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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
8  二重螺旋攻略
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8-47 復活したら復活祭

―1―


 その夜――城内の灯りが落ちているため、夜と思われる時間。造りだけは豪華な温泉に浸かって揺蕩っていた俺の前にミカンが現れた。ミカンちゃん、こんな夜にどうしたんだ? ま、まさか、こっそりと温泉を楽しみに来たのか!?


「主殿、お預かりしていた薬、今、お返しします」

 ミカンが懐から小瓶を取り出し、中の液体を俺に振りかける。これは、ポーションか? 確かポーションって振りかけても、飲んでも効果があるんだったかな?


 ……。


 って、アレ? これ、もしかして俺がミカンにあげたエルポーションか? でも、アレは、ミカンが目を治すために使ったはずだよな?


 ……となると、これは夢か。


「主殿、早く良くなってください」

 そのミカンの言葉と共に俺は眠りについた。


 そして、目覚めると、俺の体は元に戻っていた。


 うん、俺、復活!


 良かった、本当に良かったよ。あのまま半身を失ってどろどろ状態で生きていくとか考えたくなかったもんな。


 で、俺はどれくらい眠っていたんだろうか。聞くのが怖いなぁ。前の時みたいに一年も寝ていたとか、無いよな?


 と、おや?


 部屋の隅っこで14型が眠っていた。無表情で立ったまま寝ているから、微妙に怖いな。にしても、この子は、機械だから寝る必要がありませんアピールをする割には、いつもいつも寝てるなぁ。


 とりあえず、ざばぁと温泉から上がり、14型のツインテールを引っ張る。


「ひゃい! マスター、敵襲です!」

 14型さん、敵なんて何処にも居ないぞ。

「ああ、マスターでしたか。個性的な姿を見間違えてしまったのです」

 14型よ、その言い訳は苦しいぞ。

「お姿は……元通りのようですね。私はマスターの無事を信じていたので、これっぽっちも、まったく心配していなかったのです」

『それはそれで寂しいぞ』

 お、ちゃんと天啓が発動した。

「嘘です。とても心配しておりました」

 14型は無表情のまま、とってつけたようにそう言っていた。何だかなぁ。14型さん、ホント、お前は機械ぽくないよな。本当は中に妖精とか精霊とかが入っているんじゃないか?


『14型、自分がこの城に戻ってからどれくらいの時が経っている?』

「マスターがお戻りになってから一週間ほどです」

 そうか。それでも一週間は経っているのか……。


『分かった。それでは自分が回復した姿を皆に見せるとしよう』

 俺の帰還だぜー。




―2―


 温泉部屋から外に出るとフミコンがいた。回復した俺の姿を見て、何だか凄く微妙な表情を浮かべている。

「ラン王、回復されたのじゃな」

 何だ? まるで回復して欲しくなかったかのような……?

『フミコン?』

「いや、ラン王の回復は嬉しいのじゃよ。ただ、ただのう。せっかく失われた体をサポートするために魔道科学の髄を集めた強化外骨格を作っていたのが無駄に、のう」

 へ、何それ? まさか、俺に、機械の体を得てパワーアップみたいなことをしようとしていたのか? いやいや、勘弁してくれよ。生身の自分の体が一番だよ。

「まぁ、アレはアレで他に何か利用するとしようかのう、ひょーほっほっほっほ」

 フミコンって狂気的な科学者ぽいよなぁ。怖い、怖い。


「まぁ、回復されて何よりですじゃ」

 あ、はい。


 俺はとりあえず玉座の間を目指して歩いて行く。


 次に会ったのはミカンだった。

「主殿、回復されたのですね。それでは皆を呼んでくるとします」

『いや、ミカン、待って欲しい』

 そうそう、それよりも聞いておくことが。

『ミカン、最初の夜、回復のポーションを持って現れなかったか?』

 しかし、ミカンは俺の天啓に首を傾げるだけだった。

「主殿、何のことでしょうか?」

 む。


 うーん、やはり、夢だったのか? まぁ、確かにエルポーションを使ったのなら一瞬で回復していてもおかしくないもんな? ないよな?

 そうか夢か。変わった夢を見るもんだなぁ。


 ミカンは皆を呼びに去って行った。そして、それを追い越さんと14型も消える。何故、そこで張り合う。




―3―


 そして、その日は俺の復活を祝って宴が開かれた。


 皆が俺の復帰を喜び、お祝いの言葉をくれる。


 俺は、もしゃもしゃと久しぶりのポンちゃんの料理を堪能する。

「ランの旦那、いくらでも食べて欲しいじゃんかよー」

 ポンちゃん、ありがとよー。


「やっと回復の温泉とやらが楽しめるぜ」

「待った、待ったな」

 おっさんずも料理を楽しんでいるようだ。


「ここ、冒険者ギルドもあるし、意外といいね」

「ここを拠点にするのも悪くねえな。姐御も呼ぶか?」

「そうですね」

 アクスフィーバーの三人も残ってくれていたようだ。


 そして、夜が明けた。




―4―


――《分身》――


 俺はまず《分身》スキルを使い、分身体を作り出す。そして、すぐにステータスプレート(螺旋)に取り付けられたスイッチを押し、神国にいるであろうセシリア女王への通信回線を開く。


「セシリア女王、聞こえるだろうか?」

「……」

 分身体を使って喋るが、向こうからの反応はなかった。む、不在か? それとも、何か忙しいのか?


「もしかして、ノアルジーお姉様ですか?」

 そして、聞いたことのある声が返ってきた。あ、アレ、アレレ?

「まさか、シリアか?」

「はい! お姉様のシリアです」

 えーっと、頭痛がしそうだが、『の』は何処にかかるんだろうな。この子、ホント、怖い。

「セシリア女王はどうした?」

「女王は勇者ジョアンと共に魔族の住む地『永久凍土』に向かいました。今は私が代理をしています」

 へ? いやいや、女王がそんな簡単に国を離れて良いのかよ。というか、シリアが代理って、女王って、そんな代理が務まるような仕事か? 神国、大丈夫かよ。

「私は! ノアルジーお姉様が無事だと信じておりましたわ!」

 うーむ、それだけ神国は周りが優秀ってことなのか? まぁ、アオが女神教団で悪さしていた時もお馬鹿な第一王子しかいなかったのに、国は普通に動いているぽかったもんな。意外とトップがいなくても大丈夫な国なのかもしれないなぁ。

「お姉様……?」

「わかった。ありがとう」

 俺はそのまま通信を切る。にしても、セシリアはステータスプレートを持っていかなかったんだな。まぁ、冒険者でも無ければ常備する必要はないか。それにもしかすると国と国との通信機としての役割を重要視して、国に残したのかもしれないな。うーむ、意外と裏目に出てしまったか。


 にしても、ジョアンたちは『永久凍土』に向かったんだな。魔族との最終決戦でもするつもりか?


 大丈夫なのか?


 心配だなぁ。


 俺は俺で、出来る限りフォローすることにしよう。

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