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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
9  名を封じられし霊峰攻略
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9-5  クリスタルドラゴン

―1―


 全く脅威を感じない吹雪の中を進み続けると、急にそれが開けた。何だ、何だ?


「にゃう」

 エミリオは困ったように、空中で――その場で旋回を繰り返す。

「マスター、到着したようです。が、こやつの能力では下に降りることが出来ないようです」

 14型さん、こやつって、こやつって……もっと言い方があると思うんですがー。にしても、どういう状況なんだ? 下が見えないから、よく分からないのは問題だよなぁ。端っこで顔を覗かせたら見えるかな?


『エミリオ、自分たちは、このまま飛び降りる。お前は元のサイズに戻って後を追うのだ』

「にゃ!」

 よし、多分、これは了解したの『にゃ』だよな?


『行くぞ、14型』

「了解です」

 俺はエミリオの背中の端まで走り、そのまま身を投げ出す。


 ひゅーひゅーと俺の体が落ちていく。


 何というか、ここだけ台風の目というか、そんな感じで吹雪いていないんだな。外周部の猛吹雪が壁のように遮断されているのは不思議な光景だ。ん? まさか、ここも結界に守られている地なのか? となるとエミリオが結界越えが出来るようになったから上空まで侵入が出来たけどさ、本来は入り口からちまちま進まないと駄目だったのかな?

 これ、意外とズルだな。地下に潜るとか建物の中を進むような場所で無い限りはいきなり目的地上空から攻めることが出来るんだもんな。


 俺の足下では無数の巨大な水晶の欠片が尖ったトゲのように伸びており、そして、それに絡みつくような形で巨大な骨が埋まっていた。


 ……竜の墓場、か。


――《浮遊》――


 《浮遊》スキルを使い、水晶の欠片が舞う竜の墓場へと降り立つ。なんだか、神秘的な場所だな。魔族の封じられた永久凍土にこんな場所があるなんてな。まぁ、永久凍土って一口に言っても無茶苦茶広いもんな。こんな場所もあるか。


「マスター、アレが目的の竜のようです」

 俺の背後へと14型さんが降り立つ。スッと来たよ、スッと! 14型さんも空から――エミリオの上から飛び降りてきたんだよな? 何で、無茶苦茶重たい体をしているのに、その重さを感じさせないようにふわって着地出来るんだよ。どんな謎の技術を使っているんだよ!


 で、アレが、目的の竜、か。


 俺の前方には伸びた水晶に挟まれるように、1メートルサイズの巨大な紫の魔石が輝いていた。それはまるで誘蛾灯めいた紫の炎の煌めきだ。これだけ大きな魔石だとさ、どれだけのMSPになるか想像も付かないな。一気に数千は貰えそうだ。もしかして、クリスタルドラゴンってボーナス的な魔獣なのか?




―2―


 俺が輝く魔石へと近付くと周囲の水晶たちが竜巻のように吹き荒れ、その魔石へと吸い込まれていく。これは近寄れないな。


 水晶の塊が魔石を覆うように集まり、その形を、足を、手を、爪を、顔を、翼を作り上げていく。


 そして、巨大な水晶の竜が生まれた。


 こいつがクリスタルドラゴンか。


 巨大な水晶の竜が大きな咆哮を上げ大気を震わせる。巨大って言っても今のエミリオと同じくらいだから、竜としては小型だよな。ホント、大きい竜になるとビルとかでも一飲みできそうなサイズになるからなぁ。


 巨大な水晶の竜が体内にある紫の魔石を明滅させる。何だ、何をするつもりだ?


 水晶の竜の口に巨大な紫のリングが生まれる。まさか、ブレスかッ!


 そして、紫に輝く灼熱の獄炎が放たれた。周囲一帯が紫の光に包まれる。ぐわぁ、まともに喰らったぁ。やばいぜー。14型さんは、何か空中に飛び上がって回避しているしさ、さらに空中で飛び跳ねて滞空時間を延ばしてるとか、上手いことやってるよなぁ。


 水晶の竜がさらに大きく溜める。口の周りに巨大な紫のリングが生まれ、紫の閃光が放たれる。うわぁ、連続ブレスとか、恐ろしい魔獣だぁ。地獄の獄炎だぁ。大変だぁ。


 ……。


 さて、と。


 俺は紫のブレスに包まれながら、水晶の竜へと――その体内に眠る紫の魔石へと歩いて行く。


――《スイッチ》――


 《スイッチ》スキルを使いスターダストを取り出し、サイドアーム・ナラカに持たせる。そのまま歩きながら振り払い槍形態へと姿を変化させる。


 俺の視界の右と左が赤く点灯する。俺は、それを回避するように右、左へと動く。そして、そんな俺の後を追尾するように巨大な水晶の前足が振り下ろされる。見え見えだなぁ。


 水晶の爪をくぐり抜け、その懐に――紫の魔石の真下に陣取る。さあ、終わりだぜ。インフィニ……って、いやいや、待てよ、待てよ。これで倒しちゃったら魔石がゲット出来ないんじゃないか?


 となればッ!


――《W百花繚乱》――


 真紅妃とスターダスト、二つの槍から穂先も見えぬほどの高速の突きが放たれる。水晶の華が舞い散り、削れ、その魔石を剥き出しにしていく。け、結構、堅いな。これ、真紅妃とスターダストだからいいけどさ、半端な武器なら弾かれそうだ。


 無数の水晶の華が咲き乱れ、魔石への道が開かれる。


『14型、抉りだせ!』

「了解です」

 言うが早いか、いつの間にか着地していた14型が俺の横を抜け、水晶の竜へと両手を差し込む。そして、その怪力で捻り、砕きながら魔石を引き抜く。


 魔石を引き抜かれた水晶の竜の残骸が、その力を失い、砕け無数の破片となって飛び散る。それはさながら尖った刃物の散弾だ。う、うわ、これは、やべ、やばい。


 どうする、どうする?


 アイスウォールか? いや、でも上から振ってくるようなモノは……!?


 散弾と化した水晶の破片によって俺の体が打ち抜かれる。しかし、俺のSPが多いからか、致命傷となるような傷はなかった。結局、耐えるしかなかったのかよ……。


 あ、痛てて。致命傷はなくてもさ、痛いものは痛いんだって。とりあえず傷を癒やすか。


――[キュアライト]――


 俺の頭上に癒やしの光が生まれ、そのままMPとして吸収された。へ? あれ? あのー、痛いんで早く治って欲しいんですけどー。


――[キュアライト]――


 もう一度、癒やしの光を生み出すが、それは先程と同じようにMPとして吸収されるだけだった。


 ……。


 あ!


 ま、まさか。


――[ヒールレイン]――


 俺の頭上から癒やしの雨が降り注ぎ、その傷を癒やしていく。


 間違いない!


 耐性スキル、回復魔法も吸収するじゃねえか!


 ミスった、ミスった。失敗した。いや、まだ水耐性を取っていなかったのを幸運と思うべきか。水耐性が並び順の最後で助かったよ。こ、これは、本当にミスったぞ。


 こうなってくるとさ、あれば、だが、無属性の回復魔法などを手に入れるまでは水耐性のスキルを上げるべきじゃないな。さすがに回復魔法が無効化されるのはキツすぎる。


 あー、なんてこったい。

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