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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
9  名を封じられし霊峰攻略
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9-56 名を封じられし霊峰右側

―1―


 渡り廊下を駆け抜ける。

「主殿、私がっ!」

 ミカンが渡り廊下の先に取り付けられた扉を体当たりするようにこじ開ける。そして、片手で扉を押さえ込み、こちらへ残った片方の手で合図する。そこへシロネが滑り込む。俺たちも急がないとな。

 俺は14型、羽猫とともに駆け、扉の中へ入る。それを確認したミカンが堅く重そうな扉を閉める。その瞬間、扉に何かが当たった衝撃と音が広がる。さすがに、あの矢でも扉は貫通出来ないか。ふう、間一髪と言ったところか。でもさ、これ、帰りが困るよなぁ。


「な、な、な、な」

 そんな事を考えながら扉の方を見ているとシロネが慌てた様子で俺を叩き始めた。いやいや、シロネさん、何かね?


 俺が振り返ると、そこは……竜の巣だった。しかも奇妙な姿の竜達の巣だ。


 柱が立ち並ぶ大広間に、10メートルサイズの2本足で立っている竜達がいる。手には剣と盾を、そして体には金属性の胸当てをつけ、兜もかぶっている。何だ、何だ? 羽の生えた蜥蜴人が巨大化したのか? まさに、そんな感じだよな。

 そんなサイズの竜達が10、20……いや、そんな数ではきかないぞ。多すぎるだろ。こ、ここはこいつらの国なのか? 城を根城にして生息しているのか?


 うじゃうじゃと――数え切れないくらいの数がいる竜人たち。のほほんと歩いていた、その1人がこちらに気付き、奇妙な鳴き声を上げて騒ぎ始める。何を言っているのかわからねぇ。異能言語理解スキルがあるはずなのに理解出来ないってコトは、言葉じゃないのか? 武装している姿を見てさ、それなりの知能があるのかと思ったんだが、こいつらの行動を見ていると、どうにも知性が感じられないな。


 ……。


 もしかして、剣や盾、鎧兜で武装しているように見えるけどさ、そういう姿で生まれる魔獣なのか? この世界だと、それがあり得そうだから怖いな。


 シロネが若干引きつった顔を作りながら、俺に話しかけてくる。

「むふー、ランちゃん、戦うしか無さそうですねー」

 そうだよなぁ。相手が何を言っているか分からない時点で会話が成り立つとは思えないしさ、こいつらにそんな知性がありそうにないもんな。


 戦うしか無いか。この数を相手するのは、骨が折れそうだ。




―2―


 俺はショットガンのように矢を放ちながら戦場を駆ける。ここが無駄に広くて良かったよ。何というか、練武場というか、こいつらと戦う為に作られた場所って感じの作りだもんなぁ。

 シロネが短剣とその動きで竜人を翻弄し、そこを狙ってミカンが長巻で斬りかかる。ミカンが長巻を使い竜人の足を輪切りにする。滑るように体勢を崩し倒れ込んできた竜人の頭に、ミカンが、再度、長巻を――回転するように上段から恐ろしい勢いで叩き込まれた長巻は、竜人の兜ごと頭を真っ二つに切断した。

 シロネは、ミカンがトドメを刺したのを確認し次の竜人へと向かう。2人で連携しながら上手く戦っているな。


 14型は1人で戦場を駆け抜け、無造作に飛び上がっては、竜人の体を凶悪な篭手で殴りつけ、鎧を凹まし、剣が迫れば、それを水平に叩き付けへし折る。うーむ、あっちはあっちで無双しているなぁ。向かうところ敵無しって感じだ。


 俺の目の前の竜人が大きな音を立てて仰向けに倒れ込む。その竜人から撃ち込んだ矢を引き抜き、次の相手へと向かう。うむ、サイズがサイズだから槍より矢の方が効率がいいな。

 さらにッ!


――[アイスストーム・ダブル]――


 かなり離れた位置に氷の嵐を発生させる。生まれた二つの氷と風の竜巻が竜人たちを飲み込み、その姿をズタボロに――そう、ぼろ雑巾のような姿へと変えていく。広い場所というのが悪かったな、お前達の、その無駄に多い数が徒になったぜ。


 ……。


 氷の嵐に巻き込まれた竜人達が、嵐の壁を抜け、よろよろと動く。あ、でも生きている。意外とタフだなぁ。


――[アイスストーム・ダブル]――


 ま、一撃で倒せないならもう一発撃ち込むだけだな。


 氷の嵐がズタボロになりながらも、ヨロヨロと武器を構えていた竜人達を飲み込み、今度こそ絶命させた。


 ん?


