9-13 交換が出来るんです
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「スカイ、今更、GPを貰っても使い道が無いと思うのだが。それとも、そのGPの取得量でAランクの中でのランクが変わるのか?」
スカイの言い方だとAランクの中でもランクがあるぽい感じだったもんな。もしかすると溜めた量でランクが変わるとか、ありそうじゃないか?
しかし、スカイ君は首を傾げるばかりだ。ホント、この犬頭は……。首を傾げすぎてねじ切れればいいのにー。
「いや、使い道が、だな」
「ノアルジー様、アイテムと交換ですってば」
犬頭が犬歯を覗かせてニヤニヤと笑っている。あー、そういえばGPってアイテムと交換出来るんだったな。すっかり、その存在を忘れていたよ。
となれば……。
「スカイ、この冒険者ギルドで交換出来る品を教えてくれ」
教えてくださいな。
「あー、ちょっと待って、待って、確かスターターキットに……」
スカイ君がギルドの奥へと消えていく。えーっと、いつものことだけどさ、お前、準備してないのかよ……。
しばらくしてスカイ君が文字の書かれた板を持ってくる。
「これ、これ、これじゃん」
板に書かれているのは……。
1000,000GP 魔法のリュックL(20) 1回限定
100,000GP ゴールデンアクス
10,000GP エリクサー 1回限定
1,000GP 属性極意書
100GP ステータスプレート(銀) 1回限定
10GP 水流壺
なるほど。冒険者ギルドごとに交換が出来るアイテムは違うんだなぁ。
……。
って、おい! 交換アイテムの中にエリクサーがあるじゃねえかよ! 俺さ、それ、探していたんだよな? 探していたよな? この、この、このッ!
「スカイ、交換出来る品の中にエリクサーがあるようだが」
「はぁ、あるみたいっすね」
スカイ君が板を見直し、頷いている。
「スカイ、俺が、以前、エリクサーを探していたのは知っているか?」
その為にさ、競売に参加する為にさ、ナリンまで行ったんだよな。それをこの犬頭は覚えているのか?
「へ、え? は、はぁ……はぁっ!?」
最初、スカイはよく分からないように首を傾げていたが、その動きがゆっくりになり、壊れた機械のようにギギギっとこちらへと向き直る。
「いやいやいや、違う、違ういますです、はい。これ、交換を依頼して始めて本部から送られてくるから! さすがに、俺でも裏から手を回すとか無理ですって!」
なんだかなぁ。まぁ、無理矢理徴収は出来ないってコトか。それにさ、あの時はグレイシアが出来る前だからな。このラインナップはグレイシア専用だろうし、スカイを責めるのは可哀相か。
「いや、責めているワケじゃないさ」
俺の言葉にスカイ君は、はっきりと分かるくらいに安堵していた。
さあて、10万GPで何と交換しようかなぁ。って、魔法のリュックL(20)しかないよな!
さ、じゃあ、魔法のリュックL(20)と交換しますか!
……。
アレ?
桁が、一桁、多い。
アレ?
マジで?
魔法のリュックL(20)って百万GPだったか? 俺、ずーっと10万GPだと思い込んでいたぞ。
う、嘘だろ……。
100万かよ!
……。
まぁ、確かにさ、AランクになればGPの使い道がなくなって溜まる一方だろうからさ、こういう高すぎるくらいの目標があった方がいいのかもしれないけどさ。それでも多すぎないか? Bランクの昇格に必要なGPが99,999だぜ? 10回はBランクになれる計算じゃん。
……。
ちょっと待てよ、それほどおかしくもないのか? 俺はBランク、一発クリアだったけどさ、誰もが一発で攻略出来るわけじゃないしさ、試験を受ける、その都度、GPが必要になるわけだし……。それにさ、Bランクに挑戦出来るくらいになれば、1回でGPが1,000くらいは貰えるクエストに挑戦も出来るんだしさ。
いや、でもさ、そうは言ってもさ、そこまでは、さすがに遠すぎるよなぁ。
特に欲しい物もないし、10万GPちょうどで貰えるゴールデンアクスでも貰っておくか。クリエイトインゴットの魔法を使えば何か特殊なインゴットになるかもしれないしさ。
「スカイ、ゴールデンアクスを貰おう」
俺はスカイの前にステータスプレート(螺旋)を置く。しかし、スカイは動かない。
「いやいや、勝手に交換したらランの旦那が……」
えーっと、それを心配したのか。
「構わん」
「いいんすか? 本当に? 大丈夫すか? 俺にとばっちりとか来ないですよね?」
「大丈夫だ」
いいから交換するんだぜ。
「了解っす。じゃ、3日後に取りに来るようにお願いします」
分かった、分かったよ。
にしても3日後かぁ。意外と長いな。
その頃には14型の怪我も修復しているだろうし、ゴールデンアクスを受け取ったら永久凍土にあるパンデモニウムに向かって、今度こそ、魔族の方々を受け入れないとなぁ。ユエに魔石を渡したから、施設の安全面は確保されただろうし……。あー、そうだ、ユエにセシリア女王との話を伝えておかないと。これは今から行こう。
さあて、と。
ゴールデンアクスが届くまで、何をしようかなぁ。結構、考えるなぁ。