やみのひめステラのものがたり
玉座に座ったセシリア女王の横に立つ偉そうな男が言葉を発する。
「セシリア女王の御前である!」
それを聞き、玉座の上で片肘をついたセシリア女王は大きなため息を吐いていた。
「控えなさい!」
偉そうな男の言葉にジョアン、シロネ、シトリの三人が膝をつき頭を下げる。紫炎の魔女ソフィアとステラは立ったままだ。
「無礼な!」
偉そうな男が言葉を続けようとするが、それをセシリア女王が片手で制する。
「よいのじゃ」
そして、セシリア女王が言葉を続ける。
「此度の魔族討伐見事だったのじゃ」
セシリア女王の言葉にジョアンが感じ入ったように、更に大きく頭を下げる。それを見たステラは少し面白く無さそうな顔をしていた。しかし、それも一瞬、すぐにセシリア女王へと向き直る。
「セシリア女王……お話があります!」
ステラの言葉にセシリア女王は楽しそうに口の端を上げる。
「無礼者! セシリア女王は、まだお話の途中だ!」
しかし、それをとがめるように偉そうな男が叫ぶ。
「私は、今、ここに魔族の姫として立っています!」
ステラの言葉に周囲が――玉座の間が騒がしくなる。
「ふむ。続けるのじゃ」
緊張した表情のまま、ステラの言葉が続く。
「全ての魔族が、人との戦いを望んでいる訳ではありません……。このたびの戦いは一部のものが、王位を簒奪したものが暴走したものです……」
「魔族……と一括りにするな、と言うのじゃな?」
セシリア女王が片肘を上げ、腕を組む。
「お力をお貸しください……」
紫炎の魔女ソフィアは楽しそうな顔でセシリア女王とステラの顔を見比べている。
「それに対する見返りはなんなのじゃ?」
セシリア女王の言葉。
「魔族との和平です!」
ステラの言葉に周囲が静まりかえる。
そして、その静寂の中にセシリア女王の笑い声が生まれる。一人、楽しそうに笑うセシリア女王。
「セシリア様、ステラは……!」
その笑い声にジョアンが顔を上げる。
「よい、よいのじゃ、ジョアン」
そして、真剣な顔でステラを見る。
「まず、女王と姫、そして頼む側、そなたは立場を分かっておらぬのじゃ」
「しかし……」
セシリア女王はステラが何か言葉を繋げようとしたのを手で止める。
「よい、よいのじゃ。わらわはお主の力になるのじゃ!」
「それでは……?」
ステラの言葉にセシリア女王が頷く。
「うむ。わらわも魔族の封じられた地、永久凍土に向かうのじゃ」
「女王!」
セシリア女王の無茶な発言に周囲が騒がしくなる。
「女王! 国は、この神聖国はどうされるつもりですか!」
「無茶です!」
そして、セシリア女王はそれらの発言を楽しそうに受け止める。
「ウルスラ殿下が目覚められた今、わらわなぞお飾りでしかないのじゃ。それに、じゃ。わらわに何かあったとしても海の上で楽しそうに遊び回っている兄上が戻ってくるだけなのじゃ」
「何も起こさせない! 僕が守る!」
「うむ。ジョアン、頼りにしているのじゃ」
こうして、闇の姫ステラは神聖国の助力を得て、何故かセシリア女王と共に永久凍土へと向かうことになった。
「私は、マスターが戻ってくるまで、その場所を作って確保しておくのです」
「にゃ」
「ええ、ええ。お前は、その者どもを助けて、乗り物扱いされているのがいいのです」
「にゃ、にゃにゃ!」
「マスターは必ず戻ってこられるのです」
体調不良の為、更新を休みます。
次回更新は19日、月曜になります。