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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
10 三神殿攻略

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10-5  女神の決定芋虫の反乱

―1―


「この度、ついに八大迷宮が全て攻略されました」

 女神の口が動き、言葉が続く。もしかして、地上の全てに中継しているのか? まぁ、各地に巨大な女神様の映像が現れているんだ、そうなっていてもおかしく無いか。


『驚いたでしょう。迷宮王の正体は実は私です』

 うお!? どアップの女神の顔が喋った。背景として映し出された各地の映像では別の事を喋っているみたいだけどさ、これはアレか? 女神からの内密な話なのか?

 で、迷宮王の正体が何だって?


「申し訳ありません、女神セラ様。この者は迷宮王を知らないようです」

 太陽の冠の少年が恐る恐るという感じで口を出す。いやまぁ、名前とか伝言くらいは知っているよ。

『どういうことです?』

 女神が驚いている。何だろう、余り超越者って感じがしないな。

「迷宮王ユニットは千年の時の長さに耐えられなかったようです」

 ん? もしかして、各地の迷宮王の骨って、そうか、そういうことか。本来は各地の迷宮の最後で待っているナビゲーター役だったんじゃないか? しかし、攻略者は長く現れず朽ちてしまった、と。


『千年! 千年も攻略者が現れなかったのですか?』

「はい、女神セラ様の眠りは千年以上になります」

 女神と太陽の冠の少年が会話を続ける。何だろう、フィルター越しというか、遠距離通話をしている感じだな。向こうから、こちらは見えていないんだろうか。


『まあよいです。ところで、迷宮攻略者は何者ですか?』

 何だろう、この女神セラって偉ぶっているというか、偉い人はこう喋るだろう的な感じで無理して言葉を作っているような、そんな感じがする。


「星獣になります」

『な、なんですと。新しき人が無理だったとしても、あの者達の生き残り――魔族ですらないのですか。まさか、魔族は絶滅したのですか?』

「いえ、魔族はまだしぶとく生きながらえています」

 なんだか、魔族にも頑張って欲しかったみたいな言い方だな。にしても、この女神って、地上の事を何も把握していないのか? てっきり何でも見通している的な、いかにも神って存在を想像していたのに、意外と普通だな。


「あんなのを僕の星獣と同じにして欲しくないな」

「言うなれば、アレは意志を持った魔獣に過ぎぬよ」

 あれれ、俺、ぼろくそに言われてないか?


『まさか、意志を持った魔獣。そんなイレギュラーな存在に攻略されたというのですか……』

 イレギュラーで悪かったな。


 と、そういえば、14型さんがずいぶんと静かだな。14型さんは魔族に味方していた側だろうから、女神が現れたら暴れるかと思ったのに、意外だな。

 俺が14型の方を見ると、14型は口から煙を吐いてフリーズしていた。


 ……。


 えーっと、あのー。一気に沢山のパーツを食べ過ぎて食あたりでも起こしたのか? だ、大丈夫だよな? 壊れてないよな?


『なるほど、全ての迷宮の攻略に千年もかかり、そして攻略したのは魔素から湧き出た方向も定まっていない魔獣ごとき、と。あなたたちは、そう言うのですね』

 ホント、俺の評価、ぼろくそだな。ごときって何だよ、ごときって。そのごときが迷宮を攻略したんだから凄いじゃん。


『天井から吊したバナナを猿に取らせようとしたら、やる気を見せず、バナナが腐り、しかも沸いた蝿に横取りされた、今、私が感じているのはそんなイメージです』

 ずいぶんと具体的だな。猿の実験とか、この女神、存外俗物的な事を知っているなぁ。


『いいでしょう』

 女神が呟く。


 それに合わせて地上に映し出された女神の影が動き始めた。女神が杖を持ったまま両手を天に掲げる。

「聞こえますか? 聞こえますね」

 おー、外の長い演説が終わったのかな。女神の会話が外部に切り替わったみたいだな。


「あなたたちは使命を果たしました。役割を終えたのです」

 ん?


「これより30日後、大雨を降らせ、地上を洗い流します」

 ん?


「全てを洗い流し、地上を再生します」

 ん?


「あなたたちは役目を終えたのです。使命を果たしたのです」

 んん?


「ここまで生きながらえたことを創造主たる私に感謝し、そして眠りなさい」

 んん?


 そこで地上に現れていた女神の影は消えた。こちらに表示されている顔のアップだけは、そのままだ。


 ちょっと待て、ちょっと待て。


 今、この女神、なんて言った?


『ということです。30日後、七日七晩雨を降らし続け、地上を沈めます。ここまで間違った方向に進んでしまった以上、作り直した方が早いでしょう』

「わかりました」

「了解です」

「承りました」

 太陽、星、月の三人がさらに深く頭を下げる。


 ちょっと待て、ちょっと待て。おい、こいつ何て言った?


 ふざけるなよ。


 何を言ってやがる。


 世界を滅ぼすって言っているのか?


 ……。


 落ち着け、落ち着け。まずは会話だ。真意を探ろう。

『待って欲しい。今、世界を滅ぼすような事を言ったように聞こえたのだが』

 俺の天啓に三人が反応する。

「まだ居たのか。滅ぼすのではない、再生させるのだ」

 いやいや、同じコトだよな?


『あなた方はそれで良いのか?』

「女神セラ様の決定ならば当然だろう?」

「おかしなヤツ」

「女神セラ様のお言葉が届かぬとは、本当にこの世の生き物なのか?」

 ダメだ、話にならない。


 俺の天啓に反応したのは、この三人だけ。この場に居ない女神には俺の天啓が届かなかったようだ。となれば……。

『女神と直接会話がしたい。こんな馬鹿な事は止めるように頼みたい。取り次いでもらえないだろうか?』

 何とか女神と会話して、そんな馬鹿な真似は止めてもらわないと。俺がこの世界に来てから、どれだけの人にお世話になったと思っているんだよ。それが女神の気まぐれで全て洗い流される? 冗談じゃない。


「何を言っている。これは決まった事だ。受け入れろ」

「こいつ、本格的に異常だよ」

「女神セラ様に創られた感謝を忘れておるな」

 くそ、くそ。こいつら話にならない。


 何なんだよ!


 何なんだよ!


 おかしいだろ!


 おかしいだろ!


『ふざけるなッ!』

 俺は周囲に天啓を飛ばす。しかし、三人は動かない。


「女神セラ様の御前なるぞ」

 知るか。勝手すぎだろ。


 この世界は女神が創った世界なのかもしれないけどさ、でも気にくわないから壊して、洗い流してやり直す? 勝手すぎるだろ。


『どうしたのです?』

 と、そこでやっと異常に気付いたのか、女神からの反応が返ってくる。どうしたも、こうしたもあるか。お前の決定が気にくわないって言っているんだよ。


 俺は真紅妃を持ち、構える。


「先程の魔獣が、こちらに襲いかかろうとしているのです」

『なるほど、その魔獣は、私の言葉が理解出来ないほど、認識出来ないほど単純な生き物なのですね。そんなものが迷宮を攻略したとは……これはシステムを再度、考え直しですね』

 こいつは、本当に、本当にッ!


 いいだろう、まずは目の前の三人からだな。お前らをとっちめて女神への道を聞き出してやる。その後、女神をやっつけてごめんなさいさせれば、全て丸く収まるな。

 この世界を洗い流して終わらせる? そんなこと、させるかよッ!

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