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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
9  名を封じられし霊峰攻略
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9-33 最後の迷宮に挑もう

―1―


 ちなみにだが。

『14型、部屋の鍵は一つだけのようだが、良かっただろうか? 場合によっては女将にもう一部屋用意してもらうのだが』

 俺の天啓を受けた14型は無表情のままこちらを見る。


 見続ける。


 ……。


 あ、あの、無言の圧力が怖いのですが……。


「マスター、今更だと思うのですが、気持ちだけ貰っておきます。それよりもマスターの頭の上で水を滴らせている小賢しい生き物に拭く物でも渡した方が良いと思うのです」

 ん?


「にゃ、にゃふぅ」

 ん? んん?


 あー、そうか。


 俺自身は水を弾くし、14型も、そのメイド服の謎の力か、雨をものともしないけど、羽猫は違うもんな。俺の頭の上だから見えないけど、お前、びしょ濡れか。

 すまん、すまん。


『すまない、女将、自分の頭の上のこやつの為に何か拭く物を借りられないだろうか?』

 俺の天啓を受け、鍵を置いてすぐに奥へと消えていた女将が布きれを持って戻ってきた。

「ああ、すまない、すまないねぇ。そういえば今は雨期、私もうっかりしていたよ」

 女将さんが持ってきてくれた布を14型が受け取る。

「さあ、私にその姿を無慈悲にさらすのです」

 14型が俺の頭の上の羽猫を持ち上げる。

「うにゃにゃ!」

 羽猫が布にくるまれ14型にもみくちゃにされている。ホント、お前ら仲がいいよな。


『女将、かたじけない』

 俺の天啓を受けた女将は照れくさそうに手を振っていた。

「いいよ、いいよ、サービスしとくよ」


 用意された部屋でふかふかのベッドに寝転がり、そのまま眠りにつく。芋虫スタイルだぜ!

 にしても、雨期で閉めていたって割には、ちゃんと手入れされているんだな。




―2―


 翌朝になり、宿にミカンとシロネがやってきた。

「むふー、やはり、こちらですねー」

「主、こちらか」

 コートをすっぽりとかぶったシロネとは対照的にミカンはずぶ濡れだ。宿の外で体を震わせて水を弾き飛ばしている。そうしていると猫みたいだな。


「ランちゃんもミカンちゃんも雨除けのコートは持ってないですよね?」

 雨除けのコート?

「す、すまぬ。普段は外に出ぬ為、用意していなかった」

 ミカンは何か知っているようだな。

「むふー」

 シロネがむふーと喋りながら大きなため息を吐いていた。むふーするか、ため息を吐くかどっちかにしなさい!

「分かっていましたが、雨期の用意をしていなかったんですねー。むふー、まぁ、私も、その為に実家に戻ったので、昨日は用意していなかったのですから、皆さんと一緒なんですけどね」

 シロネが苦笑していた。ふむ。予想するに雨の中でも動けるコートなのかね。

「むふー、雨期対策の魔法具は色々ありますが、今回、私が用意したのは雨除けのコートですねー。ちゃんと、皆さんの分を用意してきました」

 お、さすがは実家がお金持ちなシロネさんだぜ。俺もさ、フルールに頼んで傘を作るとかせずに、普通にこの世界らしい魔法具を作れば良かったのかなぁ。いや、あれだよ、ちょっとした俺の知識を生かそうと頑張った結果じゃん。そう、俺は悪く無いんだ。


 14型に雨除けのコートをかぶせて貰う。

「にゃ、にゃー」

 頭の上の羽猫が騒ぐ。羽猫が頭の上に乗っかったままだったか。まぁ、そうしてれば濡れないんだから、我慢しろよ。

「小賢しい生き物にはちょうどよいのです」

 はいはい。


「ふむ。シロネ殿、わざわざすまぬ」

 ミカンも雨除けのコートをかぶる。

「ふむ。一応、礼を言っておくのです」

 14型もシロネから受け取った雨除けのコートをかぶる。えーっと、礼を言うって、お前、礼を言っていないよな? 言うって言って言ってないよな?


「むふー、八大迷宮『名を封じられし霊峰』までは2日ほどかかると聞いてます。急ぎましょう」

 へ? あれ? すぐ近くだって聞いていたような気がするんだが、2日もかかるのかよ。雨期って期間が限られているんだぞ。不味いじゃん。


『分かった、急ごう。女将、世話になった』

 俺は宿の中の女将にも天啓を飛ばす。

「頑張るんだよ」

 ああ。


 さあ、迷宮へ向けて出発だぜ。




―3―


 矢のように降り注ぐ雨を弾き飛ばしながら進む。足下はぬかるみ、俺の短い足では《飛翔》しないとキツいぜ。

「むふー、ランちゃん、それ、雨が、水が、周囲にまき散らされるので止めて欲しいですねー」

 あ、すまぬ。


 雨によって視界の悪い中、シロネの案内で東へと進んでいく。雨が降ってなければ、ここからでも霊峰の姿は見えるんだろうけどなぁ。事前に入り口まで進んで、《転移チェック》をしておくべきだったな。いや、だってさ、俺、もっと近いものだと思っていたからさ。


 旅に慣れ、運動能力の高い俺たちだからか、この悪天候の中でも異常な速度で霊峰へと進み続けることが出来た。

 途中、木と木の間に四隅が紐になったタープテントのような物を作り、その下で一泊し、さらに進み続ける。

 そして、ついに霊峰の麓に到着した。


 普通は何処からが霊峰なのか、迷宮なのか分からないと思うのだが、それは違った。まるで壁でもあるかのように白い結界がその場を覆っている。なるほど、この結界の先が八大迷宮『名を封じられし霊峰』か。

 となると、この結界があいている場所を探すべきか。


 さあ、ついに最後の八大迷宮だな。

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