表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
8  二重螺旋攻略
705/999

8-54 パンデモニウムへ

―1―


 俺の右目に映っていた赤いメーターが消える。時間切れか……。


 それに合わせて俺の背に生えていた蝶の羽が枯れたように萎れ、そのまま光る粉となって霧散する。多分、俺の頭の上に生えている触覚も同じだろう。ああ、やはり、時間が切れたら元に戻るんだな。こんなところも《変身》スキルと一緒か。


 そして羽という浮力を失った俺の体が地上へと真っ逆さまに落下する。そんな俺を大きく飛び上がった14型が、そのまま空中でキャッチする。ナイスキャッチだ。

「マスター、ご自分の力でも飛べることをお忘れですか。いつもながら物忘れが激しいようですが、ろう……劣化ですか」

 はいはい。こちらが《飛翔》や《浮遊》スキルを使う前にキャッチしたよな。お前、分かってて言ってるよな? こいつは、ホントになぁ。


 氷雪の上に着地した俺と14型の前にミカンが駆けてくる。

「主殿、その、アレだ。驚いた」

 まぁ、普通の人は《変身》したり、《変異》したりはしないだろうからな。


 遅れてフミコンもやってくる。

「ラン王、終わってしまったのじゃな」

 フミコンが手を握りあわせ、何かに祈りを捧げる。

『神にでも祈っているのか?』

 祈りが終わったフミコンは、ただ首を横に振る。

『そうか』

「昔はどうかはわからんがのう、この世界に神はおらぬと思うのじゃよ」

 この世界には女神が実在している――していた、と思っていたんだがな。ああ、そうか。魔族の最終目標って、確か、その女神の打倒だもんな。魔族としては敵対している相手を神として崇めることは出来ないか。


 フミコンは何に対して祈ったんだろうな。


 ……。


『フミコン、墓を、墓を作るか?』

 俺の天啓を受けたフミコンが驚いた顔でこちらを見る。

「ラン王、今は急ぐ時じゃ。そのような」

『いいんだ。ジョアンたちが休んでいる、その間だけだ』


 俺と14型、それにミカンで協力して4魔将の墓を作る。それは、氷を砕き、その中に眠らせただけの簡単な棺だ。そして、ミカンが墓標代わりにルビードラゴンの剣を突き刺す。

「正直、思うところは多い。しかし、彼女らのお陰で私は強くなれた」

 ホント、ミカンは強くなったよな。


 そして、俺は刺さった剣を見る。これほど、らしい墓標もないか。これは、元々、レッドカノンの武器だしな。それに、この重さなら簡単に動かすことも出来ないだろうから、誰か通りかかった人に持ち逃げされることもないだろう。


 フミコンが剣に碑を入れる。名も無き墓でもいいかと思ったが、まぁ、同族だもんな。


 ――使命に殉じた勇士 レッドカノン ブルーアイオーン ブラックプリズム ホワイトディザスター ここに眠る――か。


 使命、か。


「ラン王、船に帰ろうかのう。ファット船長が待ちくたびれておるからのう」


 ああ、そうだな。




―2―


 雪の上に着陸していたファット船長のネウシス号に戻ると、そこにはうんざりとした顔のファット船長とジョアン、ステラがいた。

「こいつら、休むのも仕事だって言ってるのに、聞かねぇんだよ」

 豹のような頭のファット船長が肩を竦めている。


「私には……結果を待つ責任があります……」

 ステラの言葉。結果を待つことに責任があるのか? 何だかおかしな言葉だな。

「ラン! 終わったんだな」

 ジョアンの言葉に、俺はただ『ああ』とだけ天啓を飛ばしていた。それ以上の言葉は必要無いだろう。


「ファット船長、他の方々はどうしているかのう」

 それを聞いたファット船長は後ろを指差す。

「お休み中だぜ。姫さん、いや、今は女王か、なんて、この船に辿り着いたらころりよ」

 セシリアらしいな。

「ああ、うん! 他のみんなにも休んで貰っている。特に回復魔法を使い続けてくれたシトリの疲労が酷いんだ」

 そう言ったジョアンの顔も疲れ切っていた。


『ジョアン、ステラ、お前たちも休め。ファット船長の言うとおり、休むのも仕事だ。特に次は最後の戦いになるんだろう?』

「ああ! そうする……。なんだか、ランの姿を見たらホッとして……」

 ジョアンは、言葉を喋るのも億劫と言わんばかりに、そのまま崩れ落ち、眠りへと落ちた。


『ミカン、悪いがジョアンを奥まで運んでやってくれ』

 俺の天啓にミカンが頷き、14型と協力して船の奥へと運ぶ。ステラがジョアンに寄り添い、心配そうな顔を覗かせ、そのまま一緒に船の奥へと消えていく。


「はぁ、あの餓鬼、モテるねぇ」

 ファットが頭を掻いていた。

『羨ましいのか? ファット船長には可愛い奥さんがいるだろう?』

 俺の天啓を受けたファットがとんでもないと言わんばかりに天を仰いでいた。

「可愛い! あれが可愛いだと! ランの王様よー、あんたは種族が違うから、よく分かってないようだな。アレは可愛いとは言わねぇ、怖いって言うんだ」

 はいはい、随分と仲がいいんだな。こういうのも惚気なのかなぁ。


「ラン王! 今し方、キョウ殿から連絡が入ったのじゃよ」

 む? キョウのおっちゃんから?

「城に到着したようじゃ!」

 へ? 随分と早いな。早すぎるくらいだ。俺の見立てでは、ジョアン救出、とって返して途中で合流、そのまま城に突撃、くらいになるかもなぁ、って思っていたんだけどなぁ。もしかして、フミコン、何かしたか?


『ということらしい。ファット船長も疲れていると思うが、急ぎ向かって貰えないだろうか?』

「わーったぜ。俺様の仕事ぶり見ていろよ!」

 ファット船長が肩を鳴らし操作パネルへと向かう。


「ファット船長、行く先は、わしら魔族の本拠地、パンデモニウムじゃ!」

 パンデモニウム、か。


 そこに待っている魔王を倒せば魔族との問題も終わる。


 いよいよ最後の戦いだな!

2018年2月20日修正

魔族とのも問題も終わる → 魔族との問題も終わる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