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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
8  二重螺旋攻略
713/999

8-61 魔王の戦い終えて

―1―


 魔王だった光が弱まっていく。

「まさか、私が敗れるとは……。私の思いよりもお前たちの思いの方が強かったという訳か……」

 光輝いていたジョアンから角が消え、それに合わせるように纏っていた光も消える。全力を出し切り、疲れ切ったジョアンが倒れそうになる。しかし、すぐに、それをステラが支えていた。

「僕たちも人だ!」

 ステラに支えられたままジョアンが叫ぶ。

「そうだ……な。それに気づけなかった私の思いが……負けるのは必然か」

 魔族の王が、ジョアンたちを人として認めたのか。それだけジョアンの思いが強かったってことかな。

「闇の……姫、残された我が同胞、頼みたい」

「もちろんです」

 ステラが力強く頷く。


「ああ……、全て、私が……、私の罪だ。同胞に罪はない……頼む」

「もちろんなのじゃ」

 セシリア女王が頷く。


「ステラのお父さんがそうだったように、手を取り合う道があったはずだ!」

 ジョアンの言葉に光が弱まる。

「そうだ……な。その……通り……だ」

 光が薄れていく。

「名前を……聞きたい……」

「ジョアンだ。ジョアン・ジョスティン・ドーラだ」

 ジョアンの言葉を聞いた光が満足そうに明滅し、そして消えた。


 これで終わりか。


 何だか、俺、最後まで外野だったなぁ。ま、まぁ、ジョアンの手助けが出来たってことで良しとするか。


「疲れたのでス」

 シトリが杖を持ったままぺたんと座り込む。

「むふー、私、完全に巻き込まれただけでしたよ!?」

 シロネも座り込む。

「おいおい、嬢ちゃん、それを言ったら俺らの方が完全に巻き込まれだぜ」

「そうだぜ、俺たちゃ、完全にあの芋虫に騙された。これで温泉とやらがつまんないものだったら、許さないぜー。しかも、肝心のヤツの姿が見えないじゃないかよ」

 このおっさん二人は……。まぁ、助かったけどさ。ホント、嬉しかったし、有り難かったけどさ。

「さあ、後は帰るだけですね」

「だな」

「僕、もうお腹空いたよー」

 エクシディオン少年も活躍したからな。後でポンちゃんが美味い料理を作ってくれるはずだぜ。


「残った魔族はどうするんだぜ」

「私が……導きます」

 キョウのおっちゃんの疑問にステラが答えていた。ステラ、魔族との混血だもんなぁ。

「あんたみたいな、お嬢ちゃんが、なんだぜ」

「ジジジ、キョウ、この者なら大丈夫だろう。強い瞳だ」

 確かに、ステラならやりきるだろうな。


 で、だ。


 俺から提案だぜ。


「この『永久凍土』に来てみて思ったんだが、ここは人の住むような――住めるような場所じゃない」

 《魔素操作》スキルを使って環境を変えるにしても限界があるしなぁ。それに魔族って、望んでこの地に住んでいる訳じゃないんだろう? だから、さ。

「もし、可能なら、魔族の人たちを結界の外にだしたいんだが、ダメだろうか?」

 俺の言葉を聞いた周囲の反応はさまざまだ。


「……いいと思います!」

 ステラは嬉しそうだ。

「わらわも、先程、頼まれたところじゃから、賛成なのじゃ」

 セシリア女王もとびっきりの笑顔だ。


「マスター、私は反対なのです」

 おや? 14型が反対するなんて珍しいな。

「14型、その理由は?」

 14型は手を広げ、手のひらを見つめ、握っては開くを繰り返す。

「言葉に出来ないのです」

 勘とか、そういう感じなのか? ますます機械ぽくなくなってきたな。

「14型の不安も分かる」

「不安……? そう不安なのです」

 不安がる機械か。

「それでも、俺は魔族を救いたいんだ。フミコンが、そうだったように、俺は魔族とも仲良く出来ると思っている。14型、ダメだろうか?」

 14型が首を振る。そして、そのまま綺麗なお辞儀をする。

「マスターの御心のままに」


「ラン、どうするつもりなのじゃ?」

 いや、だから、セシリアさん、セシリアさんもね、この姿の時はノアルジで頼みます。


「魔族を俺の国で受け入れる。まぁ、すぐにとはいかないだろうが、そういう形で話を進めたい。俺の国にはすでに魔族のフミコンも暮らしているしな」

「さすが、ランなのじゃ」


「ラン? ジジジ、私もノアルジーの意見に賛成だ」

 ソード・アハトさんはちゃんとノアルジって呼んでくれるんだな!

「ま、旦那の決めたことなら、俺はいいと思うんだぜ」


「ランなら、大丈夫だ!」

 ジョアンまでラン呼びかよ……。何だろう、ノアルジ=ランが当たり前になっているのか? それとも、俺、何かバレるような行動、とっていたかなぁ。


「話、終わったんだろ? じゃ、帰ろうぜ」

 モヒカン頭がうきうきとした様子で話しかけてくる。お前、早く温泉に入りたいだけだろ。

「こういうダンジョンは、親玉を倒すと崩れるとか多いからな。急いで出たいとこだぜ」

 おい、グルコン、不吉なことを言うなよ。崩れないよな?


「じゃ、船に、フミコンとファットが待っている船に戻ろう」

 その言葉を聞いたキョウのおっちゃんが青い顔になっていた。

「げぇ、アレか、アレなんだぜ」

 あー、キョウのおっちゃん、乗り物、苦手だもんな。

「アレってなあに?」

「おい、エクシディオン、人には、な。聞いちゃ、駄目なことがあるんだ」

「そうですよ」

 皆が笑いながら歩いて行く。


「皆さん……待ってください!」

 そんな、決戦場から出ようとしていた俺たちをステラが呼び止める。

「私は……残ります。残って、地下で何も知らずにいる魔族の方々に、今回のことを説明します!」

 あ、ああー、そうか。そうだよな。それ、重要だよな。


 となれば……。


「ジョアン、ジョアンもステラと一緒に残ってやれよ。俺たちは、また後で迎えにくるから」

 俺の言葉に、ジョアンは何だろうって感じで首を傾げるが、すぐに頷いた。


 さて、と。


 魔族の受け入れ準備か。


 これからも忙しくなりそうだぜ。

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