2-62 受注
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宿に帰り明日に備える。と言っても今回は晩ご飯も外で食べている為、後は寝るだけなんですけどね。
翌日の朝ご飯のスープも魚醤を一滴垂らすことでうまうまです。飽きた味がこんなにも劇的に変わるなんて……魚醤サマサマです。さらにジャイアントリザードの小麦粉焼きもむしゃむしゃと食べるのです。うん、なんというか、お好み焼きみたいな物かと思ったけど……何だろう、少し粉っぽい。つなぎが足りないからなのかなぁ。まぁ、不味くは無いけど、タコしか具材が入っていない小麦粉だけで作った塩風味だけの自家製たこ焼きみたいな味だ。いやまぁ、そんな料理は作ったことは無いけれど後はソースだよね、ソース。醤油――魚醤があったんだ。ソースだってあるかも。
さぁ、今日は冒険者ギルドで承認クエストを受けようかなッ!
ということでさっそく冒険者ギルドです。
「今日も虫」
ちびっ娘だな。
『Eランクの承認試験を受けたいのだが、併せて他のクエストを受けることは可能か?』
ちびっ娘は黙って頷く。あ、可能ってことね。ならば……。
『このクエストも併せてお願いしたい』
俺が持ってきたクエストは……。
Eランク
討伐クエスト
エリート・ビーの討伐
世界樹の迷宮上層に巣くっているエリート・ビーの討伐
討伐証明にエリートの剣の納品をお願いします。
クエスト保証金:640円(銅貨1枚)
報酬:5120円(銀貨1枚)
獲得GP:20
Eランク
討伐クエスト
ソルジャー・ビー達の討伐
世界樹の迷宮上層に巣くっているソルジャー・ビー達の討伐
最低3匹以上の討伐をお願いします。
クエスト保証金:640円(銅貨1枚)
報酬:3840円(銅貨6枚)
獲得GP:10
はーい、受けるクエストはこちらになります。これから上層に向かうんだからさ、上層部で達成できるクエストにしないとね。しかし、同じEランクでもジャイアントリザードとの差が激しいな。獲得出来るGPも報酬も全然違うじゃん。ジャイアントリザードはEランクだけど規格外の強さってことなのか……?
「虫、大丈夫か?」
多分、二つもクエストを受けても大丈夫か? ってことだよな。
うん、余裕、余裕、超余裕。問題があるとしたらウッドゴーレムと戦ったことが無いことくらいだな。でもDランクでしょ? 同じDランクのクィーン・ビーも倒しているし、なんとかなるさ。
「わかった。頑張ってくる」
おうさ。これを達成出来ればEランクか……。その後はどうしようかなぁ、大陸に渡る? それとも、そうだなぁ、侍のクラスでも取得しに行ってみようか。まぁ、達成出来たらの話だけどさ。失敗したら、またGPを800も溜めないと駄目なんだよな。そうなると溜めるだけでも1月近くか……うん、必ず達成しよう。
―2―
俺は冒険者ギルドを出て買い物に向かう。まずはホワイトさんの鍛冶屋だ。鉄の矢を補給しないとな。本当はクノエ魔法具店で火の矢の方を補充したいんだが、金銭的な問題がががが。
『頼もう』
「ああ、はいはい。で、今日の用件は? ま、まさかまた壊れたとか言わないよなぁ?」
あ、はい。今回は大丈夫です。鉄の槍生存ルートです。
『鉄の矢を貰いたいのだが』
「まいど。だけどよぉ、鉄の矢で良いのか? 最近は魔法具店の方で属性矢を買ってるんだろう?」
確かにそうなんだけどね。使うと矢が壊れてしまうチャージアローのスキルを使うことを考えると属性矢は勿体ない気がするんですよー。
ということで鉄の矢を7本ください。えーっと8960円(銀貨1枚、銅貨6枚)だよね。
「まいど」
あー、後、魔法の袋が欲しいんだよな。ホワイトさん、購入できる場所を知っていないかなぁ。どんなサイズでも入る魔法のウェストポーチXL(1)は便利だけど1種類しか入らないし、魔法のポーチS(1)の中身は魚醤の小瓶が永久に鎮座することが決まっちゃったしなぁ。
『ということなのだ』
「……」
ホワイトさん、ホワイトさーん。
「ああ、何がということなのか分からねぇがよぉ、魔法の袋が欲しいんだよな?」
うんうん、その通り。
「お前……自分の職業を忘れていないか? 冒険者だろ? 冒・険・者。お前も冒険者なら迷宮の宝箱から手に入れろよ」
……あ、そっかー。買うとなると無駄に高いみたいだし、それが正解か。よし、ではその方向で。まぁ、現状の持てない分は背負い袋にぽいぽい入れていけば良いか。
俺は鉄の矢を受け取り、代金を支払い、鍛冶屋を後にした。もちろん行き先は隣の服飾店である。
服飾店に入ると店員の女性が出てくる。はい、まいどー。
「お客様、お待たせいたしました。頼まれていたスカーフ、完成しております」
おや? 思ったよりも早い。昨日の今日で完成か。
うむ、進捗状況を聞こうかと思っただけだったんだが、これは世界樹の上層攻略前に良い装備品が出に入ったな。
店員さんが奥からスカーフを持ってきてくれる。
受け取った銀色に輝くスカーフは毛皮を使っているだけあって少し厚みもある、1メートルくらいの長方形タイプだった。
さっそく完成したスカーフを付けてみる。まずはスカーフをふわりと首に巻くだけの感じで付けて、その上から羽織った夜のクロークの留め口から銀色を覗かせる。うん、割とお洒落さんになっただろうか。
さあ、思いがけず装備も手に入って準備も出来た。ちゃちゃっと世界樹を攻略しますか!