88)


 俺が獲得した全てのクラスが、成長させたクラスごとの補正が『全て』足されているからな。そのクラス補正だけでも、結構な数値なんだぜ。補正の最高値が99だったからさ、ボーナスポイントが余ったのは、ちょっと残念だけどな。


 で、だ。


 この女神様はその、俺の成長の結晶を、バグ扱い、か。地道に頑張った結果なんだぞ。それをさ、過程も見ずにあっさりとバグ扱いとか許せねぇな。いや、でも、ここは、まだ怒る場面じゃない。


「すまない、話を聞いて貰えないだろうか?」

 しかし、女神は俺の言葉を無視する。こ、このぉ。前言撤回したくなるぞ。

「私の威光が効かず、バグったステータスを持つ魔獣……やはり、この世界は綻びが起きているようです」

 起きてねぇよ。なんだか、この女神、思考の海に沈んでいるというか、俺が眼中にないようだな。


 力業でこちらを振り向かせるか? いや、でも、女神の力が分からない現状で下手な事をするのは……。

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