 奥へと放った氷の嵐の一部が、まるで見えない壁でもあるかのように動きを邪魔されている。何だ、何だ、あそこに何かあるのか? ま、まぁ、魔法を放ち続けて数を減らせば分かるか。

 にしても、アイスストームを1回放っただけでは倒せないのにさ、それを一撃で倒しているミカンと14型は、何なんだって話だよなぁ。こいつら、強くなりすぎだぜ。ホント、味方で良かった、頼りになるなぁ。あ、シロネさんも助かってます。


 羽猫も元の大きなサイズへと戻り、その大きな足で迫ってきた竜人達を押さえ込み、光輝くブレスを吐き出す。これだけ広いと羽猫も大活躍だな。大きくなった羽猫のサイズだとさ、竜人が子どもみたいに見えるな。ホント、こいつデカくなったよなぁ。


 しかし、あれだ、蒸し暑いな。外が溶岩の海だもんな。俺ってば、熱いの苦手だからさ、早くちゃちゃっと倒して涼みたいなぁ。水が欲しい、水が。


 ……って、アレ?


 よく考えたら、今って雨期だよな?


 外――ここって、山の噴火口の中だよな? 天井というか、上は穴が開いていて吹き抜け状態だよな? 雨が入り込んでいなかったってさ、おかしく無いか? まだ雨期が終わるほどの日にちは経ってないはずだ。


 どういうことだ?


 もしかして、ここはナハン大森林じゃない? あの鳥居の転送でよく分からない場所に移されている可能性がありそうだな。うーむ、火口が、上がどうなっているか、飛んですぐに確認してみれば良かったなぁ。まぁ、でもさ、まずは迷宮の攻略だよな。確認は後だ、後。




―3―


 戦い続け、竜人の数を減らしていく。数が減ってきて、余裕が出てきたところで、シロネの提案を受け休憩を挟みながら戦うスタイルへと変更する。シロネ、ミカンが疲れた時は後方で休んで貰い、その間は俺と14型、羽猫が数を減らす。シロネ、ミカンが復活したら、皆で協力して数を減らす――って、あれ? 俺、休憩してないじゃん。ま、まぁ、疲れてないから、いいか。


 ミカンの一撃が最後の一匹を切り伏せた。いや、竜人は、後、一匹残っている。そいつは一際豪華な鎧兜を身につけ手に巨大な槍を持ち、見えない壁に守られた玉座から、こちらの戦いを――配下が1人、また1人と数が減っていくのを静かに眺め続けていた。そして、ミカンが最後の一匹を倒した事で、そいつが動き出す。


 配下の竜人を全滅させたからか、見えない壁が消える。


 竜人たちの王のような風格を持った最後の一匹が槍を片手に立ち上がる。


――《飛翔》――


 俺はそれを逃さない。


――《集中》――


 入り口にいた炎を纏った騎士鎧の時みたいに外したら格好悪いからな、集中して狙うぜ。


――《インフィニティスラスト》――


 真紅妃から放たれた無限の螺旋が竜人の王を襲う。


 螺旋を描いた真紅妃は装飾の施された豪華な鎧に大穴を開け、その中に隠されていた魔石を打ち砕き喰らう。

 竜人の王は槍を持って立ち上がろうとした姿のまま絶命し、そして、そのまま玉座に座り込んだ。


 一撃だぜッ!


 敵を前にしてのんきに立ち上がろうとしているのが悪い。動き出して武器を構えるまで待つとか、あり得ないよなぁ。死因、動こうとしたからって感じだな。

 配下が倒されているのを見ているはずなのにさ、戦う準備もせず、のんきに座っているとかさ、ダメだろ。配下が全て消えてから動き出すとか、機械的というか何というか、これがさ、こいつらが知性を持たない魔獣って証拠なんだろうな。


 竜人達の王を倒したからか、倒れていた竜人達が全て煙のように霧散し、魔素と化していく。そして、その魔素が蠢き集まり、一つの小さな犬の像へと姿を変えた。えーっと、よく分からないけど、迷宮攻略の為のアイテムになったって感じなのか?

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