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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
8  二重螺旋攻略
703/999

8-52 戦いは、変異する

―1―


「あたいらは戦う、それだけだ。戦い抜き人としての尊厳を勝ち取るか、負けて滅びるか、それだけだ」

 そうか。でもさ、2つしか選択肢が用意出来ないのは――それしか考えられないのは、とても愚かで、とても哀しいことだと思うぜ。が、これ以上、俺たちが何か言っても無駄だろう。


 交渉で、平和的に、お互いの妥協点を探す段階は過ぎているのだ。ああ、そうだ。後は戦うだけしかない。

 魔族に――この四魔将たちには信念が、譲れない思いがあるのだろう。それは非常に脅威だ。それに対して、俺は、俺には、特にない。


 ただ、売れられた喧嘩を買っているだけだ。


 ジョアンたちを助けようとしているだけだ。


 ただ、それだけだ。


 ああ、そうだよな、お前らの思いに比べたら、俺は軽いのだろうさ。でも、それでも負けてやるわけにはいかないからなッ!


『後は戦うだけだな』


「もとより、そのつもりさ。あたいには、それしか残されていない!」

「ええ、あなたたちを殺すだけです」

「殺す? いいや、お前らは人じゃない。人の姿を真似ただけの人形だ。ただ、それを壊すだけだな!」

「クヒヒヒヒヒ、何を当然のことを。そうお前らは僕たちの前に屈するだけだよ」


 と、のことだ。


『フミコン、下がっていろ。すでにここは戦場。会話で終わらせられるような段階はもう過ぎている』

「しかし、じゃのう」

 フミコンは食い下がる。

「マスターの戦いの邪魔です。理想を語るだけの結果を持ち得ぬ者は遠くでマスターの戦いを眺めているといいのです」

 14型がフミコンの首根っこを捕まえ、大きく後方へと放り投げる。フミコンは、雪をクッションとするようにぽふんと着地していた。


 そして、14型、ミカン――俺たちは4人の魔族へと向き直る。


「いいねぇ、いいねぇ。そこの大きくて気持ち悪い芋虫は良いことを言うねぇ」

 レッドカノンがケタケタと笑う。

「そうさ、俺様の大好きな、楽しい楽しい、蹂躙ってゲームの始まりだ」


 そのレッドカノンの言葉とともに戦闘が再開した。


 4人の魔族から次々と見たこともない魔法が放たれる。俺が回避し、ミカンが刀で斬り払い、14型が回避し突撃する。


 あ、これ、前衛2枚だから、俺は弓で戦った方が良かったか?




―2―


 俺たちは、いや、俺は油断していた。目の前の魔族たちに脅威を感じなかったからと、それを忘れていた――いや、そんな使い方があるとは思わなかったのだ。


 巨大な蝙蝠の羽を持った黒い針金のようなブラックプリズムから、何かが射出される。例のモノリスから作った弾丸かッ!?


 放たれたそれをミカンが難なく回避する。


 そして、俺の前では14型が飛来してきた、それらを全て打ち返していた。14型は機械だからか、モノリスで作られた弾丸を受けても大丈夫だからな。安心して任せられるぜ。


 散弾銃のように飛来する、それを、14型が、その両の拳で叩き、殴り、打ち返す。

「おいおい、お前らの相手は土だけじゃないんだぜ」

 レッドカノンが赤い炎の槍を生み出し、それをこちらへと放つ。

「主殿、こちらは!」

 ミカンが器用にモノリスの弾丸を回避しながらも、飛来する炎の槍を真っ二つに斬り払う。た、頼りになるなぁ。


 となると、やはり、ここは、だ。前は任せて、俺は弓で攻撃するべきか?


 その時だった。俺の脇腹部分の肉に、何かがめり込んだ感触があった。可動域の少ない首部分を無理矢理動かし、その脇腹を見るとモノリスの弾丸がめり込んでいた。な、なんでだ?


 よく見れば、俺の周囲に、14型の周りに透明な空気の塊が見えた。そう、視認できない、それが、俺には線として見えた。見えるのに気付かなかった? レッドカノンの魔法によって注意を逸らされていた?


「クヒヒヒヒ、芋虫の星獣、終わりだよ」

 ホワイトディザスターが笑う。そうか、14型が打ち返したモノリスの弾丸を風の壁で跳弾させたのか。


 か、体が熱い。


 俺の中で何かがうねりを上げている。


 俺の体が崩れ落ち、地面を転がる。体内の魔素を操作して、この暴れている要因を抑えないと……がががが。


「マスター!」

 14型が叫ぶ。その顔には表情がないのに焦っているのがこちらまで伝わる。


 そして、それは始まった。


 俺の中で荒れ狂う流れが1つにまとまっていく。俺は魔素を操作していないのに、何が、何が起きているんだ?


 何故だ、何が、何で。


 俺の背中が弾け飛ぶ。青い外皮が舞い散る。これ、回復魔法で治るのか?


「クヒヒヒ、見ろよ、無様なものだよ。あの小憎たらしい、いつもいつも僕らの邪魔をしたあの星獣が!」

「いえ、待ってください。造り替え、魔素の暴走によって殺すだけのはず。あのような反応は!?」


【負荷が掛かっているため本来の成長に戻ろうとしています】


 この状況でシステムメッセージだと……?


【エラー】


【進化に失敗しました】


【エラー】


【一部限定として進化をスキルとして開花させます】


【成功】


【限定スキル《変異》が開花しました】


 変異……?


 痛みを、苦しみを、暴れる力を、俺はそれらから逃れたい一心でスキルを発動させる。


――《変異》――


 弾け飛んだ背中から、その中から巨大な鱗粉をまき散らす4枚の羽が生まれる。巨大な羽は俺の体を包み込み、そのままくるくると回転しながら上昇する。


 そして、


 羽が開く。

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