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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
8  二重螺旋攻略
721/999

8-69 卒業試験を終えて

―1―


 グラウンドから少し離れた小迷宮と化している森の近く、そこに作られた仮設テントに教師陣は居た。試練の迷宮の入り口もこの近くだ。

 観客席にいた生徒や外部の人たちはもう帰ったようだ。まぁ、魔法の披露を見に来ただけだったんだろうな。


 にしても、アレだよな。えーっと、何だったかなぁ、失格? 失格だったかな? そうそう、失格だよな。……失格だと? 何だってぇぇぇー!


「何を」

 紫炎の魔女が大きなため息を吐きながらこちらへと歩いてくる。これは、アレか。何をやっているんだって言いたいのか。

「大馬鹿」

 その一言は俺に効く。

「ソフィアちゃん先生、ノアルジーさんは気絶しています」

 そのアルテミシアの言葉に、紫炎の魔女はさらに大きなため息を吐いていた。えーっと、気絶して落とし穴に落ちるのが正解ルートだったってことか?

 も、もしかして、攻略に失敗して気絶して放り出された的な感じに思われているのか? そ、そんなー。


 俺、魔法の披露で格好良く大魔法をバンバン連発して、超目立っていたのに、次の試験で失格とか、失格とかーッ! 完全に道化じゃないですか。滑稽じゃないですかーッ!


「とりあえずノアルジーさんを医療施設にはこ……」

「放っておく」

 紫炎の魔女が蔑んだ目でこちらを見ている。いやいやいや。


『そんな目で見るな。一応、迷宮を突破して奥にあった石碑から魔法使いのクラスは得てきたのだ』

 紫炎の魔女に限定して天啓を飛ばす。すると、紫炎の魔女は小さなため息を吐いた。

『それは凄いな。しかし、試練を突破出来なかったのは確かだ。まさか、そちら側に行くとは……本当に、お前は予想外のことしかしない』

 俺に限定して念話を飛ばしてきた紫炎の魔女は、表情を変え、何やら呆れた顔でこちらを見ていた。蔑んだ瞳で見られるよりはマシだけども、だけどもー。


 俺たちが、こんなやり取りをしていると、迷宮の入り口から、太っちょのメディアがよろよろとした足取りで出てきた。

「な、何なのー、この迷宮ー」

 そして、そのまま倒れた。


「メディアさんも失格ですか」

 あー、入った入り口から出てくると失格なのか。となると、出口は別にあるってことか。


 気絶したメディアが仮設のベッドがある医療テントへと運ばれる。様子を見るに、どうも回復魔法とかは必要無いみたいだな。


 それからしばらくして、森の方側から、ステラがシロネに肩を借りながら出てきた。あー、そっちが出口か。


「後に入ったのに、一番とは……やりますね」

「当然」

 アルテミシアの言葉に当然と返しながらも紫炎の魔女は嬉しそうだ。まぁ、自分の弟子が一番なのは嬉しいか。


 ステラがシロネから離れ、こちらへと歩いてくる。シロネは、森の方へと戻っていった。次の攻略者が出ないか、見に行ったのかな?

「もしかして……、ノアルジーさんが一番!?」

 気絶した分身体の姿を見たステラは驚いていた。

「これは失格」

 しかし、紫炎の魔女が素早い突っ込みを入れていた。いやいや、俺はコレじゃないからな。ホント、扱いが酷いと思います。


 にしても、ステラが一番か。まぁ、勇者ジョアンと共に魔王と戦ったメンバーの一人だもんな。順当か。


 次に森から現れたのはテスだった。こちらはかなり余裕な足取りだ。シロネの姿も見えない。

「疲れた……、眠い……」

 いや、ホント、余裕そうだな。実力で言えば、格段に上のはずのステラが疲れ切っているのに、この差は何なんだろうな。


 それからかなり遅れて、シロネとともにダンソンさんが帰ってきた。ダンソンさんもクリア、か。でも、立っているのがやっとって感じだな。


「これで全員戻ってきましたね。試験の結果は明日になります。皆さん、今日は寮の方でゆっくりと休んでください」

 そして、アルテミシアの言葉で解散となった。


 これで試験終わりかぁ。終わりかぁ!


 まぁ、今日は寮に帰るか……。


 俺は分身体を背中に乗せたまま寮に帰ることにした。


「あの魔獣、ノアルジーさんを乗せたまま……。私の言葉が理解出来たのでしょうか?」




―2―


 翌日、学院の中庭に合格者の書かれた紙が貼られていた。


 俺は分身体で確認に行く。


 えーっと、何々。


 合格

 テス


 不合格

 ダンソン

 ステラ


 失格

 メディア

 ノアルジー


 ……。


 あー、俺、失格って扱いなんだー。


 って、おい、ステラ、不合格じゃん!


 何だ、この結果。枠が二つあったはずなのに、合格になっているのはテスだけ。えーっと、俺はさー、これから忙しくなるであろうステラのために、餞別として、紫炎の魔女が魔法学院だけでも卒業させてあげようって感じで、特別に卒業試験を開催したんだと思っていたんだが。


 えーっと、ホント、何だ、この結果?


 し、紫炎の魔女ー! お、お前の行動、全部、駄目になってるじゃねえか。裏目に出てるじゃねえか。


 張り紙にはさらに文章があった。何々?


 今回は臨時の卒業試験の為、そして卒業者の希望の為、プロムナードはありません。


 あ、この学院、プロムとかあるんだ。


 はぁ、にしても、何だったんだろうって感じの卒業試験だったなぁ。


 ま、まぁ、魔族の問題は俺とフミコンで頑張るからさ、ステラは学院の生徒――学生らしいこと、殆ど出来てなかったじゃん。この機会に、ゆっくりしてさ、学院で友達でも作ったらいいんじゃないかな。ま、そういう期間が作れたと思えば、不合格でも良かったのかもな。


 俺は、まぁ、魔法使いのクラスをゲット出来たから良しとしよう。うん、卒業出来なくて悔しくなんてないんだからな!

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