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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
2  世界樹攻略
82/999

2-73 星獣

-1-


「ラン殿は、この後どうされるのだ?」

 宿、侍……だよなぁ。

「と、すまない。パーティを組んだままだった」


【ミカンさんがパーティを解散しました】


 ミカンさんから見えていた光のオーラが消える。ああ、護衛も終わったしね。仕方ないね。

『まずは泊まるところを決めて、それから侍のクラスの取得に動きたい』

「うむ、それなら同じ方向だな」

 ほほう。

「私がこれから行くところは侍のクラスを取得出来る道場なのだが、そこで宿泊も出来るのだ」

 ふむふむ、今度は道場か。

『案内して貰っても良いかな?』

「うむ、もちろんだ」

 ミカンさんの案内で道場に向かうことになるようだ。


 しばらく里の中を歩いていると、突然、ミカンさんが声を上げた。

「あっ!」

 ど、どうした?

「そういえば、この里にも星獣様がいるのだが……」

 え? 居るの? 俺みたいなのが。

「うむ。守護星獣様だ。良かったらこれから会われるか?」

 ほほう、興味はあるな。……って、どう見ても今見えているのが、その守護星獣様だよなぁ。さっきから気になっていたんだよ。


 俺の視界前方にはそれなりの大きさの城があり(もちろん天守閣のある和風の城だ)その上にもふもふな羽の生えた大きな猫が大あくびをしてくつろいでいた。どー考えても、アレが守護星獣様だよなぁ。しかしまぁ、城の中には将軍様でも居るのだろうか。

「うむ、見えていると思うが、里長宅の上に居られるのが、このフウキョウの里の守護星獣様なのだ」

 って、アレが里長宅かよ。里長ってレベルじゃ無いぞ。


 あ、そうだ。あの羽猫を鑑定してみよう。この距離でも届くかな。見えているしいけそうだな。城の上のもふもふ羽猫に視界を合わせて調べるっと。


【名前:ファー・マウ(来栖 二夜子)】

【種族:神獣】


 ふぁ? なんだ、え? この名前? まさか俺以外の転生者……なのか? というか、神獣ってなんだ、神獣って。と、そこで頭に声が響いた。

『そこの無粋な者は何を調べたん?』

 こいつ直接脳内に……びっくりするじゃないか。しかし羽猫は大あくびをしていた。いやいやいや、この羽猫が念話を使ったのか? 先程から眠そうに欠伸ばかりをしているんですけど。

 というかね、名前がもろ和名じゃん。まさかのここで同郷の者に出会えたのか? うおおおぉ、色々と会話がしたいぜ。転生者って、俺一人じゃ無かったんだな。俺一人だけ転生者でチートだぜ、みたいなのも憧れるけど、やっぱさ、正直、ぼっちで寂しかったもんなぁ。


 すぐに城へ向かわないとなッ!




-2-


 城の上に乗っている羽猫を見る。でけえな。尻尾を含めない全長で10メートルくらいか。城の横幅は200メートル、高さが20メートルくらいだから、城に寄りかかったらその半分くらいまで届くってことだよなぁ。ホント、でけぇな。

『先程は失礼した』

 とりあえず、念話で鑑定したことを謝っておく。うーん、最近、鑑定がばれてばかりな気がする。それとも以前もばれてたけど気にしないでくれていたのかなぁ。それだとホント申し訳なさ過ぎるんだが……鑑定の使い勝手が悪いです。

『別に良いよー。で、何を調べたん』

 何だか軽いなぁ、この羽猫。

『名前を』

『名前だけで良かったん? それくらいなら普通に聞けば答えたんよ』

 うーん、やっぱり鑑定って名前以外も調べられそうな感じだよな。でも、俺の鑑定だと名前しか調べられないしなぁ。どうなっているんだろう。

『聞きたいのだが、来栖二夜子というのが、あなたの名前か?』

 羽猫が首をかしげる。

『何だか、懐かしい感じがする単語やね。でも、うちの名前はファーだよ』

 あら? ハズレか。てっきり俺と同じ転生者かと思ったのに、思ったのに。同族に会えたと思ったのに、あー、クソ、期待したのに。同じ星獣で、名前が和名だったら、普通はそうだと思うじゃん。同じ転生者だと思うじゃんよ。いや、まだだ。隠しているとか、とぼけている可能性もあるし、まだ諦めない。

 俺は隣にいるミカンさんに聞こえないように念話を目の前の羽猫にだけ絞って飛ばす。

『あなたは転生者か? ラーメンやカレーという食べ物を知っているよな?』

 更に羽猫が首をかしげる。

『何の事なん?』

 嘘をついているとか、誤魔化しているという感じじゃあ無いな……。単語なら微妙に反応するかと思ったけど、そんなそぶりも無いし――というか、よくよく考えれば隠す意味なんて……無いよな。クソ、ぬか喜びかよ、ぬか喜びかよッ!

『いや、何でも無い。名乗るのが遅れたな、自分は星獣のランという。初めまして……だな』

 はぁ……。マジ、はぁ……だは。期待していた分、ショックが大きいぜ。

『え? この念話って、もしかして、その……そこの芋虫なん?』

 芋虫で悪かったな。というか気付いてなかったのかよ。

『てっきり、ミカンちゃんがテイムした魔獣かと思ってたん。ミカンちゃん趣味悪いなーって思ってごめんなー』

 おい、ちょっと待て。趣味悪いって何だよ。ふざけんなよぅ……。

『普通に考えたら、侍ってテイムスキルないもんなー。テイムは無かったんね。ごめん、ごめん』

 うるせぇよ。俺はショックが大きくてやさぐれているんだい。

「い、いえ。こちらのランさんは星獣様でありながら冒険者もやっているのです。同じ星獣様同士なら話も弾むかと思い来て貰ったのですが」

 ああ、弾んださ。超弾んだよ……とほほ。

『なるほどなー。うちは自分以外の星獣様には初めてやねー。星獣様って基本移動しないからなー』

 ま、俺は特殊なんだろうさ。

『うん、でも? うちがこの里の守護星獣様になったのも最近やったね。新参新参。なんと、うちも移動していたん!?』

 うん?

「最近と言われましても、この里が灰燼に帰してから8年もの長きに渡り常日頃守って戴いておりますから。私どもの感覚では充分に長き時です。ファー様はフウキョウの里に無くてはならない存在です」

 ううん?

『そっかー、ありがとなー』


 それからミカンさんはファーさんに今までの旅の内容を報告しているようだった。うーん、このファーという羽猫星獣は、この里全体のお母さんみたいな存在なのかもな。というか、ファーさんと喋っている時のミカンさん、口調が違うな。こっちの方が素に近いのかねぇ。

 ある程度、話が済むと道場へ帰るということになった。


『またなのねん、ランさん。同じ星獣様同士、また話そうなー』

 羽猫が肉球のついた手をぱたぱたと振っている。仕方ないので俺も手を振り返す。

『またな』

 見ると、俺がお別れの挨拶をしているのに、ファーは大きな欠伸をしていた。……この羽猫は。


「では、道場に案内しよう」

 今度こそ、ミカンさんの案内で道場へ。


 あ、その前にお団子屋さんでお団子を食べちゃ駄目かな? あ、はい、駄目ですか。ああ、味が気になるなぁ。

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