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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
9  名を封じられし霊峰攻略
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9-27 ホント知ってたから

―1―


 魔法の槍に貫かれたトカゲが魔石だけを残して砕け散る。名前付き(ネームドモンスター)でも楽勝だったな。

「ノアルジーお姉様、さすがの威力です!」

 シリアは魔法の威力に驚きながらも褒めてくれる。そうだろう、そうだろう。


「お姉様、あの石像に護符が生まれます」

 ほうほう。


 周囲に漂っていた魔素が羽の生えた少女の石像の手の中へと集まっていく。そして、何かを形作っていく。ほほー、こんな感じで護符が作られるのか。


 で、だ。


「そろそろいいかな?」

「ノアルジーお姉様、どうされました? 護符を取らないのですか?」


 俺の背から分身体を下ろし、立ち上がる。

「お姉……さ、ま?」

『普通は反する属性の魔法を使うことが出来ないと知っていたか?』

 そうなんだよなぁ。さて、どう反応するかなぁ。俺、シリアの目の前で、こうも露骨に複数の属性の魔法を使った覚えがないんだよなぁ。使ってたとしてもさ、あんな反応はしないと思うんだよな。そう、複数の属性を使えるのが普通だと思っているような反応なんてさ。


 シリアは何故か首を傾げ、困惑していた。


『で、何処の誰なんだい?』

「この声はいったい……?」

 天啓だよ。この反応はやっぱりかぁ。


『よく調べたようだがな、いいか、シリアは、な。さすがにオークに負けるほど弱くないぞ』


 ……。


 俺の天啓を受けたシリアが、いや、シリアの姿の何者かが突然笑い出した。

「気付いていたのですね」

 うわ、怪しいと思った程度だったけど、本当に本当かよ。

『当然だ』

 最初におかしいと思ったのは、シリアなら俺本体がノアルジだって知っているはずなのにさ、分身体に話しかけていたことだな。シリアなら芋虫の姿の、俺の方に話しかけるはずだからな。それにな、シリアはセシリーのフミコン通信機を使ったことがあるからな、存在を知っているはずなんだよ。それを知らないってのはおかしいよな。

「姉様に聞いていたよりも、ずいぶんと鋭いようですね」

 ま、まぁ、でもさ、本当は冗談半分だったんだけどなぁ。言ってみて、違っていたら恥ずかしいなぁ、と思いながら指摘してみたしさ。

 にしても、だ。聞いてたより、何だよ、聞いていたよりってさ。それに姉様って誰だよ。


『本物のシリアは無事か?』

「無事です。その石像の後ろに隠し部屋がありまして、そこで眠って貰っています」

 つまり、どちらにせよ、ここで正体をばらしたのか?


 ここが、魔素だまりになっていた? のもこいつの仕業か。

『何の目的があってこんなことをした』

 俺の目の前のシリアの偽物は優雅なお辞儀を返す。

「全ての八大迷宮を攻略し終えた後に、また会いましょう」

 シリアの偽物はそのまま鎧と盾槍だけを残して姿を消す。忍者みたいに消えやがって……。

 最初の時に槍を持っていたのも、シリアが我が儘を言ったんじゃなくて、偽物だから分からなかっただけか? あー、さすがにシリアでもそこまで非常識じゃなかったかぁ。


「そうそう、その護符、私が用意した周囲の魔素を多く含んだので、普通よりも優れた物になってます」

 うわ、まだいたのかよ!


 にしても、何がしたかったんだか。この小迷宮の魔素が濃くて、強力? な魔獣がいたのもコイツの仕業だったんだよな?


 はぁ、何だかなぁ。


 この護符もさ、普通よりも優れた物って、まさか違う物扱いされて試験が失敗になるんじゃないだろうな?


 えーっと、普通は初心の護符があるんだよな? 鑑定してみるか。


【英傑の護符】

【英傑が使用した護符。魔法の威力を高めてくれる】


 英傑かぁ、よくわかんないけど凄そうだなぁ。でもさ、初心の護符が気持ち高めてくれるだったのが、ただ高めてくれるに変わっているだけだとさ、余り強くなってない気がするよなぁ。


 まぁ、貰っておこう。


 とりあえず分身体で護符を取り、魔法のリュックの中に入れておく。で、隠し部屋があるんだよな?


 どうやって?


 この石像が怪しいよな。石像の裏か……。


 石像の裏を覗いてみると隠し扉という線が見えた。隠し扉か。で、どうやって開けるんだ?

 とりあえず適当に分身体で叩いてみると、ふぉんという風がなったような音ともに壁が消えた。はぁ、これで隠し部屋に入れるな。




―2―


 隠し部屋の中にはすでに開かれている金属性の宝箱と、お嬢様のような私服姿のまま寝息を立てているシリアの姿があった。はぁ、こいつを起こすのは躊躇われるなぁ。にしても、だ。あの偽物のシリア、本物そっくりだったな。俺とシリアの関係や辺境伯のことも把握しているみたいだし、何者だったんだろうか。二人、同時に出てきて、私が本物です、みたいなのをやられたらさ、どちらが本物か正解を選べる自信がないなぁ。それ以前に、こいつが二人とか、考えたくないよ。


 にしても、ホント、幸せそうに寝ているなぁ。まぁ、無事でよかったよ。


 しかしまぁ、あの偽物は、どういった勢力なんだろうな。もう魔族に敵対する勢力は無いだろうし、魔人族か? でも、魔人族にさ、他の人に化けるみたいな器用なことが出来るとは思えないんだよなぁ。となると、帝国か? 帝国だとしたら、あの言葉、全ての八大迷宮をって意味が分からないんだよなぁ。


 うーむ、謎が深まる。


 とりあえず寝ているシリアを起こして迷宮から出るか。こいつに事情を話すとか説明するの、面倒だなぁ。

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