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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
8  二重螺旋攻略
694/999

8-43 真四魔将との戦い

―1―


 雪が降り積もる氷原に4体の異質な存在が降り立つ。


 1つは真っ赤に燃え上がる巨大な蜘蛛の体、その上部から6本の腕を持った女性の体が生えていた。女は嫌らしい笑みを浮かべながら燃えるような赤い髪を掻き上げる。


 1つは下半身から無数の白いトカゲや白い鳥の頭、白い犬の頭を生やした女性。それらの頭が共食いを始め、食べたそばから新しい頭が生えていた。


 1つは針金のように細い体に黒い巨大な禍々しい蝙蝠の翼を生やした生き物。針金のような体をくねらせながら空中に浮いている。


 1つは青く蠢く触手が絡みつき巨大な塊となっている存在。その触手の奥には隠れるように人の顔が見えていた。


 それら見るもおぞましい巨大な4つの存在が6人と1匹を取り囲む。


 光る盾を手にした勇者ジョアン。


 白いマント、光輝く剣を手にした女王セシリア。


 黒いドレスに身を纏い黒い杖を手にした闇の姫ステラ。


 真銀の短剣を両手に構えた森のシロネ。


 癒やしの力を秘めた杖を手に持ち祈りを捧げている蜥蜴人の聖女シトリ。


 全てを燃やし尽くす紫の火炎を纏った紫炎の魔女ソフィア。


 それらを見守るようにぱたぱたと飛んでいる小さな羽猫エミリオ。


 4つの存在と6人と1匹が対峙する。




―2―


 俺は戦いを――その映し出された戦いを、ただ、ただ、眺めているしかない。


「王様よー、落ち着きな」

『ファット船長、速度は……』

 俺の天啓にファットは大きなため息を吐いていた。

「焦るのは俺様だって分かるぜ。海の上ならまだしも、不慣れな空の上だ。それでも俺様の天才的な才能でよー、全速力で進んでいるんだぜ?」

「マスター、私もサポートしているのです。そこの猫頭よりも信頼出来る私がサポートしてこの速度なのです。それを理解して欲しいのです」

 はいはい、14型さん、そうだよな。

「ラン王、結界を越え、もうわしら魔族の住む地に入っている。もうすぐじゃ」


 俺が城に戻ると、フミコンが「こんなこともあろうかと」と言わんばかりに、ファットのネウシス号を空も飛べるように改造していた。ホント、こうなるのが分かっていたかのようなタイミングだぜ。


 ため込んでいた魔石をネウシス号へと突っ込み、それを燃料として魔族の住む地『永久凍土』へ向かう。

「誰かさんが、無理矢理『世界の壁』の結界を抜けようとするから、余計時間がかかったんじゃないかよー」

「マスター、私の言うとおりに操舵しなかった猫頭が悪いと思うのです」

 いや、言ってる場合かよ。

「いやいや、俺様はこの悪天候の中、慣れない操舵を頑張ってると思うぜ」

 まぁ、ネウシス号はファット船長しか操作出来ないからな。14型もフミコンもあくまで補助だ。


 ネウシス号に映し出された外の景色は雪、雪、雪、猛吹雪だ。


『フミコン、このような地に人が住めるのか?』

 俺の天啓にフミコンは笑う。

「住めるはずがありませんのう」

『なら、魔族は?』

「ラン王、わしの本体や、あの者たちの姿を見ましたかな?」

『あ、ああ』

 異常な姿。化け物、それこそ、悪魔のような姿。


「元は悪魔と……いや、お主らの崇める女神と戦うために取り込んだ力ですがのう、今は過酷な環境を生き延びるための力となっておるのですじゃよ」

 なるほど……。でもさ、何で、魔族は女神と戦っているんだ? そういうものだから、と言われてしまえばそれまでなんだけどさ。

『魔族は元から、あのような姿では無かったということか』

 俺の天啓にフミコンが頷く。

「元は普通に人じゃのう。それが色々な因子を取り込んで今のような化け物の姿へと変わったのじゃよ。だからこそ、この仮初めの姿では人の姿を取るのじゃがのう」

 因子?

「実はのう、意外なことかもしれんがのう、今でもわしら魔族は、生まれてすぐは人と同じ姿なのじゃよ。それが成長するにつれ、体の中の色々な因子が目覚め、その姿を変えていくのじゃよ。あるものは昆虫のような姿に、あるものは数々の動物の姿に、そして、それらが合わさった姿に」

 そうなのか。

『それでは、子どもをつく……』

 いや、これは聞いても良いことなのか?

「ふむ。そうじゃのう。人の枠を外れたわしらは、そのままでは子を成せぬでのう。それゆえ、孵卵器という道具を使うのじゃよ」

 そう言ってフミコンは笑っていた。が、その笑い声、声の質と反比例するように顔は冷たく凍り付いていた。


「王様、もうすぐ到着するぜ」

 ファット船長が声を上げる。

「どうする? 近くに降ろすか?」

『いや、必要無い、このまま打って出る。ミカン!』

 俺の天啓に、船内の端の方で刀によりそって静かに座っていたミカンが立ち上がる。

「うむ、主殿」

『14型とフミコンはファット船長をサポートして、後から追いついてくれ』

「マスター、了解です」

「了解じゃ!」


 俺はミカンを連れてネウシス号の外へと出る。空の上だと、かなりの吹雪だな。下の方はそうでもないようだが、うーむ。


 ま、それでも行くしか無いよな!


『いくぞ、ミカン』


 ミカンと共に空へ飛ぶ。


 目指すは眼下、ジョアンたちの戦いの場へ。


 これが、魔族の4魔将との最後の戦いだ!

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