二重螺旋攻略編エピローグ
―1―
矢を放つ。
光線を回避し矢を放つ。
矢を放つ。
次々と放たれる光線を回避し矢を放つ。
矢を……、矢を……、矢がない!
矢筒の矢が、矢が切れた!
これは、どうするんだ?
どうする、どうする?
これさ、豚顔のゴリラを倒す時に矢を使いまくった弊害だよなぁ。その時にさ、壊れていない矢は回収したけどさ、それでも結構な本数を消費したからなぁ。持ってきた矢の本数に限りがあるもんなぁ。
俺が光線を回避しながら、どうしようかと考えていると、矢筒に矢が復活していた。アレ? 矢が生えてきた、何でだ?
……。
あ!
魔法の真銀の矢!
最近、まともに弓を使っていなかったから忘れていたよ。そうか、そうだよな。こういう便利な矢があったよな!
となれば、魔法の真銀の矢が戻ってくるまで、気合で回避し続ければ、何とかなるな!
これはもう、勝ったも同然だぜ!
―2―
魔法の真銀の矢を放ち、四角い金属の箱の数を減らしていく。
箱の数が減れば減るほど、光線の数は減り、回避するのも楽になっていく。こういうのってさ、数が減るほど攻撃が激しくなるとかしそうなのにな。
時間をかけ、ゆっくりと着実に四角い金属の箱の数を減らしていく。
そして、ついに箱は最後の1個となった。何だか、余裕だったな。
最後の箱へと魔法の真銀の矢を放つ。矢が四角い箱の中に収まっている橙色の球体に当たり、跳ね返されていた。へ? 効かない?
魔法の真銀の矢が光に包まれ消える。ま、まぁ、さすがにこれで終わりってコトは無かったか。
最後に残った四角い金属の箱がこちらへと迫ってくる。でかい、コレ凄く大きいぞ。小さく見えていたのは距離があったからか? 足下を抜けて行く光だけで、《暗視》スキルも効果が無いから、距離感を見誤っていたのか? それとも金属の箱が拡大しているのか? これ、小さな家くらいはありそうなサイズだぞ。
巨大な四角い箱は、こちらの足場と隣接し連結する。そして、向こうが近寄ってきたことで、中の球体の姿がよく見えるようになった。人型? おいおい、コレ、何か人型が丸まっているのか? か、鑑定だ!
【名前:大空坊円緋】
【種族:マスターゴーレム】
何だよ、また和風な名前かよ! にしても、この丸まった人型、ゴーレムなんだな。
丸まったゴーレムが発光し始める。何だ、何かやってくるつもりか?
そして、ゴーレムが左から右へなぎ払うように大きな光線を放つ。お、おい、マジかよ。ここ、飛んだり跳ねたり出来ないんだぞ? そんななぎ払うような攻撃、どうやって回避するんだよッ!
……。
ウォーターミラーの魔法を使うか? いや、跳ね返せなかった時が危険すぎる。ならばッ!
――[アイスウォール]――
――[アイスウォール]――
――[アイスウォール]――
氷の壁を三枚張る。巨大な光線が舐めるように氷の壁を壊していく。
――[アイスウォール]――
俺は、氷の壁が壊れる度に、すぐに新しい氷の壁を作り、光線が通り過ぎるのを待つ。左から右へ、光線が抜けて行く。耐えきったか!?
よし、今がチャンス!
――《スイッチ》――
《スイッチ》スキルを使い、水天一碧の弓とスターダストを入れ替える。俺は丸まったゴーレムの元へと駆けながら、スターダストを振り払い槍形態へと変化させる。
俺は光線を放ち終えたゴーレムの眼前へと立つ。俺の攻撃が届く範囲に隣接したのが間違いだったなッ!
――《Wインフィニティスラスト》――
真紅妃とスターダストが無限の螺旋を描き、丸まった巨大なゴーレムを貫き、大きな風穴を開ける。
一撃だぜッ!
大きな穴が穿たれたゴーレムは、そのまま動かなくなる。そして、連結していた金属の箱が外れ、浮力でも失ったかのように暗闇へと吸い込まれていく。
勝った……?
これで終わりか?
本当に終わり?
いや、だって、俺、まだ《変身》スキルも《変異》スキルも残しているんだぞ。まだ2回も強化を残しているのに、終わりなんて……。
それだけ、俺が強くなったってことか。
マスターゴーレムを倒したからか、足下の振動がゆっくりになっていく。そして、ガコンという大きな音を立てて、動きが止まった。
空中に光が現れ、せり出すように扉が生まれる。いや、元からあった扉が光によって見えるようになったのか?
扉を開け、中に入ると、そこは苔むした洞窟になっていた。
俺たちが洞窟を進み続けると光が差し込む広間に出た。天井に隙間でも空いているのだろうか?
そして、その部屋の中央には台座があり、その上に小さな指輪が置かれていた。前回がマントで、今回は指輪か。とりあえず鑑定だな。
【コーデックスリング】
【迷宮王製】
はい、いつものヤツですな。とりあえず貰っておくか。
その広間の奥にはいつものように真っ黒な直方体が置かれている。さあて、今回はどんなスキルかな。
俺が真っ黒な直方体に近寄ろうとした時だった。
【エミリオがランクアップ条件をクリアしました】
【エミリオが大神獣にランクアップします】
いつもの謎のシステムメッセージが流れる。おー、今回もランクアップしたのか。でも、俺の頭の上で大きくなるなよ?
「にゃうぅ」
【エミリオがスキル《ライトウィング》を獲得しました】
またスキルが増えたな。
「お前はそろそろ、私のマスターの頭の上から降りるのです」
「にゃ、にゃ!」
相変わらず14型とエミリオが何やら言い争っている。争いからは何も生まない!
さ、スキルを獲得するか。
――エピローグ――
俺がスキルを獲得すると、いつものようにスキルモノリスは崩れ去った。そして、それに合わせたかのように左手側の石壁が大きく動き開いていく。石壁が動くとか、大げさな仕掛けだな。
ここが出口かな?
開いた扉の先は塩水の流れる通路だった。もしかして海に繋がっている?
俺と14型、エミリオは外へと向かう為、潮風の漂う方へ、海水をつたって歩いて行く。
やがて、外の光が見えてきた。
そこは、岩壁に囲まれた海の上に浮かぶ洞窟だった。まさか、ここはクロアさんが言っていた洞窟か?
つまり、ここなら《転移チェック》も《転移》も使えるわけだ。
よし、これで八大迷宮『二重螺旋』も攻略か。
残るは後一つ。
ナハン大森林にあるという『名を封じられし霊峰』か。ただ、迷宮に入るには雨期まで待たないと駄目なんだったよな?
となると、しばらく時間が空くのかな?
ま、その間に色々と片付けるか。
さあ、俺たちの国に帰ろう。
八大迷宮・二重螺旋クリア