8-85 二重螺旋謎八設問
―1―
透明なカプセルが並ぶ通路を抜け、次の部屋へと進む。
部屋は小さな待合室のようになっており、その中央に転送の台座が置かれていた。ふむ、中間地点か。何だか、今回はすぐに中間地点に到着出来たな。まぁ、登録しておくか。
台座に触れると三つの画像が浮かび上がった。外へと続く部屋、最初の小部屋、そして、ここだな。そろそろ、終わりだよな? にしても、今回の迷宮は謎解きというか、ホント、そういうのばかりだったよなぁ。
まぁ、進もう。
小部屋を抜けると、またも余り広くない部屋に出た。先程の実験施設とは打って変わり、石壁のいかにも迷宮といった作りになっている。俺の正面には扉が二つ。右と左。そして、その扉と扉の間に、女性の顔を持ち、猫の胴体、鳥の羽を持った石像が置かれていた。何だろう、スフィンクスみたいだな。まさか、ここでなぞなぞとか言わないよな?
スフィンクスもどきに近づくと、その口が開いた。
「さて、問題です」
は? さて、問題ですと来たよ。本当になぞなぞかよ。しかも、この石像、普通に喋ったよ。
「最初は4本足、やがて2本足になり、最後は3本足になるものは?」
いやいや、本当になぞなぞじゃないか。いやあ、実は俺ってばさ、なぞなぞ、得意なんだよな。いや、別に答えを知っているわけじゃないよ、本当に得意なだけなんだよ。うんうん。
「答え、猫人族はこちら」
スフィンクスが左足を上げる。俺から見ると右だな。
「答え、普人族はこちら」
スフィンクスが右足を上げる。俺から見ると左だな。
前足を両方とも上げて、威嚇のポーズ。じゃなくて、だ。えーっと、これ、答えって『人』だよな? いやいや、両方とも人じゃねえかよ。う、うーむ。これは悩むなぁ。
もしかすると、だ。この迷宮を作った時代では猫人族は人扱いされていなかったのか? だってさ、普人族の方が見るからに人って姿をしているもんな。
というわけで答えは左だな。
俺たちは左の扉を開け、その先に進む。扉の先は左回りの下へと降りる螺旋階段になっており、その先は長そうだった。はぁ、また階段か。
階段を降りている途中に柄の長い斧を持った騎士鎧が待ち構えていた。はいはい、敵が出た、敵が出た。
――[エアバースト]――
騎士鎧の兜部分を目掛けて空気を爆発させる。その勢いで騎士鎧から兜が転がり落ちる。そして、中から橙色をした触手のような生物が、その転げ落ちた兜を拾おうとして這い出てくる。
「にゃ!」
――《ピュリフィケイション》――
頭の上の羽猫がスキルを発動させる。
羽猫から大きな光が膨れあがり、広がっていく。光に触れた触手は白い塊に姿を変え、霧散した。後には騎士鎧が転がるだけである。
さ、進むか。
―2―
螺旋階段を降り続けるとスフィンクスが居た部屋と同じような扉が見えてきた。
扉を開けると、そこは先程と同じような部屋だった。二つの扉、その間に挟まるようにスフィンクスの像。う、うーむ、第二問か?
スフィンクスもどきに近付くと、その口が開いた。
「では、問題です」
はいはい、問題な。ここに来て、なぞなぞとはなぁ。
「月華の夜に浮かぶ赤月はどちらを向いている?」
は? 何じゃそりゃ。もしかして、この世界の常識的な問題なのか? わ、分からないぞ。
「答え、東を見ているはこちら」
スフィンクスが左足を上げる。俺から見ると右だな。
「答え、西を見ているはこちら」
スフィンクスが右足を上げる。俺から見ると左だな。
う、うーむ。わからん。こういうのは勘でやるか? ま、まぁ、さっきは左に行ったんだから、今度は右に行ってみるか。
右の扉を開けると、今度は右回りに下へと降りる螺旋階段になっていた。まぁ、進むか。
しばらく階段を降り続けると、その途中に、やはりというか、剣を持った騎士鎧が立っていた。はぁ、倒せばいいんだろ、倒せば。
俺が行動するよりも早く14型が動く。14型が腰を深く落とした肘打ちを放ち、騎士鎧をバラバラにする。
「にゃ!」
――《ピュリフィケイション》――
羽猫が光り、中の生物は白い粉となって霧散した。はいはい、楽勝、楽勝。ただ、心配なのは羽猫が、いつまで、このスキルを使い続けられるか、だよなぁ。場合によっては休憩を挟むか。
螺旋階段を降り続けるとスフィンクスが居た部屋と同じような扉が見えてきた。はぁ、嫌な予感がする。
扉を開けると、そこは先程と同じような部屋だった。二つの扉、その間に挟まるようにスフィンクスの象。う、うーむ、第三問かな?
スフィンクスもどきに近付くと、その口が開いた。
「さて、問題です」
はいはい、早く問題を言ってください。
「ホーンドラットに有効な属性を答えよ」
何だか、最初はいかにもスフィンクスって感じのなぞなぞだったのに、今回はえらく適当だな。制作者は、この辺りで問題を考えるのが面倒になってきたんだろうか。
「答え、火属性はこちら」
スフィンクスが左足を上げる。俺から見ると右だな。
「答え、水属性はこちら」
スフィンクスは右足を上げる。俺から見ると左だな。
これは右だろ。ホーンドラットも動物だからな。動物は火に弱い、これ常識じゃん。
右の扉の先へ進む。先程と同じように右回りの下へと降りる螺旋階段だ。螺旋階段を降りていく。おや、ここは騎士鎧がいないんだな。
そして、スフィンクスが居た部屋と同じような扉が見えてきた。は、はは、ま、まさかな。
扉を開けると、そこは先程と同じような部屋だった。二つの扉、その間に挟まるようにスフィンクスの像。第四問か? これ、まさか、まだまだ続くのか?
スフィンクスモドキに近付くと、その口が開いた。
「では、問題です」
はいはい、もう知ってます。わかってます。
「土属性に隣接する属性を答えよ」
属性に隣接? この世界の曜日の並びのことか? いや、でも隣接って、あー、そうか、解答のどっちらかが、隣接していない属性なのかな。
「答え、金属性はこちら」
スフィンクスが左足を上げる。俺から見ると右だな。
「答え、風属性はこちら」
スフィンクスが右足を上げる。俺から見ると左だな。
って、おい!
この世界の曜日の並びって、火、水、木、金、土、風、だよな? 金も風も隣じゃん。はぁ、何それ? 何か隠された意味でもあるのか?
隣、隣、うーむ。てっきり曜日だと思ったんだけどなぁ。
わ、わからん。