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むいむいたん  作者: 無為無策の雪ノ葉
8  二重螺旋攻略
689/999

8-40 蹂躙して蹂躙する

―1―


「撃て」

 激しい炸裂音が続き、次々と銃弾が発射される。


「盾だ、盾を!」

 若騎士の絶叫に兵士たちが突撃を止め、盾を構える。


 そして、俺には魔族リフリッジレイターの言葉が字幕として見えていた。

「馬鹿が。お前らヒトモドキは、クラスチェンジとやらを行う時、わざわざ全裸になってから行っているのか? 違うよな、違うよなぁ!」

 その言葉が真実だと証明するように銃弾を盾で受けた兵士たちが苦しみ倒れていく。ま、不味いぞ! どうする、どうする!?


「撃て、撃て、撃てーーー! ヒャハハッハ。蹂躙だ、蹂躙だぁぁ!」

 戦場に銃弾が降り注ぐ。


 俺の目の前では14型さんが凶悪な篭手で銃弾を弾き返していた。さすがはロボットメイド、銃弾の効果が無いみたいだな。にしても、これ、俺も喰らったらヤバいのか? 試してみる気にはなれないなぁ。


「かわせ、回避するんだ!」

 若騎士が叫ぶが、すでに前線は崩れ、兵士たちは恐慌状態に陥っていた。


「うわああああ」

「こんな、何も出来ずに……」


 ヤバイ、ヤバイ。俺も14型に守られている場合じゃないぞ。


 そして、恐慌をきたした兵士の一人が紫の火の塊を作りだし、魔族側へと飛ばす。ファイアボールか?


「不味い、魔法は!」

 若騎士が叫ぶ。へ? 魔法を使うとダメなのか?


 リフリッジレイターがニヤリと笑い、長く伸びた銀色のマントを振り回す。それにあわせてファイアーボールが銀色のマントへと吸い込まれ、反射した。

 紫の炎は放った兵士へとはね返り、その兵士と近くに居た者達を巻き込み大きな紫の爆発を起こす。後には、燃え、力尽きたように崩れ落ちた兵士たちが残った。


 お、おい。大惨事じゃないか!


 もしかして、あの銀色のマント、魔法を跳ね返すのか?


「楽しいな、おい! 知ってるよなぁ。こいつはお前らが崇拝している悪魔の遺産だからなぁ! お前たちからブルーアイオーン様が持ち帰った戦利品だからなぁ! お前たちがどれだけ魔法を使おうが、倍にしてお返しだからなぁ。いいぜ、いいぜ、どんどん魔法を使ってくるといいぜ」

 リフリッジレイターが、わざとこちらに聞こえるように叫ぶ。やはり、魔法反射かよ。しかも倍にして返すとか凶悪だな。


 ……。


 ……アイスコフィンやアイスストームを使わなくて良かった。使っていたら大惨事になるところだったぜ。


 ああ、だから、兵士たちは魔法を使わずに突撃したのか。そうだよな、距離があるのに、魔法っていう便利な遠距離攻撃方法を使わないのは、おかしいなって思ったんだよなぁ。いや、でもさ、そういうことはさ、分かっていたなら教えておいてくれよ。


 鑑定は……、


【女神セラの銀翼】

【女神セラの八大神具の1つ】


 ああ、俺の白竜輪と同じ感じなのか。魔族って女神と敵対しているんだよな? その敵対してる相手の名前を冠した装備品でも使うのか。


 ……って、感心している場合か。


『14型、あの銀色のマントが魔法を跳ね返すようだ』

 銃弾を跳ね返していた14型が、俺の天啓を聞き、こちらへと振り返る。

『この程度、気にするな。行け』

 俺の天啓に14型がちいさく頷き――そのまま弾丸のように駆ける。


『エミリオも頼む』

「にゃ!」

 エミリオが神獣化し、空へと舞い上がる。


 それを確認し、俺は手に持っていた真紅妃を、並び銃を撃ち続けている魔人族へと投げ放つ。


――《真紅妃召喚》――


 真紅妃が空中で巨大な蜘蛛と化し、魔人族たちの前へと降り立つ。


 そして、俺は足を軽く踏み叩く。


――《黄金妃召喚》――


 俺の足を覆っていた靴が姿を変え、巨大な羽を持った蟻へと姿を変える。羽の生えた蟻は、面倒そうに1つ羽ばたき、それを合図として魔獣の群れへと飛ぶ。


 さあ、任せたぜ。


 俺は銃弾を気合で回避しながら、倒れた兵士達の元へと駆ける。


――[ヒールレイン]――


 まずは反射した魔法で倒れた兵士に回復の魔法を!


――《魔素操作》――


 次に倒れた兵士の魔素を操作し、元の状態へと戻していく。えーっと、多分、これが、元の状態だよな? うん、多分、大丈夫だ。多分、多分……。


 と、そこで、何かがぱらぱらとこぼれ落ちる音が聞こえた。見れば、俺に巻き付いていた白竜輪が銃弾を撃ち落としていたようだ。あ、白竜輪は触れてもオッケーなんだ。って、危ねぇ、白竜輪が動いてなかったら銃弾を喰らっていたところだったのか……。真紅妃とエミリオさん、早く殲滅してくださいな。


 神獣と化したエミリオが上空から光るブレスを吹きかけ、地面では真紅妃が無数の紅い風の刃を飛ばし、その鋼鉄のような巨大な足を振り回していた。あ、割と蹂躙してますね……。


「マスター!」

 14型が俺を呼ぶ。


 見れば、14型がリフリッジレイターから銀色のマントを剥ぎ取っていた。しかし、14型も無傷とは言えず、ボロボロになりながら、なんとかマントだけ奪い取ったという状況のようだ。やはり、いくら小者ぽく見えても魔族は強敵か……。


「その悪魔の遺産を奪ったのは見事だなぁ。だが、そんなボロボロの様子では、すぐに俺に取り返されるだけだと思うがなぁ。そう、こんな風に、な!」

 リフリッジレイターの手が、ボロボロで動けない14型へと伸びる。いいや、リフリッジレイター、お前の負けだぜ! 14型、ナイスだ!


――[アイスコフィン]――


 リフリッジレイターの周囲に氷の壁が生まれ、その体を包み込む。

「な、何だ!? 何だ、この壁は!」

 氷の壁が狭まり、リフリッジレイターを閉じ込め、そのまま小さく、小さく形を変えていく。

「く、こんな、もの、こわ、壊して……ぐぅ」

 そして、小さな正方形の棺と化し、消滅した。


 後には小さな人形だけが残っていた。あ、銀色のマント……。いやいや、気にしている場合じゃないな!


 よしッ!


 後は倒れた兵士の魔素の流れを元に戻して、残った魔獣を殲滅するだけだ!

2020年12月13日誤字修正

俺に取り替えされるだけだと → 俺に取り返されるだけだと

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