10-4 芋虫の質問女神の降臨
―1―
「これが世界の真実」
「世界の真実」
「そう世界の真実だ」
創られた世界が真実だってコトか。
「女神セラ様の降臨までは、まだ時間がある。何かあれば聞こう」
「無駄だと思うけどなぁ」
「このような考える力も持たぬやからなど」
凄い馬鹿にされている気がする。悪意を感じるぞ。
「しかし、迷宮踏破者だ」
太陽の冠の少年が月と星を諫める。太陽がリーダー格なのか?
まぁいい、質問に答えてくれるってのなら色々聞くぞ。これで今までの謎が解けるのだろうからな。
『お前達は何者だ』
そうだよ、そこからだよ。
「無礼な!」
月の冠の少年が唾を飛ばしそうな勢いで怒り出す。何というか、こいつら器がちっちゃいよな。
「よいではないか。私たちは女神セラ様の使徒」
「そうだよ、偉いんだよ」
「この世界を監視する役目を与えられた使徒よ」
お、おう、自慢気だな。って、ん?
『監視するのか?』
管理じゃないんだな。
「そう、監視するのだよ」
「僕たちが手を出すと、正しく進化しない可能性があるからね」
「しかし、ある程度は方向を調整するがな」
その方向調整とやらが冒険者ギルドってコトか?
『八大迷宮とは何だ?』
俺の天啓に三人は驚いた顔をする。
「それすら伝わっていなかったのか?」
「いや、わたしは冒険者ギルドを使って促しておるぞ」
「でも伝わって無かったみたいだね」
そうか、冒険者ギルドはこいつらの組織だもんな。冒険者ギルドを使って何か企んでいたのか。それがさっきの方向調整とやらか。
「良いだろう、説明しよう。八大迷宮とは新しき人と魔族の成長を促す場だ」
「全ての迷宮が攻略された時、女神は降臨される」
「魔族は女神に挑む為に、新しき人は女神に願う為に、そして、わたしらはこの世界の真実を教える為に」
へ、へぇ。よく分からんが、八大迷宮を全て攻略したら、その女神が会ってやるよって感じなのか。って、ことは、この後、女神と会えるんだな。ん? その中に魔族も含まれるのか? 敵対していたんじゃないのか?
『では迷宮王とは?』
そうそう、迷宮王って存在も謎なんだよな。八大迷宮を作ったのは迷宮王なんだろ? 女神との関係とか、迷宮ごとに骨が残っているコトとかさ。
「迷宮王ユニットに関しては女神セラ様より説明があるだろう」
「うーん、教えてもいいんじゃない?」
「その判断をする権限はわたしらにはないぞ」
迷宮王ユニット? うーむ、謎が増えた。ま、まぁ、女神が自ら教えてくれるってのなら、待つか。
『あの機械のメイド達は何だ?』
そうそう14型だけかと思ったら沢山いるしさ。しかも仲違いしているぽいんだよなぁ。
「あれら、機械人形は魔族が愚かにも女神セラ様に挑む為に作った人形だ」
「身の程を知らないよね。力量差ってのが分からないのはかわいそーだよね」
「人に近く精巧に作りすぎた故か、反旗を翻し、あのようにわたしらの側についたのよ。機械の方が魔族連中より賢いようだな」
なるほど。ただ、話の内容からすると14型は魔族側、あいつらは女神側ってコトみたいだな。
『何故、メイド姿なのだ?』
「知らんよ」
「さあね」
「作った物の趣味であろう」
あ、はい。趣味、なんだ。ま、まぁ、人の趣味をとやかく言うのは良くないな。
『クロアは何者なんだ?』
しかし、俺の天啓を受けた三人は首を傾げる。
「クロアとは誰だ?」
「誰のこと?」
「分からぬ」
あれ?
俺は背後で膝をついているクロアの方を見る。ここに連れてきたのってクロアだよな?
「ああ、あれか」
太陽の冠の少年が納得いったとばかりに頷く。
「そうそう、そうだった、そうだった。あれは僕が世界樹で死んでいたのを拾ってきたんだよ」
「うむ。それを私の再生の力で甦らせたのだ」
「余り身動きが取れぬ、わたしたちの代わりに迷宮の管理と修復を任せておる」
へ?
「その為の力と道具は与えているんだよ」
ちょっと待て、ちょっと待て。死んだ?
そ、そういえば、世界樹の竜の間にはクロアさんのマントが残っていたよな。そ、そんな馬鹿な。おいおい、シロネになんて言えばいいんだよ。お前のお祖母ちゃん、死んでた。アンデッドだったとでも伝えるのか。
あー、くそ。各地の八大迷宮で出会った理由って、それだったのかよッ! 俺は普通に生きて冒険者をやっていたんだとばかり、あー、もうッ!
「待てっ!」
と、そこで太陽の冠の少年から制止の声が発せられる。
「いよいよなんだね?」
星の冠の少年の言葉に太陽の冠の少年は頷く。
「女神セラ様降臨される」
いよいよか。
いよいよ、その女神とやらとご対面かッ! あー、くそ、色々、文句を言いたいのに、まとめ切れていないぞ。あー、うー、やー、たー。
―2―
周囲の景色が変わる。
真っ白な世界が終わり、周囲に各地の地上の様子が映し出される。何だ、何だ? 全面パノラマというか、何というか。あそこに見えるのは帝都だよな? 神国の首都クリスタルパレスの景色も見えるぞ。映し出されているのは各地の、各国の首都か?
そして、その各地の映像に大きな人影が現れる。
首都を飲み込まんとするくらいの巨大な人影。それはやがて色を持ち、姿を現す。女神の羽衣を身に纏い、透き通るような長い髪、機械によって作られたかのような整いすぎた容姿、月星太陽をかたどった杖を持つ少女、それは――それが女神セラだった。意外に幼い容姿なんだな。
女神セラの降臨にあわせ、俺の目の前にいた三人が玉座から降り、膝をつく。
「後ろを振り返れ」
太陽の冠の少年が俺に命令する。へぇへぇ。
俺が振り返ると、そこには女神セラの顔があった。うお、顔のアップ映像かよ。びっくりするなぁ。
そして、女神が、各地の女神が動く。
「私は女神セラ。この世界の創造神です」
そう、ついに俺の前に女神が姿を現した。